『ウルトラマントリガー』を信じて見守りたい3つの理由


2021年7月10日、遂に始まったウルトラマンシリーズ最新作『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』。
……びっくりするほど賛否両論ですね!!!!!!

 

ネット・SNSの評価をリアルタイムで見ながらウルトラマンシリーズを視聴するようになったのはちょうど『ギンガ』からなのだけれど、個人的には2話時点でここまで賛否両論(荒れている)のは初めてなように思う。

正直「そうなる理由も凄く分かる」というのが本音で、筆者自身も『トリガー』の今後に不安を感じている一人だったり。


しかし、そんな状況下でも『トリガー』を信じて見守っていきたいというのが一番の気持ち。なぜここまで『トリガー』に期待をかけるのか、自分自身の備忘録としての意味合いも兼ねて、特に大きな「3つの理由」についてざっくばらんに書いていきたい。

 

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そもそも『トリガー』がなぜこんなにも早く賛否両論状態になっているのか。理由を挙げていくとキリがなさそうだが、主なものはこれまた3つに集約されると思っている。


①脚本の問題
・(特にケンゴの)違和感のある台詞回しや独り言
・駆け足な展開(特に2話)
・未だに方向性がはっきり見えてこない物語
・トリガーの名前はカルミラから知るのに台詞は最初からバッチリな初回変身など、細かなツッコミどころの多さ

 

②偉大すぎる前作(ウルトラマンZ)の存在
・『Z』でそもそもの視聴母数が増えている
・『Z』は1話/2話が共に隙がなく、演出・脚本などあらゆる面で優れたエピソードだった(作品の方向性がはっきり示されていたことも大きい)
・『Z』の実質的な後番組である以上。その成功(とそこに至らしめた様々な功績/要因)を踏まえているのが「当然のスタンス」として求められる前提

 

③『NEW GENERATION TIGA』の不明瞭さ
・リメイクなのかリブートなのか、あるいはそれ以外なのか不明瞭
(坂本監督の「『ティガ』が与えたインパクトを再び」という発言も槍玉に上がりがちな印象)
・(スーツ事情などのやむを得ない点を除いても)ごった煮状態の『ティガ』要素と『ティガ』らしからぬ要素
・『ティガ』を冠した上で上記のような様々な問題が露見している現状


……悲しいけれど、概ね納得できてしまうのが正直なところ。

初めて見たウルトラマンが『ダイナ』で、『THE FINAL ODEYSSEY』の時期に『ティガ』再放送をリアルタイムで追いかけていたという生粋のTDG世代オタクではあるものの、個人的には『ティガ』という作品との関係性よりも「『Z』の成功を踏まえて作られているのかどうか」の方が懸念点。

 

ウルトラマンZ』の魅力は数あれど、その最たるものの一つはやはり故・吹原氏と田口監督による緻密な脚本/シリーズ構成や各話脚本の徹底した監修といった文芸面へのこだわり。
そんな『Z』の後番組なのだから最低限そこだけでも踏襲してほしい……と思っていたので、2話の駆け足展開は中々にショックだった。展開そのものというより「ひょっとして製作陣は『Z』がなぜあそこまでウケたのか分かっていないんじゃないのか」という不安が拭えなくなったことがショックだったのだ。

 

1話であれば、「つかみ」の弱いアバンタイトル(『Z』の田口監督は、YouTube全盛の時代だからこそと最初のつかみ=ゴメスのシーンに並々ならぬこだわりを注いでいた)や少し冗長な戦闘。

2話であれば、トリガーへの変身に対して深く考えている様子の見えないケンゴやあっさり負けてしまうギマイラ……など、一度引っかかると次々見えてきてしまう細かい粗がその不安を拭わせてくれず、現状、不安が7割ほどの状態で3話の視聴を迎えようとしている。

 

 

では残りの「3割」が何なのかというと、それこそが記事タイトルの「『トリガー』を信じて見守りたい3つの理由」に基づく今後への期待。

 

不安不安と散々喚いてきたが、それでも『トリガー』は面白くなる、と信じられる3つの理由。1つ目は、本作のシリーズ構成が『ハヤシナオキ氏×足木淳一郎氏』のコンビであることだ。

ハヤシナオキ氏の作品には恥ずかしながら触れたことがないのだけれど、担当された作品は

・実写版を坂本浩一監督が手掛けた
『BLACK FOX(アニメ版)』

・人気ホラーゲームの続編(?)アニメ
ひぐらしのなく頃に(業/卒)』

・“泣きゲーの金字塔”と呼ばれる名作ゲーム 『Kanon

……など錚々たるラインナップで、体感はさながら『仮面ライダー鎧武』のメインライターに虚淵玄氏が登用された時のよう(虚淵氏もアニメ・ゲーム畑の名物ライター)。

特に『ひぐらし~』などはその難解な謎解きが当時から話題になっている人気作品であり、比較的ハイターゲット向けの色が濃く、緻密な世界観構築が必須であろう『トリガー』にはピッタリの人選じゃないか、と思えてならない。

 

しかし、そんなハヤシ氏は一方で「特撮畑のライターでない」という大きなハンデを抱えている。更に『トリガー』においては(同作がどういう方向性を目指すとしても)『ティガ』という作品の熟知が欠かせない。そんな窮地を救うかのようにタッグを組んだのが、他でもない我らが足木淳一郎氏!

 

本記事を読まれている方には説明不要と思うが、足木氏は『ウルトラマンフェスティバル』などのイベント/舞台作品や『ウルトラマン列伝』などへの脚本・演出参加を経て、『ウルトラゼロファイト(第2部)』において初めて本格的な映像作品の脚本を執筆。

以降『ウルトラファイトシリーズ(ニュージェネ)』などを手がけた他、『タイガ』ではTVシリーズの実質的なライターデビューを果たしつつ(それまでは番外編や総集編のみの参加)タイタスらU40組の出世にこれでもかと貢献された、円谷が誇る名ライター兼人類史上最強のU40オタクである(?????)

そんな足木氏が『トリガー』にうってつけと言える一番の要因は、氏の「題材となる作品の設定や文脈を汲み取って作品に昇華させる手腕」である。


往々にして、ヒーローの客演においては「描写に割く時間が惜しい」「新規層への配慮」など様々な理由から各作品の細かな設定・文脈の描写は割愛されがちだが、足木氏はそこに強いこだわりを持たれており、更にはその設定を「物語性」に昇華させることができる稀有な脚本家だ。

大ファンを公言する『ザ☆ウルトラマン』の設定をふんだんに取り入れ、ドラマチックな「公式外伝」を描いた『ザ☆ウルトラマンタイタス(ボイスドラマ)』や、『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』において、ジードがギンガらと力を合わせてゼロビヨンドへの変身カプセルを生成。粋なコメントを添えて「ニュージェネによるゼロへの恩返し」を行うシーンなど、その例は挙げればキリがない。

更に、そんな「足木流」の極致とも言える最新作『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』では、ウルトラマングレートウルトラマンレジェンドなど、多種多様なヒーローたちの設定や文脈を盛り込み、華麗に捌きつつ壮大な物語を練り上げるという離れ業をやってのけた。
(これで筋金入りのウルトラオタクという訳ではなく、ほとんどのシリーズは『ウルトラマン列伝』への参加を通して学んだというのだから驚きである)

 

実力派ライターでこそあれ、特撮畑とは縁のなかったハヤシナオキ氏。そしてウルトラで脚本を書き続けてきた「設定に強い」ライターである足木淳一郎氏。
考えれば考えるほど、この2人ほど『トリガー/NEW GENERATION TIGA』を描くにあたってふさわしい人選があろうか、というもの。

……なら、なんで1.2話があんな感じだったのかと言われると、それはおそらく門外漢であるハヤシナオキ氏が不慣れな状態で脚本を執筆したことが大きな要因だろう。「『Z』に倣って監督などがしっかり脚本を精査すべきじゃなかったのか」と言われると返す言葉もない。ただし、だからといって『トリガー』がこの先もずっと同じ醜態を晒し続けるとも限らない。

 

今後『トリガー』が巻き返せるのかどうか、鍵になるのはハヤシ×足木タッグによるシリーズ構成であり、1.2話や基礎設定の時点で膨大な伏線がばらまかれていることからも、後に大きなどんでん返しがあろうことは想像に難くない。

SNSなどで話題になったケンゴの花「ルルイエ」については、ケンゴ(トリガー)が闇の出自の存在であり「ルルイエ」という名前に本能的な安息/安らぎを覚えていたと考えれば合点がいくし、闇の巨人についても、キリエロイドを思わせるデザインのヒュドラム、ガタノゾーアと同じ「クトゥルフ神話の邪神由来の名前」になったダーゴン(一番怪しい)など、裏設定では済まされないような設定がこれでもかとひしめいている。

これらの下準備が爆発するであろう中~後半の時期は、すなわちハヤシナオキ氏が「特撮の脚本」をモノにしてきたであろう頃合いとも一致するはず。その瞬間最大風速は、それまで本作が積み重ねていくであろう負債を返上して余りあるものになっているに違いない(と信じたい)。

事実「不安定な脚本からスタート」 「既存の人気作を下地にしている」 「数多くの伏線」 「特撮外のライター×ウルトラ常連ライターのタッグ」と『トリガー』と多くの共通点を持つ『ウルトラマンジード』は中~後半でそのポテンシャルを爆発させ、シリーズでも指折りの人気作となってみせた。
だからこそ『トリガー』もきっとそうなってくれる、と期待せずにはいられないのである。

 


2つ目の理由は、本作のメイン監督を務める坂本浩一監督への信頼だ。

 

坂本監督はもはや言わずと知れた名監督だが、坂本監督は『ウルトラ』においてはかなり善し悪しのハッキリした監督と知られている。

デビュー作となる『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』からそのアクロバティックなアクション演出や新しさに満ちた画作りへの意欲、過剰すぎるくらいのファンサービスといった魅力は発揮されていたものの、その反面「敵の演出がワンパターン」 「過去のヒーローたちに対するリスペクトが足りない」 などの短所も散見された。

その後の『ギンガS』では「楽曲へのこだわり」といった更なるプラスポイントを見せた反動か、更に「冗長な演出」 「フェチズムに寄りすぎた撮影」といったマイナスポイントが追加されてしまっていた。
ウルトラシリーズに新風を吹き込み、その復活の礎を作った坂本監督だが、どうにも『ウルトラ』との食い合わせは悪いんじゃないか? という懸念が拭えない状況だったのである。

しかし、その後もウルトラシリーズへの参加を重ねていくにつれ、坂本監督の撮影スタイルには明確な変化が現れていた。

ウルトラファイトビクトリー』『ウルトラファイトオーブ』では過去作のヒーローたち=ウルトラ兄弟を個性豊か/魅力的に演出し、『X』では冗長さの取り払われたスタイリッシュな巨大戦を披露。

3年ぶりにメイン監督を務めた『ジード』では前述の通り不馴れな脚本とのミスマッチなど多くの懸念点が生まれたものの、それを払拭して余りあるドラマチックなウルトラサーガを見事描き切ってみせた。そして話題の『Z』では専売特許と言わんばかりにジードやゼロを進化した超絶アクション/映像で演出したほか、ガンマフューチャーの筆頭監督として、昭和だけでなく平成のレジェンドヒーロー=ティガ・ダイナ・ガイアら3人にも抜かりない愛があることを証明してくれた。

 

これらの変遷を見るに、坂本監督は「ただ進化する」監督なのではなく、「自身の至らない点を理解し、それを改善する方向へ進化する」監督なのだろうと思う。
クリエイターとして当然と言えば当然の心構えではあるが、坂本監督の場合その「改善」ぶりが目に見えて分かるのだ。短所のハッキリした監督であるが故に変化が分かりやすいというのもあるが、根底にあるのは坂本監督自身の作品作りに対する真摯な姿勢だと感じずにはいられない。

そんな「改善」を重ね、『ウルトラ』での経験も十二分に積んだ坂本監督だからこそ、『トリガー』において我々視聴者が感じている問題点については少なからず察していると思いたいし、そうであるなら、きっと監督は作品の中で更なる進化と改善を見せてくれることだろう。

余談だが、坂本監督は、映画『仮面ライダー 平成ジェネレーションズ』の撮影にあたって、客演ヒーローであるが撮影経験のなかった『仮面ライダー鎧武』を全話視聴したのだという。本作に臨むにあたって『ティガ』はきっと見てくれているだろうし、この誠実な原作への向き合い方が『トリガー』でも活かされていくと信じていたい。

 


最後の理由は、そもそも現時点で『トリガー』が「ツボに入りそうな」作品だということ。具体的に言うなら「好みの要素」がとても多いことだ。

 

1話においては、ウルトラマンシリーズでは珍しい(初?)「初回のOP主題歌カット」からの「挿入歌として『Trigger』を初披露する」というコンボにすっかり心を掴まれてしまったし、「レギュラーの紹介は後回しに、初回はケンゴとミツクニの2人にスポットを当てて描く」という潔い割り切り方も、いかにも連続ドラマのプロローグといった具合で好きな見せ方。

更に、ケンゴという存在の謎にトリガーダーク(?)、ユザレの台詞やミツクニとティガの関係など、『ジード』以上の前のめりさで伏線をバラまいていくのもワクワクするポイント。
トリガーの名前をカルミラの言葉から知ったり、そのカルミラたちの言葉がケンゴにしか正しく聞こえないというのも「分かってる」演出だ。

続く2話は1話以上に脚本の運びが悪くドラマが駆け足になってしまったのが残念だったが、ギマイラ戦は昼/ダーゴン決着戦は夜→海中と、『THE FINAL ODEYSSEY』オマージュということを差し引いても「ワンパターンな画にならないように」という配慮が行き届いているのが好感触だった。

『ティガ』オマージュの演出については触れていくとキリがないが、逆ピラミッドの遺跡や「選ばれし者」として過剰に持ち上げられている節があるケンゴ、そしてそんなケンゴとトリガーの一体化も「ケンゴが宿る」のではなく「トリガーが取り込む(?)」形であるなど、(n番煎じの考察か分からないけど)むしろ『ティガ』と逆の描かれ方が多い点が気になってくる。

 

主題歌『Trigger』には

自分が何者か誰も教えてくれない 自らを導いて出すべき答えがある

という歌詞があり、ケンゴが前述した謎の先で(ダイゴやアスカとは違う道のりで)「自分の存在や、手にした光の意味に悩む」展開に至ることを予感させてくれる。

もしそうなのだとしたらその展開が純粋に楽しみだし、加えて「歌の歌詞に肝を仕込むくらいストーリーが周到に作られている」ことの裏付けにもなるので、一層本編の展開に期待が持てるというものだ。

(周りのヨイショで「みんなの笑顔を守るヒーロー」という自覚と自惚れが育ったところで、ルルイエの開花をきっかけに“笑顔を奪う者”として覚醒してしまい絶望するケンゴくん、見たい……見たくない?)

Trigger

Trigger

  • 佐久間貴生
  • アニメ
  • ¥255

また、個人的に外せない要素がトリガーの基本武装ことサークルアームズ。シリーズお馴染みとなったインナースペースで持つタイプの基本武装だが、「トリガーに合わせてタイプチェンジ」することで各タイプの差別化に一役買うだけでなく、スパークレンスが「GUTSスパークレンス」という人工物であるために損なわれてしまう「超古代の戦士」感を補うというファインプレーぶりに思わず感動してしまったり。

デザインも、玩具としての取り回しの良さと「玩具らしくない」ディテール、キャッチ―なカッコよさと3拍子揃った素晴らしいものになっており、個人的にはこれまでのウルトラマンの武器の中でも群を抜いて魅力的に思える。まさにニュージェネレーションシリーズが積み上げてきたものの集大成……!

 

マルチタイプのマルチソードはこれまでのソード系武装(エクスラッガーやオーブカリバーなど)と異なる「無骨な大剣」として独特のアイデンティティを発揮しているし、パワータイプのパワークローはディテールの奇抜さが目を引き、ファイトスタイルが地味になりがちなパワーファイターに華を添えている。

殊更に白眉と言えるのが(活躍は3話までお預けの状態だが)スカイタイプのスカイアロー。清廉なイメージの青ウルトラマンに弓が似合うことはネクサス(ジュネッスブルー)やフーマが証明しているし、何より”機動性特化”という(演出的に)扱いの難しい能力からか活躍に恵まれなかった本家ティガ スカイタイプのリブートとして、遠距離攻撃を得意とする戦士というアイデンティティを加えることはこの上ない最高の+αだろう。スカイアロー自体のスマートで癖がないデザインがスカイタイプに馴染んでいるのも見逃せないポイントだ。

 

しかし、そんな素晴らしい武器がある中でもきちんと光線技を大事にしてくれるのが我らが坂本監督!
1話ではオーブグランドカリバーのように地面にマルチソードを突き立ててからゼペリオン光線に繋げてくれたし、2話でもデラシウム光流を「膠着状態を打開する起点」として印象的に使ってくれていた(いつかトドメに使ってほしい……)。

坂本監督は『X』において、エクシードエクスラッシュ→ザナディウム光線のコンボを考案したり、『ジード』においてレッキングバーストをここぞという時の切り札として描いてくれた方なので、特にゼペリオン光線の扱いについてはこれからも楽しみにしていきたいところ。

 

 

『トリガー』の好きな点と不安な点、2話にしてよくもまあこんなに意見が出るものだと我ながら驚きではあるが、それだけ期待値が高いということだろうし、その点においては多くのウルトラファンが同じ意見だろうと思う。

けれど、どんな作品でも2話時点で全てを判別することなんてできないもの。特にウルトラマンシリーズはそれが顕著な傾向にある。

 

昭和シリーズや『マックス』のようなオムニバス色の強い作品は当然として、傑作と名高い『ネクサス』『オーブ』や『ジード』は中々にスロースターターだった。

対して序盤の勢いが良かった作品と言えば名前が挙がりやすいのは賛否両論ある『R/B』や『タイガ』だったりするし、序盤から作風・クオリティが安定していた『メビウス』や『X』がむしろイレギュラーだろう。それこそ『ティガ』だって完全無欠の作品ではなく、改めて見ると比較的スロースターターな作品だった(背景事情が違いすぎて単純な比較はできないが)。

脚本のバランスがかなり危ぶまれること、前作『Z』が規格外の作品だったこと、そして背負うものがよりによって『ティガ』なことで厳しい目を向けられている(し自分を同じ目を向けてしまっている)『トリガー』。しかし本作が『NEW GENERATION TIGA』という殻の中に何を宿しているのかはまだまだ分からない。製作陣も、生半可な覚悟で作っているはずはないのだから。

 

TDG世代のかつての子ども、としてではなく、あくまで一介のオタクとしてこれらのこと、そして前述した「3つの理由」を忘れないよう肝に銘じつつ、いつか来る大きな転機まで『ウルトラマントリガー』を信じて見守っていきたい。そしてとりあえずは、25年ぶりの復活となるガゾートの勇姿とスカイタイプの初陣が描かれる明日の第3話を楽しみに待ちたい。

(ガゾートの扱いが悪かったとしても)スマイルスマイル!!!!

さらばウルバト! 怪獣愛に満ちた奇跡のゲーム『ウルトラ怪獣 バトルブリーダーズ』を振り返る

時に2021年5月26日。

ウルトラマンTVシリーズ最新作『ウルトラマントリガー』への期待で界隈が盛り上がっている中、株式会社バンダイナムコエンターテインメントが運営していたスマートフォン向けゲームアプリ『ウルトラ怪獣 バトルブリーダーズ』通称『ウルバト』がサービス終了となった。

決してメジャーではないものの、運営とユーザーの「怪獣愛」によって支えられた奇跡のゲームであるウルバト。しかし、アプリゲームの定めとしてその軌跡は形に残らない。

今回の記事では、一人でも多くのウルトラファンに「こんなに素晴らしいゲームがあったんだ」と知って貰うため、そして一人でも多くのブリーダーが『ウルバト』を思い出せる場所となるように、本作がどのようなゲームだったのかを振り返ってみたい。


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ウルトラ怪獣 バトルブリーダーズ』がサービス開始したのは2018年秋。テレビでは『ウルトラマンR/B』が放送中=ちょうど新世代ウルトラマンシリーズもお馴染みになってきた頃合いで、ゲームのリリースにはまさにうってつけのタイミング。

 

ジャンルは『怪獣育成シミュレーション』で、ざっくり言うなら『スーパーロボット大戦』シリーズに「怪獣の育成」というもう1つの軸が加わったようなイメージだ。

ウルトラシリーズのゲームというと対戦格闘などアクション系のイメージが強いかもしれないが、実は『ウルトラマン オールスタークロニクル』や名作と名高い『ウルトラ警備隊 MONSTER ATTACK』などもあり、シミュレーションゲームはウルトラと意外にも縁の深いジャンルだったりする。

そんな本作の主役たちは名だたる怪獣・宇宙人やロボット、そして闇の巨人たち(以下“怪獣”)。

そのラインナップは凄まじく重厚で、なんとほぼ全てのウルトラシリーズから総勢200体もの怪獣が参戦しているという豪華ぶり……!

特にニュージェネレーションシリーズからは『ギンガS』から『Z』までの人気怪獣が大挙して参戦し、グリーザ(第二形態)や特空機セブンガーなどの参戦は特に大きな話題となった。
だが、ともすればそれ以上の話題となっていたのが『G』と『マックス』から怪獣の参戦が叶ったこと。この2作はこれまでのゲームで怪獣が参戦したことがなかったためファンからの要望も高く、『マックス』からラゴラス、ひいてはラゴラスエヴォまで参戦したり、『G』からゴーデス第二形態が参戦したりといった際にはTwitterで多くのファンが咽び泣いていた。僕はラゴラスエヴォで泣きました。

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(↑最終的な参戦作品リスト。サブスクのラインナップか何か?)

 

ゲーム序盤はゴモラガンQなどお馴染みの面々からのスタートだったが、「毎週新しい怪獣を実装する」という狂気じみたサービス精神を見せたウルバトはあっという間に怪獣数を増やしていった。その中で徐々にガゾートやゾアムルチ、ドラゴリーといった完全新規モデルの怪獣が実装され始め、最終的にはユーザーの意見でスペックが決まったガヴァドンAや『ガイア』のブリッツブロッツなどマニアックな怪獣も次々参戦、ブリーダー界隈は毎週のようにお祭り騒ぎとなっていた。

 

勿論その「毎週追加される新怪獣」の中には、ナックル星人やバルタン星人(ベーシカルバージョン)など『Fighting Evolution』や『大怪獣バトル』など過去のゲーム作品でCGモデルが作られた怪獣もいたが、ウルバトのこだわりは妥協を許さない。なんと「過去にゲームで登場していた怪獣」も、モデルを(怪獣によっては一から)作り直しているのである……!
(例えば、ファイブキングはデータカードダスの『大怪獣ラッシュ』で既にCGモデルが作られていたが、本作にてCGモデルが完全新生。現行作の「フュージョンファイト」に逆輸入されたりもしている)

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(↑カッコよすぎるファイブキング。何度再販されても高騰する大人気怪獣だった)

 

当然ながら、それら精巧なCGモデルの作成には円谷プロとの綿密な連携、緻密なスケジュール管理など多くの関門がある。それらを乗り越えつつ、2年以上に渡り毎週新規怪獣を実装し続けてくれた運営の方々の努力には本当に頭が上がらないし、ウルバトのサービス終了にはその点も関係しているのでは? という噂も。それならそれで納得しかない……。

 

そんな運営様方の努力が作り出した数多くの怪獣たち。そのイカれた(褒め言葉)ラインナップの一部を紹介するぜ!!!!

ウルトラセブン』からギエロン星獣
帰ってきたウルトラマン』からタッコング
『80』からザンドリアス
『ティガ』からレギュラン星人
『ダイナ』からデマゴーグ
『ガイア』からニセ・ウルトラマンガイア
『ネクサス』からダークファウスト
メビウス』からボガール
『X』からムー
ジード』からレギオノイド・ダダ・カスタマイズ
『R/B』からグルジオキング
『タイガ』からナイトファング
『Z』からエリマキテレスドン

……惑うぜ! 現実!!
自分で書いていながら違和感を覚える怒濤のラインナップ。オタクしか喜ばないぞこんなの!? 大丈夫!? という質問に満面の笑みを浮かべるスタッフが見える。お、俺たちのウルバト……!!!!

 

Twitterでは参戦怪獣の発表に先駆け、クイズのような「ヒント画像」が掲載されることがほとんどで、毎週月/火曜日の参戦発表は界隈の話題をさらった。ガルベロスやサイバーゴモラなど新規参戦怪獣の名前がTwitterのトレンドに載ることも少なくなく、そのような点も含めてウルバトは怪獣ファンにとって夢のようなゲームであった。

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(↑ヒント画像集。毎週作るのに苦労したとのこと、せやろな……)

 

そうして毎週のように増えていく怪獣たちだが、決して数ばかりが多い訳ではない。怪獣には「力」「技」「速」「無」のいずれかの属性(相性)に加え、怪獣固有の能力・必殺技が与えられている。それらによって、怪獣を「原作っぽく」戦わせられるのが本ゲームの大きなポイントだ。例えば……。

・同じパーティに編成することで真価を発揮し、必殺技も変化するマグマ星人&ギラス兄弟、サデス&デアボリック

・タイプチェンジによって能力を使い分けるキリエロイドⅡ

・仲間の身代わりとなり、散り際に攻撃バフと体力回復を残していくシェパードン

・(不意打ちでゼガンを撃破した再現なのか)初撃のみ超強化されるヘルベロス

・自分が状態異常「暗闇」の時に強化されるムルロア

・強力な必殺技『投げつけるアイスラッガー』を持つが、ウルトラセブンにそれを使うと自身が確定で即死する改造パンドン(??????????????)


などなど。ただ強いキャラを集めればいいという訳ではなく、怪獣をいかに「らしく」暴れさせるか考え、それが見事決まった時の達成感ったらたまらない。キングオブモンス&バジリス&スキューラで大暴れしている時とか最高ですよ!


では、どうすればその怪獣を入手できるのか。スマホゲーならガチャじゃない? は~~~つまんな!! と思ったそこの貴方。ウルバトはそんなありきたりなゲームじゃあありませんのですわ!(多方面から刺されそうな発言)

怪獣たちの入手方法こそ、実はこのウルバトにおける最大の特徴。その名も「マーケット」
これは「ガチャ」でも「建造」でもない独自方式で、オークション形式でキャラクターの入手権を争うもの。

具体的には1〜2週間の間、マーケットに新規と復刻、併せて数体のキャラクターが出品され、1日2回、多くの金額(通貨は「ウルトラストーン」)を入札した上位層がキャラクターをゲットできるというシステムだ。f:id:kogalent:20210528072801j:image

更に、所謂「天井額」(概ね10000円)相当のウルトラストーンを入札すればマーケットを無視して怪獣を落札できる上にボーナスも付く「即決」システムまで実装されており、狙ったキャラクターを入手できる可能性は実質的に100%という驚異のユーザーフレンドリーぶり。斬新過ぎて運営が心配になるほど良心的なシステムだった。

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(↑大好きな怪獣が出品された時は即決すべき。太平風土記にもそう書いてある)

 

キャラクターは出品される時期や「新規か復刻か」など様々な背景によって出品される数が異なっており、凄まじく白熱するマーケットもあればあまり盛り上がらないマーケットもある。そうしたマーケットの様相を眺めるのもこのゲームの醍醐味。
かくいう自分は怪獣については比較的ライトなオタクなので、買う時もあれば買わない時もあり、そんな「マーケットに参加しない時期」が長ければ長いほど、1ユーザーながら「このゲームの運営は大丈夫なんだろうか」と不安に駆られたりもしていた。f:id:kogalent:20210528073208j:image
(↑自分が見た中で一番高騰したのはまさかのニセメビウスで、次いで高かったのはゼッパンドンやオーブダークなど。あと少しの額で即決ボーナスが付くことを考えると恐ろしい高騰ぶり……)


そんなマーケットで競り落とし、育てた怪獣を戦わせる舞台=プレイモードは大きく分けて4つ。

まずは「メインクエスト」
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これはこのゲームの致命的な欠点なのだけれど、とにかくこのメインクエストが薄い。(名前はそれっぽい割に)尋常でなく薄い。

惑星ウルバト(直球)を舞台に、怪獣のデータ解析や再現をシミュレーションしている謎のナビゲーションロボット『ナヴィ』。彼女と、彼女によって呼び出されたブリーダー(プレイヤー)が、様々なシミュレーションを体験したり、惑星ウルバトが保持するデータ目的で襲いくる宇宙人と戦ったりする……というのが大まかなストーリー。というか、それ以上の内容がない

ゲームが始まってから1年ほどの間はストーリーが定期的に更新されたがその後は実質的な打ち切りで、ばらまくだけばらまかれた伏線は最後のクエストで一気に回収されることになった。それはそれで凄いな……。


一方、そんなメインクエストに代わってウルバトの本命と言えるのが「イベントクエスト」だ。
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イベントクエストは一般的なスマホゲーと同じく、定期的に様々なイベントが新規・復刻織り混ぜて期間限定で開催されるもの。

ウルバトのイベントクエストは、大きく分けると下記のような種類がある。


・強敵出現イベント
エタルガーや闇に堕ちた タ ロ ウといった強敵に挑むイベント。ボス怪獣の特徴や原作再現を意識したギミックが仕込まれており、例えばグリーザ出現イベントではゴモラやゴメスといった怪獣をダークサンダーエナジーから解放するために(HP調節などで)奮闘することになる。
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(↑ジャグラーとマガオロチを相手取るイベント。マガオロチの実装には界隈も大いに盛り上がっていた)

 

・スコアアタック系イベント
オーブダークが呼び出す大量の怪獣を殲滅したり、大量発生したツインテールグドンやボガールに横取りされないよう狩りまくったりするイベント。デスフェイサーやギャラクトロンなど、範囲攻撃を持つ怪獣が大活躍する。f:id:kogalent:20210528092231j:image

(↑狩るどころか狩られることもある、世の中は非情だ)

 

・「(疑似)レイドイベント」
ウルトラマンベリアルやデストルドスなど、莫大なHPを持つ敵に対して何度も挑み、その討伐を目指す。大型イベントとして開かれるため演出に気合いが入っており、グランドキング戦ではウルトラ6兄弟と共闘することができる他、ガタノゾーア戦では石化したティガを数ターン守りきることでグリッターティガを出現させることもできた。f:id:kogalent:20210528073631j:image

(↑TVを意識した仕様が美しいグリッターティガ)

 

ウルトラマン降臨イベント
ウルトラマンを召喚して敵に追加攻撃ができるアイテム「ウルトラ必殺技」を入手することができるイベント。『君だけを守りたい』『ウルトラマンジード プリミティブ』『ご唱和ください、我の名を!』など多くの新規版権BGMアレンジ曲が実装された他、ウルトラ6兄弟のチームと戦ったり、オーブの助っ人としてジャグラーが現れたり、ファン垂涎ものの演出が目白押し。

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(↑仲良く新年の挨拶をしてくれるTDG。戦闘中のBGMはなんと『Beat on Dream on』!)


他にも様々なイベントクエストが存在しているが、それらはいずれも難易度が「ノーマル」「ハード」「エキスパート」に分かれており、難易度が上がるほどに演出や報酬が豪華になっていく。それらを楽しむために不可欠なのが怪獣の育成だ。f:id:kogalent:20210528073900j:image

育成というとイメージしやすいのが「レベル上げ」だが、ウルバトではアイテムによって比較的簡単にレベルをMAXにすることができる。その代わり重要になってくるのが「スキル構成」。

ウルバトの怪獣たちは、各怪獣に1つ固有の能力である「固有スキル」と、入れ替えができ
る汎用的な「継承スキル」という2種のスキルを持っている。ポケモンに例えるなら、

固有スキル=とくせい
継承スキル=わざ

といったところ。
シナリオクリアだけならレベルアップで覚えた技だけでも問題ないが、通信対戦やクリア後の対戦コンテンツなどに挑むなら技やチーム構成を熟考する必要がある、というあのバランス感覚に近いかもしれない。

 

例えば『ティガ&ダイナ』に登場し、圧倒的な火力を誇ったロボット怪獣であるデスフェイサーを見てみると、レベルMAXのスペック(初期状態)がこの通り。f:id:kogalent:20210528073949j:imagef:id:kogalent:20210528073957j:image

同じ『ダイナ』怪獣で、防御に優れた怪獣であるデマゴーグと比べると、全体的にステータスで劣る反面、必殺技の威力が非常に高いという原作再現がされている(原作では通常スペックも高かったが、それはそれ)。

 

デスフェイサーの固有スキル『殲滅へのカウントダウン』は必殺技(SP)ゲージをチャージしたり、逆に敵のSPを減少させたりもできる攻防一体のもので、ダイナから戦意を奪ったことの再現とも取れる。
継承スキルも主に必殺技のサポートが揃っているが、ここはより特化させてネオマキシマ砲を原作ばりの超火力にしたいところ。そこで行うのが継承スキルの入れ換えだ。

 

継承スキルとは「継承(したりされたり)できるスキル」の意。
ポケモンでの「わざマシン」のように、ウルバトでは継承スキルを付与できる「スキルエッグ」なるアイテムが存在する。イベント報酬などで手に入るこのスキルエッグを使ったり、「怪獣を消費してスキルを受け渡す(継承)」ことを繰り返し、怪獣を自分好みにカスタマイズ/成長させていく。

原作再現に特化するもよし、強さを追及するも良し、様々なロマンを求めてもよし。手間がかかる分育成しきった時の感動はひとしおで、一度味わってしまうと癖になる。この「育成」の楽しさは、間違いなくウルバトの大きな魅力の一つだろう。f:id:kogalent:20210528125709j:image

(↑スキル継承のためだけに怪獣を生成することも日常茶飯事。サイバー怪獣惑星ウルバトに秩序などないのだ……)

 

例として、スキル入れ替えが完了した(り他にも色々強化した)デスフェイサーがこちら。
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継承スキルのバフは戦闘開始時に乗ってくるので、実際の必殺技火力はなんと約4000。ガタノゾーアだろうがグリムドだろうが消し飛ばすスーパー電脳魔神の誕生……ッ!


こうして育てた怪獣たちが揃ってくると、加速度的にゲームの幅が広がってくる。
イベントクエストの高難易度「エキスパート」に挑むことができるようになってくるだけでなく、超難易度の詰め将棋めいたモード「探査」へのチャレンジや、擬似的なPvPを楽しめる「アリーナ」での力試しが可能になってくるのだ。

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アリーナは「攻撃チーム」「防衛チーム」をそれぞれ作成し、他プレイヤーの防衛チームに戦いを挑むというもの。その勝敗でランキングが変動し、順位によってはウルトラストーンを貰える他、順位が高くなくても、勝利スコアを集めることでレアなアイテムや怪獣が手に入ったりする。

 

だが、アリーナ最大の魅力は「ブリーダーの愛が詰め込まれた怪獣たちと戦える」点だろう。
ダークロプスゼロやメカゴモラによる「VSダークロプスゼロ」パーティや、特空機
セブンガー、特空機ウインダム、キングジョーストレイジカスタムによるストレイジチームなど人によってチームは様々で、中にはゴーデス第2形態×4というぼくらのグレートが発狂しそうなパーティも(ちなみにアホほど強い)。


ただ強いだけでなく愛に満ちたチームとの戦いは、負けてもどこか清々しささえ感じるもの。何かと炎上しがちなソーシャルゲームPvPだが、本作はこういった点のおかげか概ね好意的な意見が多かったように思う。f:id:kogalent:20210528124811j:imagef:id:kogalent:20210528124755j:image

(↑上が自分のアリーナ攻撃チーム、下が防衛チーム。世代がバレること請け合いの人選だ)


と、ここまで説明したのがウルバトの主な遊び方。要は「怪獣を競り落とし、育成し、クエストに挑み、獲得したアイテムで更に怪獣を育成」というサイクルをこなしていくのが大まかな流れという訳だ。

こうして見ると良ゲー、人によっては神ゲー判定が出そうなものだが、悲しいかなウルバトの売上順位はちょくちょく危なっかしいランクに足を突っ込んでおり、いつサービス終了してもおかしくはない状況だった(某バイク乗りが街を守るゲームと概ね100位差ぐらいだったろうか……)。

その原因は多々考えられるが、最も大きいであろうものは「敷居の高さ」だろう。

 

まず何より、怪獣が主役のゲームである点。
(ありがたいことに)世の中にごまんといるウルトラファンだが「怪獣が主役のゲーム」ということにハードルの高さを感じる人は多いのではないだろうか。

かくいう自分もその一人で、始めたのは1周年の少し前頃だった。『Fighting Evolution』で義務教育を終えたくせに『大怪獣バトル』に触れてこなかったドロップアウトボーイとしては、モンスアーガーやデスフェイサーらが使えることに興味津々だったものの、恒常的にプレイするスマホゲーを増やすことはどうにもハードルが高く、そのデメリットを押してまで始めるか? となると、そう思えるほどの意欲が湧かなかったのが本音だった。
(1周年の少し前、というと新規CGの怪獣もまだ少なく、よもや推し怪獣たちがほとんど実装されることになるとは知る由もなかった……)

 

元来、特撮番組を題材にしたゲームはどうしてもターゲット層が限られる上、一般的なスマホゲーのように「美男美女など幅広い層にアプローチできるキャラクターで完全新規ファンを誘致する」ことが難しく、この時点でまず集客の難易度が高い。

 

その上でウルバトに入ってくれた、ウルトラシリーズ入りたてのライトユーザーがいたとする。彼らこそがゲームを背負っていく重要な存在であり、彼らにいかにウルトラ怪獣の奥深さや魅力を伝えるかが運営の要だ。しかし、ウルバトは(なぜか)そういったユーザーに厳しい。例えば……。

・怪獣をレベルアップさせるだけではなく、スキル構成までガッツリ考えないと十分にプレイできない

・怪獣が数多く登場するにも関わらず、その知識はちょっとした紹介コーナーと怪獣図鑑(持っている怪獣のみ情報がアンロックされるギャラリー)でしか得ることができない

・メインクエストが薄すぎて怪獣(キャラクター)の紹介という役割を担えていない

(怪獣の特性を反映させたイベントクエストは多いが、知らない人向けの解説はほぼないようなもの)

実際、自分にこのゲームを勧めてくれた友人はニュージェネから本格的に入ってくれたウルトラファンで、それ以外の視聴作品はコスモスとネクサス、マックス。
当人は怪獣というコンテンツを非常に好いていたが、それでもウルバトにおいて知らない怪獣を買うことは片手で数えるほどしかなかったという。

怪獣というコンテンツが好きで、ウルトラシリーズにかなり触れているファンさえこうなのだ、ユーザー母数がとにかく重要なスマホゲーでは不可欠の「ライトなファン層」がどれほどウルバトをプレイし続けてくれていたのか、正直具体的な数字を見たくないくらいには不安が残る。

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(↑怪獣図鑑での解説。最低限の解説はされているが……)

 

更に、一見するとメリットだらけの理想的なシステムに思える「マーケット」にも「大きな売り上げが見込めない」という致命的な欠陥があった。

理由は多々ある。例えば、一般的な「天井」に該当する「即決」システムが約10000円で使えたり、同一の怪獣を複数入手するメリットが(運営終盤まで)なかったり……。そして何よりの原因は「競りがほぼ意味を成していない」ということだ。

前述の通り、ウルバトのマーケットでは(基本的に)1週間の間、1日2回怪獣の出品と落札が行われる。各日11:50と23:50という2回の落札タイミングに向けて、希望者がこぞって入札を行っていく訳だ。
怪獣が早く欲しい人は我先にと入札するため、当然、値段は初出品をピークに右下がりになっていく…………のだが、なんとこのゲーム「怪獣を早期に/高額で落札するメリット」がほとんどない。

怪獣を早期に落札しても、落札した怪獣はレベルもスキルも初期状態のため、実践投入はほぼ不可能。育成にはデイリークエストやウルトラストーンで獲得する怪獣個別の「DNA」というアイテムが必要なため、どのみち実践投入までは一定の時間がかかってしまう。一刻も早く実践投入したい、もしくは何としてもその怪獣が欲しい、というのであれば、天井額の入札によって「即決」すれば最初からかなり育成が進んだ状態で入手できるが、その場合そもそも競りに参加しないことになる。
(「即決」せずに高額で落札した場合は、金額に応じてボーナスアイテムが手に入ったりするが、さほど通貨価値が高い訳でもない。どうして……)

 

このような根本的な問題が放置され続けてきたマーケットにも程なくしてテコ入れがやってきたが、その方法はシステムの改善ではなく「誰もが欲しくなるようなハイスペック怪獣の投入」だった。それは違うよ!

 

Uキラーザウルスやファイブキングなど、ウルバトでは所謂「壊れ」相当の化け物スペックを持つ怪獣が定期的にに場し、良くも悪くも大きな反響を呼んでいた。
そんなインフレの果てに、マーケットシステムを完全放棄する形で導入されたのが「レジェンドキャラクター」たち。これは即決でのみ入手可能=競りが開催されないキャラクター」で、ごく僅かなデメリットと引き換えに、インチキめいた性能を持った壊れキャラクターたちであった。

シンプルにハイスペックな上、必殺技を受けるとプレイヤーの怪獣を身代わりにするウルトラマンベリアルを皮切りに、異常な耐久力とデバフ・状態異常をばらまくガタノゾーア、倒されるとプレイヤーの怪獣のコントロールを奪うグリムドなど多くのボス格キャラクターがこの枠で実装されていき、通常キャラクターのインフレと併せてウルバトそのものが凄まじいインフレに陥ってしまった。

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(↑2回行動や必殺技吸収を備えるハイパーゼットン イマーゴ。ちゃんと翼も生える)

 

それ以外にも、キャラクターの格差を埋めるために実装された限界突破システム「覚醒」などゲームの短所を改善するための様々な仕掛けが行われたが、それらは軒並み「根本的な問題を是正しないまま、外付けで強引に粗を埋めていく」タイプの対処ばかりで、時には問題の是正どころか更なる悪化を招くことさえあった。
徐々に徐々に、ウルバトというゲームの道行きに暗雲が立ち込めていったのである。

 

とはいえ、そこは有能なウルバト運営。危険なテコ入れの裏では改善もきっちり進められており、ブースト周回機能の実装やアンケート結果に応じた怪獣の参戦、イベントクエストやアリーナのシステム改善などが次々と行われていった。

そんなウルバト運営の功績の中でも、特に話題を呼んだのが「ジオラマ」機能の実装。

これはゲーム内のCGモデルやエフェクトをステージに自在に配置することで「自分の思う大怪獣バトルを形にできる」というトンデモ機能で、推し怪獣たちによるドリームマッチやウルトラゾーンめいた大喜利など、様々なジオラマSNSを大いに賑わせていた。f:id:kogalent:20210528192726j:image

(↑オタクは推しと推しを戦わせずにはいられない生き物……)

 

これら様々な紆余曲折の中、改善と改悪のぶつかり合いが繰り広げられていたのが2年目のウルバト。その果てに待っていたのは破滅か……と思いきや、辿り着いたのは非常に良質なゲームバランス、そして平和かつ賑やかな空気感。

激動の末、ウルバトは非常に理想的な状態で2周年を迎えることになったのである。

 

そこから『ウルトラマンZ』で界隈の盛り上がりが最高潮となった年末年始を跨ぐと、前述のニセ・ガイアや人気怪獣のサイバーゴモラ、キングジョーストレイジカスタムなど待望のキャラクターたちが次々実装。当然の如くマーケットは大盛り上がりで、ウルトラマンシリーズ共々『ウルバト』の今後に誰もが胸を高鳴らせていた。


しかし。


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……おん……???????

出品されるのがレジェンドキャラクターの場合もヒントはない。だがしかし「出品をお待ちください」のような一文がないのは初めてだった。

TLが期待と不安で二分される中、その答えはメンテナンス直後に誰もが知ることとなった。f:id:kogalent:20210528131001j:image
「さらば」「LAST BATTLE」の文字。そして、何も出品されてないマーケット。じわじわと現実を理解して、身体がざわつき、「サービス終了」の文字を見つけて呆然とした。

 

2021年3月24日。ウルバトはサービス終了を発表。ウルトラもウルバトも「これから」というタイミングでの、悲しすぎる別れだった。

 


自分の慣れ親しんでいたゲームが終わるというのは「よくあること」だ。ポケモン図鑑を完成させた時。フォルテBXを倒した時。妄想ウルトラセブンを解放し、全ストーリーをSランクでクリアした時……。そういった別れの悲しさは慣れようもないが、『ウルバト』の喪失感は、それらとどこか異なるものだった。

 

前述の通り「これから」というタイミングでの終了となったことや、1年半に渡りプレイしてきたこと。それもその通りだが、それよりも大きかったのは『ウルバト』が自分にとってゲームを越えた概念となっていたこと。

 

ウルトラへの愛に溢れるだけでなく、定期的な番組配信を行ったり、アンケートの回答を律儀にゲームへ反映させたりと、非常に良心的で親しみを持てた運営。そんな運営から毎週のように届けられる「愛と魂が込められた」コンテンツの数々。そして、毎週のようにそんな運営からの贈り物でお祭り騒ぎのブリーダー界隈……。

 

それは『年中盛り上がれるウルトラ』の再来であり、毎月コロコロコミックを買ってクラスメイトと盛り上がったあの日々にどこか近いもののようにも思えた。
ウルバトの存在は、もはや一介のゲームに留まらず、ゲームを媒介にした(運営を含めた)ウルトラファン同士の繋がりや「ウルバトありきの日常」そのものを支える概念になっていたのだ。

 

ウルバトのサービス終了は、ただゲームが終わるだけでなく、そういったコミュニティや日常との別れをも指している。慣れ親しんだ学校からの卒業や部活の引退のようなものだ。

だからこそ、サービス終了の報せには思わず涙してしまったし、これまで実装されたレジェンドキャラクターが総出で襲いかかってくる最終クエストには愛すべき相棒たちで挑んだし、やり場のない気持ちとこれまでの感謝を込めたネオマキシマ砲で全てを消し飛ばした。f:id:kogalent:20210528131321j:image
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それから2ヶ月。

「これで終わりなんだ」という、なんとも言えない虚しさと感慨を引きずりながら迎えた2021年5月26日。いつもより遅い時間に入ったメンテナンスが終わり、『ウルバト』は静かに旅立っていった。


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ウルトラシリーズには「休止期間」が付き物だ。
『80』から15年経って『ティガ』が始まったように。『メビウス』から6年経って『ギンガ』が始まったように。

それはゲームにおいても同じで、『大怪獣バトルRR』で終わりを告げたデータカードダスシリーズは『大怪獣ラッシュ』として一時帰還した後、『フュージョンファイト!』として新生。『ウルトラ』のデータカードダスにおける最長稼働記録を更新し続けている。

そして、そんなデータカードダスシリーズを支えてきたのは、過去に『Fighting Evolution』シリーズなどで作られたCGモデルたちだ。

「光は絆だ。誰かへ受け継がれ……再び輝く」

『ウルバト』は確かに終わった。しかし、いつかまたウルトラを題材としたゲーム作品がリリースされた時、本作のノウハウ、そして何より「本作があったからこそ生まれた/新生したCGの怪獣たち」が、それら次代の光を支えていくのは間違いない。

 

そうでなくとも、これまでにないほど「ウルトラ怪獣」への愛とリスペクトを持って作られた本作は今後もオンリーワンの存在としてブリーダーたちの記憶に生き続け、ウルトラのゲーム史において燦然と輝き続けるだろう。


2018年から2021年。ウルトラにとって苦難の時でも、世界にとって苦難の時でも決してその歩みを止めなかったウルバトと、そんなウルバトを支え続けてくださったスタッフの皆様、本当に、本当にありがとうございました。愛すべき怪獣たちと進む日々は、心の底から楽しく幸せなものでした。

 

さらば、そしてありがとう『ウルトラ怪獣 バトルブリーダーズ』!f:id:kogalent:20210528132844j:image

れんとの転職活動レポート【後編】~後のない無職、2021年の転職活動に臨む~

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~これまでのあらすじ~

とある特殊法人の非常勤職員に転職し、正社員への登用を目指して勉強に励む虎賀れんと。しかし、よりによってそんな状況下で某ウイルスによるパンデミックが発生。
試験がその門戸を大きく狭めたばかりか、大打撃を受けた職場からは無慈悲にも3月末での解雇が宣告されてしまう。


時に2021年2月。3月までの就職先決定を目標に、第2次転職活動がその幕を開けようとしていた……。

 


○  ○  ○

 


『自分との戦い』というフレーズをよく見かける。身近なところだと、スポーツや勉強などにおいて『自分の怠惰/欲望を捩じ伏せること』を意味することが多いだろうか。

このフレーズがもし転職活動において使われるならば、それは少し違う。転職活動は自分で自分をいかに励まし、支えてあげるかという戦いだ。


転職活動は、真剣に行えば行うほどに自分を否定されることになる無限地獄。

自己分析をすれば『他人に誇れるような経歴/能力』を持たない自分に嫌気が差す。
書類選考で落ちれば、これまでの仕事でもっと良い成果を挙げられなかった自分を責める。
面接で落ちれば「自分が魅力的じゃないから落とされたんだ」と底知れない不安に陥る。

 

しかし、自己嫌悪がどれだけ積み重なっても止まることは許されない。

誰であれ、自己嫌悪に対して自分を肯定する材料はどうしても少なく、どうにか他の手段で崩れ落ちそうな自分を必死に支える必要がある。自分の場合は、友人たちとの会話や好きなコンテンツを楽しむことがその『手段』だった。

 

もう1つ大きかったのが、自分を支えてくれたこの歌の存在。

2009年放送のアニメ『DARKER THAN BLACK-流星の双子-』の主題歌である『ツキアカリのミチシルベ』。この歌は切なくも力強い『先の見えない旅路を行く人へのエール』であり、転職活動中の自分にこれ以上なく響く歌だった。

答えのない毎日が ただ過ぎて行く時間が
これから先どうなるのだろう 分からない
ツキアカリのミチシルベ
雲を越えボクに届け
進むべき道を照らしてよ
今日がどんなに壊れそうでも

(中略)

答えは自分の中に 必ずあるものだから
諦めないで 強く生きることを やめないで
悲しすぎて 前に進めない時でも
共に悩み歩んだ僕らに 風は吹く
どこまででも

この歌を聴く度に、同作主人公たちの過酷で一途な旅路を思い出して「自分も頑張ろう」と思えたし、孤独に寄り添いつつ、優しく背中を押してくれるようなこの歌そのものにも何度も励まされた。
(『DARKER THAN BLACK』とこの曲については別記事にて)

 

こういった様々な支えがあったからこそ、絶望的な状況下でもどうにか立ち止まらずに歩き続けられたのだと思う。

それらさえない本当の『孤独な戦い』であったなら、2021年3月末、どこへの転職も叶わずに無職となったあの瞬間に自分は折れていた。

 


○  ○  ○

 


2月末に始まった転職活動、その初動は非常に好調だった。

事前情報通り、転職サイトから応募した場合の書類選考通過率はエージェント経由の場合に比べ圧倒的で(サイト経由での応募のうち約50%が書類選考を通過した)入念な事前準備が実を結んでいると言えた。

 

しかし、書類選考の後に待っているのは前回も苦戦したコミュ障最大の敵、面接。
3月が終わった時点での面接通過率は5/12。数字だけ見ると前回以上の数字だが、受かった5つはいずれも『穏やかな雰囲気で行われる対面面接』であり、そうでないもの=Web面接や、厳格に行われる役員面接といったものは漏れなく全滅。……それって最終面接詰みでは? という不安が募る。

 

受かった面接の内実を見てみると、受かった5つのうち2つの面接はある法人の1次・2次(最終)面接であり、その結果、大変ありがたいことに3月中旬で内定を頂くことができた。しかし、そこは『採用情報ページの情報と実情が違う(だいぶ黒い)』という典型的な要注意タイプの法人であり、逃げ出すように辞退。

一方残り3つの法人はというと、1次面接を通過できても2次面接で落選したり、合否連絡までのスパンが長く、最終面接が4月になったりといったところ。もう1社はそもそも面接が3月末だったため、月内合格への期待はしていなかった。

 

結果、来たる3月末。転職の宛もないまま(こんなご時世なので送り出されることもなく)職場を去り、れんとは無職となった。

 

さよならの時くらい微笑んで

さよならの時くらい微笑んで

 

3月末は転職に無関係な点でも精神的に追い詰められる出来事が多く、文字通り最悪の状況だった。しかし、偏頭痛が悪化しようと瞼が痙攣しようと止まれないのが転職活動の辛いところ。歯を食い縛り、気合いと根性で転職活動2ヶ月目に突入する。

 

無職になっても何が変わるでもなく、ハローワークで失業保険の受給手続きなどを行った後はこれまで通り応募を続けていくのみ。増えた自由時間は選考の振り返りと対策に注ぎ込む。

 

しかし、肩書きが『在職中』から『離職中』になったためか、書類選考の結果が目に見えて悪化していた。具体的には、これまで体感50%だった書類選考通過率が体感20%ほどまで落ちており、エージェントを介した応募に至っては合格通知が全く来なくなっていた。

『面接の対策をしてもそもそも面接まで辿り着かない』というシビアな状況に、日夜血の気が引いていく。
(状況を打開するため、『リクナビNEXT』と『エン転職』『エン・エージェント』にも手を出すが、大きな進展にはならず……)

 

そんな紆余曲折を経ていると、あっという間に1週間が過ぎ、2週間が過ぎて4月中旬。ますます追い詰められる精神状態の中、マイナビ転職からの目を疑う通知が一件。それは3月末に『1次面接』を受けた会社からの内定通知だった。

 

自分でもよく分からない叫び声を上げながらメールを確認する。自分の読み間違いじゃないかと内定通知の文面を何度も見返すも、夢じゃない。
だが、そこで焦ってはいけない。はやる気持ちを抑えつつ、添付されていた労働条件通知書をしっかりと確認する。

 

確認して、がっくりとうなだれた。
その待遇は『特定の国家資格に合格するまでは契約社員』というもの。それ以外にも多くの条件が聞いていた内容と矛盾している、怪しさしか感じられない代物だった。


「自分はそんな企業からしか内定が出ない程度の人間なんじゃないか」……と、肩を落としながら泣く泣く内定辞退。当たり前の話だが、危険な会社=人が定着しない会社ほど、人欲しさにあっさり内定を出してくるものなのだ。

 

罠


転職活動には、実はタイムリミットがある。それは『失職してから2ヶ月』。無職の状態が2ヶ月以上続いていると、企業から「選り好みをしている」or「それだけの間どこからも雇ってもらえないような人物」という印象を持たれてしまい、書類選考通過率が更に低下してしまうのだという。
『在職中』から『離職中』になっただけで書類選考通過率が大きく下がったことを踏まえると、状況がどれほど悪化するのか考えたくもない。

2021年4月中旬、2社目の内定を辞退したことで、この話が殊更に頭を離れなくなっていた。

 

企業に応募してからリアクションが来るまではおおよそ1週間。しかし、1週間後は4月下旬、ゴールデンウィーク直前の繁忙期に反応を貰えるはずもない。
しかし、ゴールデンウィークが明け、その後の繁忙期が終わるとあっという間に5月中旬。その頃には件の『タイムリミット』まで1ヶ月しかなくなってしまう。そうなったらもうなりふりかまっていられない訳で、自分の希望も理想も捨てざるを得ない。

無職1ヶ月目にして、既に背水の陣の只中と言える状況だった。


しかし、転機は急に訪れた。

4月上旬に面接を受けた会社から最終面接の案内が来たことに加え、4月頭に最終面接で落ちた会社から「別部署での採用枠でもう一度最終面接を行いたい」との案内が届いたのである。

 

その2社は共に志望度の高い会社だったため、喜び勇んで即受諾。GW周りのことを考えると、その2つの面接が4月内の、もっと言うなら『自分の望む形での転職』を実現するラストチャンス。有り余る時間を全て使い、最終面接への対策を開始した。


○  ○  ○


最終面接前にできることは、企業研究と更なる自己分析、そして面接対策の3つだけ。そのうち最大の課題は言わずもがな『面接対策』だ。

 

これまで大きな弱点だった『話が詰まる』事態には、何も考えずに話すことができる『自分の本音』を分析し、そこにPRや志望動機を沿わせる=『僅かな嘘を本音に混ぜる』作戦で対応。これで面接は断然スムーズにこなせるようになったが、『自然体の面接』というものが未だに課題だった。

面接では「楽にしてね」「リラックスしてください」「雑談感覚で話せれば」などと言われ続け、正職員登用試験の不合格通知を受けた際も担当者から『肩に力が入りすぎている』『素が見たい』と言われていた。これら全てがイコール『自然体の面接をしてくれ』ということなのだろう。


……自然体って何だ……?


インターネットや本を漁っても、面接に『素で行こう』とは書いておらず『自然体』が推奨されている。それもごもっともな話で、文字通り素で行こうものなら社会人としてのマナー不足と見なされる。だからこその『自然体』という言い方なのだろうが、じゃあ自然体って何だよ、という話。

それがどうにも掴めずヒントを探すも、見付かるのは「リラックスしよう!」「ゆっくり話そう!」「自信を持とう!」といった曖昧なものばかりで、目指すべき『自然体』の正体はどこにも見付からなかった。

 

……じゃあ、逆に面接官は何を求めているんだろう。
ある日、バスの中で不意にそんなことを考えた。面接官は求職者に『ロボットのような完璧なマナー』を求めている訳じゃない。かといって、本当の『素』が見たい訳でもない。じゃあ何が見たいのか? 面接官がこちらの『雰囲気』にこだわる理由は何か……?
おそらく、それは『会社に馴染むかどうか』だろう。

 

『雰囲気が会社と合わない』というのは、上手くいったと思った面接で落ちる場合によくあるパターンらしく、確かに自分も採用側だったらそれは気にするだろうと思う。これは良し悪しではなく、ただただ『相性』の問題だ。

 

能力が低くても、周囲と馴染むことができれば活躍の道は開けるだろうし、周りにも良い影響を与えていくだろう。
だが、それは逆もまた然りで、いくら優秀でも、会社の雰囲気に合わないようであれば活躍の道が狭まるだろうし、周囲のパフォーマンスを下げかねない。そんな事態を避けたいからこそ、人事担当者や役員はわざわざ相手の顔を見れる機会=『面接』の場を設けるのだ。

もしこの仮説が正しいならば、面接官の求める『自然体』の正体もうっすら見えてくる。
つまるところ、面接官が『リラックスしてください』『自然体で臨んでください』などと言うことで引き出したい求職者の自然体とは『会社で働いている時に出す雰囲気』……もっと言うなら『職場で上司と接する時の態度』なのではないだろうか。

 

それをイメージすると、なるほど確かに素でもなければ固すぎる訳でもないのが『自然体』だ。職場で上司相手に「はい!それは◯◯という理由があり、◯◯からです。このことから私は~」などと機械のように読み上げる部下がいたら不気味にも程があるし、だからこそ、面接官は面接の場で『リラックスしてください』『自然体で臨んでください』などと言う訳だ。

分っかり辛いわ!!!!!!!!!!!!

 

自然体のつくり方 (角川文庫)

自然体のつくり方 (角川文庫)

 


1社目の最終面接を控えた決戦前夜。勿論緊張こそするが、驚くほどにリラックスしている自分がいた。『自然体』の正体に気付けたことで、これまでずっと頭を悩ませていた『自分なりの正しい面接』がようやく見えたからだ。

 

(比較的)嘘も偽りもない動機を軸に据え、相手を会社の上司だと思って、自分の仕事に対する現実的な目標/何がしたいのかを語り、それを実現できる根拠(能力や実績)をPRポイントとして述べる。
目標地点がはっきりすれば後は着地までのルートを描くだけ、これまでのように道に迷うこともない。

 

かくして望んだ1社目の最終面接。
相手は現場のリーダーと常務取締役という緊張必至の顔ぶれ。しかし、面接の軸=回答のスタンスが固まっているためか、予想外の質問にもそれこそ『自然体』で答えることができた。そして何より、こちらのPRポイントに2人の面接官が興味を持っていると察することができた。

余裕があるからこそ、しっかりとアピールポイントを伝えることができたのかもしれない。

 

所々不安な問答もあり「概ね上手くいったか……?」という感触で終わった最終面接。それでも、やれることはやりきったのだから後悔はない……と、そう思っていたその日の帰り道、『マイナビ転職』のマイページに通知が1件。それを開き、驚きと感動で崩れ落ちた。

 

内定通知だった。


そこで余裕が生まれたのだろう、直後に行われたもう1つの最終面接にも無事合格。絶体絶命の窮地から一転し、2社の内定を獲得することができた。

突拍子もなく選ばれる側から選ぶ側に回り困惑したものの、事業内容や勤務待遇、職種に面接の雰囲気、そして内定を当日中に出してくれたことを鑑みて、1社目の会社の内定を受諾。
急転直下、2年間に渡る転職活動はここに終わりを告げたのであった。


第2次転職活動の最終的な結果は以下の通り。

 

【活動期間】
2021年2月末~2021年4月中旬

 

【自己応募】
応募=25社
書類選考通過=12社
1次面接通過=5社(うち1社内定)
2次面接通過(内定)=3社

 

【エージェント経由】
応募=30社
書類選考通過=4社
1次面接通過=2社
2次面接通過(内定)=0社


合計応募数は55社、そして内定は4社。
最初の転職よりも困難を極める状況ながら、より良い結果を掴むことができた自分をここは素直に褒めてあげたい。

 

十分な自由時間を持てる社会人ライフ、穏やかな雰囲気の職場、様々な経験と知識……。あまりにも過酷だった2年間だったが、相応に数多くのものを得ることができた。どれもこれも、この2年間が無駄でない証明としては十分すぎるもの。

しかし、それら以上に価値があったのは、この2年間を駆け抜けたことで少しだけ自分を好きになれたこと。心も身体もボロボロの自分には、それが何よりの報酬だった。

 

 

○  ○  ○

 

 

全てが終わって現在、2021年5月。GW明けから新しい職場で働いている真っ最中だ。
休みの少なさが玉に瑕だが、その欠点を補って余りあるほど快適な職場環境に毎日驚いている。

 

まだ勤務開始から1ヶ月も経っていないが、一つ分かったのは、自分のポジションがこの職場において『積極的な業務の改善・効率化』を求められていること。
それは、自分が第2次転職活動においてPRポイントとして挙げ続けていたものだった。

 

要は、運。

自分が受かった一番の要因は、自分の能力をピンポイントで求めていた会社に出会えたことだったのだ。


優秀な人も、合わなければ落ちる。
優秀でなくても、合えば受かる。

きっと、そういう『自分と合う企業』に出会えるかどうかは本当に運でしかないのだろう。

 

ただし全て運任せでいいはずもなく、そういう企業に出会うチャンスを増やす……つまり『運の底上げ』をするには、求人への応募を重ねて場数を踏み、理不尽さに打ちのめされても止まることなく歩き続けなければならない。 
仮に自分と合う企業と出会えたとしても、採用担当者の目に留まり、自分のPRポイント=『どこが合っているのか』をしっかり伝えられなければ意味がない。そのためにも選考対策は不可欠だ。

 

運だけに任せられない、けれど結局は運次第……。なんて理不尽な話だろう。
だからこそ、転職活動はきっと誰にとっても過酷な旅になる。人によって得意不得意や大小の差こそあるかもしれないが、結局、誰にとってもゴールの見えない旅である点は変わらない。最後の決め手は『運』なのだから。

 

何も「上手くいかないことを運のせいにしていい」と言いたい訳じゃない。言いたいのは「最後の決め手が運だからこそ、上手くいかなくても自分を責めるべきじゃない」ということ。

 

上手くいかないと凹むのは当然のことだが、どれだけ完璧に仕上げたとしても結局は運が絡む。選考に落ちたとしても、必ずしも『劣っている』と判断されたとは限らない。

 

例えば、ある求職者が書類選考を通ったものの面接で落ちたとする。
その原因が『能力不足』かと言われると、そうとは限らない。そもそも書類選考に受かった時点で、その能力や実績は『十分に採用の可能性がある』レベルだと評価されているのだから。
では、コミュニケーション能力や人柄に問題があったのか? というと、そうとも限らない。求められる人物像は企業によって異なるからだ。

 

積極性がありリーダーシップに優れた人は、成長中の企業では好まれる一方、年功序列型の組織では出る杭として嫌われることもある。そういう組織では、消極的であっても周囲に溶け込める落ち着いた人柄が好まれるだろう。


人の長所が様々なら、企業の求める人物像も様々。周囲から見て優秀そうな人でも落ちる時は落ちるだろうし、逆に、最低限の社会人経験と会社の求める人物像さえ持っていれば、それだけで合格できることだってあるかもしれない(おそらく自分はそのパターン)。

なにせ、こちらも人なら相手も人なのだから。

 

 

○  ○  ○

 

 

とはいえ、転職活動の過酷さの中ではどうしても自分を責めてしまう、自分を信じられない、という人もいるだろう。


そんな時はどうか周りを見てみてほしい。家族か友人かパートナーか、きっとあなたを待っている誰かがいるはず。もしそうなら、それは自分では見えなくても他人からは見える『何か』があるからだ。本当に何もない人間を人は待ってくれないし、手を差し伸べてもくれない。

 

僕も、大概自分のことが信じられない人間だ。全てが終わり、少しは自分が好きになれた今でさえ、日々過去の失敗を思い出しては都度凹み、自分嫌い病と格闘する毎日。転職活動中はそれが特に顕著で、メンヘラだと言われれば返す言葉もない。
かといって、メンヘラあるあるの『理解のある彼くん/彼女ちゃん』などいるはずもなく、ずっと背中を押してくれていた家族同然の親友は、転職活動中のある日を境に会うことも話すことも叶わなくなってしまった。

美談でありがちな『特別な支え』など、自分には無かったのだ。

 

だからこそ、自分嫌いが止まらなかった。

書類選考で落ちて、面接で落ちて、ただでさえ嫌いでしょうがない自分をもっと嫌いになる。何もかもが嫌になる弱い自分が情けなくて、もっともっと嫌いになる。負のスパイラルはどうやっても止まらない。

 

それでも、そんな自分の転職活動の終わりを待ってくれている人たちがいた。
自分のことが信じられなくても、信頼できる家族や友人たちが自分を信じてくれているのだ。皆が自分に何を見出だしてくれているのか分からなくても、自分を信じる皆のことなら信じてみても悪くないはず。「お前を信じる俺を信じろ」という言葉が脳裏を過った。

 

 

この記事を読んでいる方の中に、転職活動をしようとしている人、もしくはしている最中の人はいるだろうか。

 

これまで書いてきた通り、転職活動は過酷なもの。少なくとも僕は周りの支えがあったから最後まで進むことができたが、それでも最後は運次第。運が悪ければ、僕はきっと今でも無職だった。

 

ワクチンの接種こそ始まったが、熾烈なパンデミックの中で転職市場がいつ、どれほど好転するかは闇の中だろう。

そんな中で戦う/戦おうとしているあなたのことを僕は心から応援したいし、助けになれることがあるなら全力を尽くしたい。けれど、僕があなたを知らない以上、そこにはどうしても限界があるだろう。

知識や経験で多少の助力ができても、あなたのことを知らない僕からのエールは、あなたの心の支えにはなり得ない。

 

しかし、転職活動という険しい道を進むあなたの周りには、支えになってくれる人たちが必ずいる。周りが真っ暗で何も見えない時は、遠慮なく声を上げてみてほしい。喜んで手を差し伸べてくれる人がいるだろう。助けを求める側に遠慮があるように、助けたい側にも遠慮があるものだから。

 

 


転職活動はゴールの見えない過酷な旅で、『いつか必ず理想のゴールに辿り着ける』などという聞こえの良い言葉で締めることのできない理不尽なもの。だからこそ、とても一人で乗り越えられるものではないし、誰かの助けを借りることは決して恥ずかしいことじゃない。

 

『自分にできる最善を尽くし、時に誰かの手を借り、折れることなく歩き続けていく』ことが、僕の学んだ転職活動の最適解。

より細かく具体的なことも、3つの記事にできる限り書き綴ってきました。そんな記事たちが、一人でも多くの求職者の助けになることを切に願っています。

 

僕はあなたのことを知らないけれど、心の底からあなたのことを応援する一人です。

 


記事にして3本、非常に長い文章となりましたが、ここまで読んでくださった方々、僕の転職活動を支えてくれた皆様、本当にありがとうございました。

やったよ、俺。

 

れんとの転職活動レポート【中編】~契約社員、パンデミックに堕つ~


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~これまでのあらすじ~

虎賀れんとが新卒で就職した営業職、それは想像を遥かに越える地獄だった。

営業から逃げ出して平和なオタクライフを手に入れるべく始まった転職活動は、50社もの応募を経て遂に実を結ぶ。しかし、その雇用形態はあくまで契約社員という不安定なもの。

「正社員登用試験に受かればいい」と高みの見物を決め込むれんとだったが、水面下で『ある脅威』が世界に迫っていることを、この時は気付くはずもなく……。

 


○  ○  ○

 


時に2019年10月。
どうにか無職の期間を作ることなく、とある特殊法人の非常勤事務職員として転職に成功。前職は(どういう訳か)営業が営業事務をほぼ全て自身で行う会社だったため、事務職としての経験は十分。順調すぎるほどに業務をこなし、配属先での評価も上々。気分はさながら異世界転生して無双する主人公だった。 ※フラグ

 

しかしどれだけ成果を上げようとも、2年半という契約期間も、それまでに正職員登用試験に合格しなければならないというミッションも変わらない。

仕事の傍らで試験絡みの情報を収集していき、その試験が厳密には『一般向けの正職員採用試験に自分も参加するだけ』という(聞いていた話となんか違う)ものであることや、規模を変えて年2回開かれること、そのどちらも形式は同じで


①書類選考
②教養・作文試験
③1次面接(グループディスカッション)
④2次面接
⑤最終面接
という流れであることを知る。

 

当時は10月。最初の試験となる冬試験は、目的が欠員補充のため枠が少なく倍率が高い(30倍ほど)もの。そこで肩慣らしを行い、春に開かれる本試験で合格を狙う……というプランを立て、大学受験以来となる試験勉強の日々が幕を開けた。

 

畑中敦子の数的推理ザ・ベストプラス【第2版】

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  • 作者:畑中 敦子
  • 発売日: 2018/02/28
  • メディア: 単行本
 

 

非常勤職員ということもあってかそこまでハードな仕事は任されず、仕事は概ね定時で上がることができた。そうして確保できた時間を惜しみなく勉強に投入していく。
試験科目は公務員試験に準ずるため、大雑把に言うなら

・数学(数的推理/判断推理)
・国語(文章読解)
・社会(日本史/世界史/地理)
・理科(物理/化学/生物/地学)
・英語(文章読解)
・政治
・経済
・法律
・時事
・作文

といったところ。多くない?


ただでさえまともに勉強したことのない経済や物理といった科目が並んでいるのに、数学や世界史といった過去の宿敵たちまで並ぶ様相はまさに世紀末。早速この道を選んだ自分を全力で呪いつつ、家では数学の参考書、外では暗記科目の一問一答に教材を絞っていざ猛勉強。

 

そしてあっという間に迎えた2020年1月、無事に教養・作文試験を通過。1次面接となるグループディスカッションも上手いこと発表を担えたからか無事突破するも、2次面接で不合格となってしまった。

対策期間を考えれば健闘した方だぞ! と励ましてくれる自分もいれば、割とがっつりショックを受けている自分もいたりしたが、どのみち本番は次(6月)の春試験。怯むことなく試験の全容を書きまとめ、次なる対策を始めていく。

 

不安定な状況には違いなかったが、なぜかこの時の自分には「春試験では大丈夫だ」という妙な確信があった。
なにせ今度は対策の時間も十分。出題形式も分かるし、面接の形式も分かる。採用枠も多ければ、日々の仕事を通して法人への理解も深まっている。


そして何より面接担当者から言われたのだ、「よほどのことが起こらなければ大丈夫」だと。

 

 

2020年2月。
某ウイルスによる未曾有のパンデミック発生、緊急事態宣言発令。

 

2020年5月。
職場の友人から
「応募数が昨年比3倍」
というおぞましい報せが入る。

 

2020年6月~7月。
本試験に臨むも2次面接で落選。

 

2020年8月。
今回の試験の採用枠が昨年比1/10であり、実質的な倍率がおおよそ100倍スタートの試験だったと知る。

 


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ウゾダドンドコドーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 


そんなこんなで春試験は無事開催されたものの、またしても力及ばず敗退。
確かに、確かに自分が誰よりも完璧に仕上げていれば問題はなかった。『内部の人間』という大きなアドバンテージがあったのに、というのもその通り……なのだが、こんなのって、こんなのってないよォ!!!!!!!!!(碇シンジ)

 

だが本試験で採用が少なかったということは、転じて『欠員補充』を本来の目的とする冬試験での採用枠が増える可能性が高い、ということだ(ポジティブシンキング)。
契約期間(残り1年半)内に受けられる試験は残り3回。次を最後にする意気込みで、冬試験までの半年間をかけた更なる追い込み修行が始まった――!

 

フリージア

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  • J-Pop
  • ¥255

 

2021年1月、試験当日。

熱 が 出 ま し た /(^o^)\


2021年2月。

人事担当「パンデミックのせいで経営悪化しました、3月で解雇ね ^ ^

 


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ウゾダドンドコドーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 

 


正直、半期決算を見て嫌な予感はしていたし、その時点でこの事態を予想しておくべきだったのかもしれない。
そこで「どうにかなるっしょ!!」などと楽観を決め込んだ結果がこの始末。残り1年の猶予期間も、最後のチャンスだと思っていた残り2回の試験も消滅。全ての展望が白紙に戻ってしまったのだ。


厳密には『受験はできる』のだが、その場合は『無職の状態で、受かるかどうかも分からない試験に全てを懸ける』ということになる。それがいくらなんでも無謀すぎることくらい、冷静さを欠いた頭でも難なく理解できていた。
結果、残された道はたった1つ。

 

2021年2月。
パンデミックが世間を襲う中、転職活動が再び始まったのである……!

 


○  ○  ○

 


こうして幕を開けた第2次転職活動。しかし、同じ転職活動といっても状況は前回とまるで別物。

前回の転職時は社会人3年目。つまりはギリギリ『第二新卒』だった訳だが今度は4年目。第二新卒でないどころか『たった4年で2度も転職をしている要注意人物』という烙印が押されている状態だ。


更に、転職市場が売り手市場だったのも過去の話。世間はパンデミックでリストラが横行する真っ只中で、前回と同じような甘い覚悟で挑もうものなら惨敗するのが目に見えていた。

 

転職活動のピークは4月/10月就職分。そして、転職活動にかかる期間は平均して1~3ヵ月と言われている。
当時は既に2月。ピークに合わせて4月就職を目指すならすぐにでも応募を始めるべきだったが、見切り発車でどうにかなるような状況じゃないことは明白。急がば回れ、まずは土台を磐石にすることが何より必要だった。

 

絶対内定2023 自己分析とキャリアデザインの描き方

絶対内定2023 自己分析とキャリアデザインの描き方

 

 

という訳でまずは前回の転職活動の振り返り。するとまあ、志望動機や自己PRの拙いこと拙いこと。1年以上かけて正職員登用試験対策の修行を積んでいたこともあり、かつての自分の転職活動ぶりが無様に見えてしょうがなかった。気分はまさにフリーザとセルを同時に相手取るGT悟空。(オタク特有の伝わらない比喩)

 

問題は自己PRや志望動機だけではない。他にも業界や職種への理解度、将来の展望(ビジョン/キャリアプラン)といった『自己分析に由来する点』全てが練り不足だったため、自己分析のやり直しはまさしく急務だった。

 

前回の転職活動では転職エージェントとの面談や適性検査を経て早々に終えてしまった自己分析。確かに『資格・技能』や『数年間1つの職種で勤め上げてきた経験』など、箇条書きにするだけで伝わる魅力を持っている人ならばそれで問題ないだろうが、虎賀れんとというポンコツはそうもいかない。資格もなければ、社会人4年目にして転職2回目、しかも経験職種はバラバラだ。こんな履歴はプラスどころか明らかにマイナスなため、その分を自己PRや志望動機のような部分でカバーする=自己分析を人並み以上にしっかり行う必要があった。

 

その上でメインに据えたのは書籍。アナログな考え方だが、自己分析や面接対策のような『多様な切り口から学ぶ必要があるコンテンツ』に向き合う時は、各ページに都度飛ぶ必要があるネットよりも一つのモノとして体系的に纏まっている書籍の方が圧倒的に使い易い。


勿論この手の書籍には当たりはずれもあるが、そんな時に便利なのが書店。(時世柄あまり良いことではないが)店頭で内容をサッと確認し、自分の感じている『つまずき』に対応した回答が記載されているか、説得力のある文章か、などポイントを絞って転職活動のお供を見定めていく。

転職大全 キャリアと年収を確実に上げる戦略バイブル

転職大全 キャリアと年収を確実に上げる戦略バイブル

  • 作者:小林 毅
  • 発売日: 2019/04/19
  • メディア: 単行本
 

個人的にお勧めなのがこちらの書籍。

転職に特化した書籍自体が少ない中、この本は『転職初心者とコンサルタントの対談』を模した形式になっているため、シビアな転職事情を素人の視点から分かりやすく学ぶことができる。スタートアップから内定周りのことまで一冊でカバーしている点もポイントが高く、買っておいて損はない一冊だ。

(これまでに何度か貼り付けてきた『絶対内定○○』も非常に有用なシリーズなので、特定の分野に不安のある方は是非)

 

この本をベースにしつつ、不足している点を他の書籍や『マイナビ転職』などの転職サイトに掲載されたコラムなどで補い、自己分析を一からやり直す。そしてその自己分析を元に、これまで転職エージェントに丸投げしていた職務経歴書を自分で一から作り上げる。

 

ラジオ体操を全力で行うとかなりの運動量になるように、自己分析もここまでガッツリ行うと中々に時間がかかるもので、この時点で既に2月下旬。はやる気持ちを抑えつつ、次は『どうやって応募していくか』を見直していく。


結論から言うと、個人的な最適解は『転職エージェントと転職サイトの併用』だった。

 

前回の転職活動では転職エージェント2社(duda、マイナビジョブ20s)を利用し、自己応募は片手で数えるほどの件数しか行わなかった。しかしその結果が2/50の内定で、それも片方は非常勤職員というハードルの低い採用=実質的にノーカウント。大敗だ。

この大敗には、自分自身の力不足という大前提に加えて、もう1つ『エージェント経由の場合は採用側のハードルが高い』という事情が影響している。

 

転職エージェントは(自分の知る限り)無料で利用することができる。では転職エージェントの利益はどこから出ているのか? というと、求職者が転職した場合に採用した企業からエージェントに支払われる『紹介料』だ。

ここで、求職者-転職エージェント-企業の関係を整理すると下記のようになる。

 

     【求職者】
    依頼↓ ↑企業を紹介
   【転職エージェント】
求職者を紹介↓ ↑依頼(成約時に追加報酬)
  【社員を募集する企業】

 

つまり、転職エージェントとは求職者から見れば『無料で利用できる頼もしいアドバイザー』である一方、企業から見れば『高いお金を払うことで、安心して質の良い新入社員を迎えられる』サービスという訳だ。


そのため『わざわざ高い金を払ってでも雇いたい』レベルの求職者でなければ、いかにエージェントのフォローがあれど選考を勝ち抜いていくことは難しいのである。
(参考までに、エージェント各社に『事務職への転職における書類選考通過率』を訊ねたところ、各社多少のブレはあったが10~20%という共通の回答が出ていた。低すぎない……?)

 

こういった事情から、転職エージェントは確かに便利だが『それ一本でやっていくにはリスキー』なシステムで、安定した転職活動を求めるならそのリスクを補う方法が必要になってくる。そこで登場するのが『マイナビ転職』のような転職サイトだ。

 

転職サイトへの求人掲載は(ハローワークを除くと)有料だが、転職エージェントと違い採用時に特段の追加発生料金がないため、企業からすると安定性に優れた求人方法で、採用も比較的気軽に行うことができる。そのためエージェントを介する場合よりも書類選考率が高い、という訳だ。

 

当然だが、転職サイトからの応募は『自己応募』であり、転職エージェントのようなサポートを受けることはほぼできない。書類は0から作らなければならないし、応募手続きも全て自分で行う必要がある。しかし、だとしても選考通過率が高いというメリットに敵うものなんてない。

 

この転職サイトを転職エージェントと組み合わせて使うことで『転職エージェントのサポートで得たノウハウを活かし、転職サイトから応募し安定した活動を実現する』という(個人的な体感として)最も有効な転職活動が可能になるのだ。
(勿論、サポートを受けるためにもエージェント経由での応募は不可欠。難易度こそ高いが、持ち玉が多いに越したことはない)

 

このように大まかな方針を決めた次は、より細かい準備を行っていく。

まず、使う会社は自分の経験と各所の評判、実際の使いやすさなどから判断し、転職エージェントを『マイナビジョブ20s』と『マイナビAGENT』に、転職サイトを『マイナビ転職』にそれぞれ決定。

 

志望職種は諸般の事情、そして自分の能力や経験を踏まえて広義の事務職(人事/総務/労務/経理/事務/営業事務)に限定。更に志望業界を自身の適性や希望としっかり擦り合わせることで、ようやく第2次転職活動の準備が完了。

長い戦い、その最終章が遂に始まろうとしていた。

 

○  ○  ○

 

第2次転職活動、その準備を始めた頃はまだ2月上旬、しかし準備が終わってみれば2月末。
4月の転職に向けて大きく出遅れてしまったが、時間をかけて様々なことを学び、改善していく過程は苦労に見合った自信を与えてくれた。

 

努力は絶対に裏切らない、などと柄にもないスポ根精神を胸に秘め、ゆっくりと歩き出す。
目標は3月以内の内定獲得。

世間がパンデミックの脅威に震える中、本当の最後の戦いが遂に幕を開けた――!

 


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れんとの転職活動レポート【前編】~インドアオタク、転職活動に挑む~

 

あなたは知っているだろうか。
2017年2月。Twitterの片隅に、妙に文字が読み辛いノンフィクションの就活レポート漫画が投稿されたことを……。

 

 

2017年度卒業生として就活を行った際の体験に基づく、就職活動のノンフィクションレポート漫画『虎賀れんとの就活レッドファイッ!』。
なんとなくハッピーエンドで終わった雰囲気を醸し出しているこの漫画だが、物語はそこで終わっていなかった。

 

舞台は数年後。
すっかり社会に疲れた虎賀れんとは、営業職からの逃亡を図って転職活動に励んでいた。しかし、紆余曲折の果てに待ち受けていたのは、転職活動を阻む最悪の敵、某ウイルスによるパンデミックだった――!

 


今回の記事は、2年間に渡る激動の転職活動を書き記した実録レポート3部作。

転職活動中の方もそうでない方も、ノンフィクションで送る男の戦いをぜひお楽しみください。


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時に2019年、7月末。
社会人3年目の虎賀れんとは心身共にボロボロだった。具体的に言うなら、映画を見ていると腰の違和感で集中できなくなるくらいにはボロボロだった(とてもつらい)。

 

上記のレポート漫画を経て辿り着いた職場はBtoBのメーカー。上場企業の100%子会社であったり、念願の文具や雑貨を扱うメーカーであったり、希にガンダムのような推しコンテンツと関わる機会もあったりと中々に至れり尽くせり……だったのだが、それ以外は中々に修羅。
以下、その一例。


・月の残業は60~80時間。
(原因の一例:回収した大量の不良品を営業自らが毎日検品)

・毎日商品サンプルで満タンのトートバッグ(自社商品)を肩に提げて客先へ直行(腰痛の原因)

パリピだらけの社員(ウイスキー水鉄砲、横行するR-18社内性事情トーク、食べ物で遊ぶ飲み会 etc...)

・取引先「メールで連絡した、って俺が見てなかったら連絡したことにならないだろ!」

・某大手芸能事務所「言われた通り指定日中に連絡したじゃないですか」※深夜3時


…………などなど。
更に3年目と言えばもう新人扱いして貰えない時期。営業件数や予算のノルマも厳しく、日中は商品サンプルの山を抱えて営業、夕方から社内業務、退社は毎日10~11時……といった労働環境は一介のインドアオタクにとってはまさに激務で、身体は整体師に「全身ヤバいです」と言われる有様だった。 ※実話

 

 

仕事に限界を感じ始めていたある夏の営業帰り。道すがらばったり同期(営業仲間)と出くわし、思わずにこやかに談笑(世界への猛烈な愚痴)していたところ、不意に道端の喫茶店に誘われた。

 

「転職活動中なんだ」

 

で、突然のカミングアウト。
驚いたのは、その同期が「同期中トップの営業成績」を持つ天性のスーパー営業だったからだ。
勿体ない、という言葉が口を付いて出てしまったが

「でも、この会社で定年まで働く未来が見えないんだよね」
「わかる~(即堕ち)」

 

かくして、虎賀れんとの転職活動はド唐突に幕を開けた。
なんとなく進○ゼミの漫画みたいで怪しい話だが、本当にその一言がストンと腑に落ちてしまったのだ。いつかは転職することになるだろうし、だったら早いに越したことはないな、と。

 

本来転職は0から始まり路頭に迷うものだが、幸いにして同期には辞めた人や辞める予定の人がわんさか。彼らやネットから学んでいくと、転職活動には大まかに2つのパターンがあることが分かった。

 

①自己応募
文字通り、自分自身で書類を作って応募するパターン。ハローワークのような施設や『マイナビ転職』のような民間企業の運営するサイトを介することが多いが、応募先のホームページなどからの直接応募も可能。
②に比べて選考通過率が全体的に高い反面、とにかく手間がかかるのが難点(書類作成、応募手続きなど)。

 

②仕事紹介
『転職エージェント』と呼ばれる専門家に要望を伝えるなどして、「ここはどうですか」と仕事を紹介して貰うパターン。
メリットとして、自分の専任アドバイザーを得ることができるため、手続きを肩代わりしてくれたり、書類作成や面接対策などに有益なアドバイスを貰うことができる。


「②一択じゃん!!!!!!!!!!!」


あまりの便利さに心を掴まれ(デメリットをしっかりと調べないまま)同期たちに倣う形でエージェントの利用を決断。

 

選んだのは大手転職エージェント会社の『duda』と、20代の転職活動に特化したサポートを行う『マイナビジョブ20s』の2つ。転職活動をどうやって進めていけばいいのかという根本的な所からフォローを行って貰えることもあり、右も左も分からないままそれぞれのスタートアップ面談(現在はWeb面談か電話)に向かう。
在職中の身でいつ行ったのか? トリックさ(すっとぼけ

 

担当者によって対応にムラがあるハローワークとは異なり、両者とも対応は非常に丁寧。転職エージェントにとっては『求職者と企業をマッチングさせる=求職者の転職を成功させること』が個人の成績評価に繋がるので、当然と言えば当然だろう。だからこそこちらの相談にも親身になってくれるし、アドバイスも的確なものをくれる。些かドライな話だが、この事情を踏まえると転職エージェントという存在への信頼度がグッと上がるのではないだろうか。

 

 

面談の内容は2社ともほぼ同じ。実際にアドバイザーを担当してくれるエージェントと顔を合わせ、情報の登録を行い、これからの展望について相談する。

 

打ち合わせ(というより実質カウンセリング)はどちらも1時間ほど。一方的でなく、こちらの経験や意見をしっかりと汲んだ上で提案をしてくれるため、納得のいく形で話がまとまっていく。そうして、目標スケジュールは【8月に転職先決定→9月に退社→10月=勤務開始】とざっくり定まった。

 

時期が決まったら次は応募先。
「営業は無理、趣味の時間を安定して確保できれば職種は問わない」という清々しいほど情けない前提に加えて、資格の保有状況や職業経験を伝えると、真っ先に帰ってきたのが「厳しいですね」の一言。知ってた。

 

出身は法学系、目の病気で免許が取れないのに特段の資格を取ってもいない。そんなやる気の感じられない社会人経験2年半の若造(絶望的)にとって、転職上の『武器』になるのは営業と事務の経験のみ。そこから営業という選択肢を取り除くと残るのは事務経験。しかし、事務職とは

・そもそも人気が高い

・離職者(=欠員)が少ない

・むしろ人員削減の傾向にある

と3拍子揃っている難関職種。その希少な枠に量産型営業マンの素人を入れてくれるほど世の中甘くはないのだ。
(事務に類するものとしてはバックオフィス業務(総務/労務/人事/運営/経営など)があるが、こちらは会社の中核に関わってくることもあって、殊更経験や実績が重視される。無理)

 

そういった状況を鑑みて、希望職種には事務職と(未経験歓迎の会社が多く、手に職を付けることができる)エンジニアを据えることに。センター試験で数学を使わないために法学部に入ったような自分が理系職種でいいのかという不安はあったが、当時の状況に『安定した休日』という希望を加えると、選択肢がもうそれしか残っていなかった。

 

コクヨ 履歴書 A4(A3二つ折り) 大型封筒3枚付 シン-5JN

コクヨ 履歴書 A4(A3二つ折り) 大型封筒3枚付 シン-5JN

  • 発売日: 2017/07/20
  • メディア: オフィス用品
 

(買ったはいいけど最後まで使わなかった紙の履歴書。時代は変わりましたね……)


こうして展望が固まったところで面談は終了。必須書類となる『履歴書』『職務経歴書(これまで行ってきた仕事の内容を説明する書類)』をPCで作成・提出すれば本格的に転職活動がスタートすることになる。


以降の大まかな流れは下記の通り。

①エージェントが企業をピックアップ
②ピックアップされた企業の中で応募する/しないものを回答
③エージェントが書類などを送付して応募手続き
④書類選考の結果連絡、合格したら面接(基本2回。希に適性検査もあり、ごく希だがSPIのような試験も)

 

スタートは8月頭。月内の転職を目標として、営業活動の傍らで上記の活動を繰り返す。信頼の持てる転職エージェントを2人も頼っているのだから、となんとなく上手くいくような気がしていた……のだが。

 

そんなに世の中甘くなかった。

 

メールで落選、LINEで落選。次から次へと落選通知。エージェントの方から電話が来た時は流石に受かっていたが、書類選考の通過率はおおよそ1/3~1/4。月内転職という目標を思うとかなり不安になる数字だった。

 

そして、仮に書類選考に通ったとしても問題は面接。これもまあ落ちる落ちる。

転職の面接には特殊なもの(集団面接、グループディスカッションなど)が存在しないようで、1次面接はいずれも企業の人事担当者や課長クラスとの個別面接形式。基本的に先方担当者は1~3人ほどで、内容も気をてらうようなものではない。むしろ新卒時の面接よりもフランクなものが多い印象さえ受けた。

が、そもそもの問題として面接はコミュ障にとってキツすぎるのだ。

 

「肩肘張らないでリラックスしてください」
「楽にしてください」
「緊張してます?」

と何度言われたことか分からないが、インドア陰キャオタクは面接であまりに多くのことを要求される。例を挙げるなら

・口癖を封印する
・インドア派だとバレないようにする
・明るい好青年オーラを出す
・志望動機とズレた発言をしない
・誰とでも仲良くできるコミュ強を演じる
・これらを全て踏まえた上であらゆる質問にスムーズに答える

 

誰ですかあなた。
これだけのことに基づいて全ての質問への回答を準備するのはとてもじゃないが不可能で、やれることは『これらのことを意識しつつ、その場でアドリブを利かせていく』ことのみ。
「そんなの楽勝じゃん」と思う方もいるかもしれないが、少なくとも虎賀れんとという男はアドリブが(元演劇部なのに)大の苦手。更に、気分がすぐ表情に出る=嘘がバレやすいというおまけ付き。要は絶望的に面接が苦手な人間だったのである。

 

実際に面接はズタボロで、志望動機を突き詰められてボロが出たり、ついうっかり「趣味は絵を描くことです」と言って「どういう絵を描くの?」と訊かれて詰んだり、「横浜(勤務地)は物価が高いよ、独り暮らしなんてやってけないと思うけどなぁ」というどう答えるのが正解なのかよく分からない質問にフリーズしてしまったり……そういうアクシデントが起きた面接は漏れなく落ちていた。

 

書類選考がハード。その先の面接もハード。分かってはいたが非常に厳しい転職活動の世界に辟易しながらも、愚直なまでに面接の振り返り→エージェントとの相談→企業の研究というルーチンを繰り返す。ここで本を読むなり状況を客観的に分析するなりすれば良かったのだが、日に日に募る焦りがそういった柔軟な考えを奪っていった。

絶対内定2023 面接の質問

絶対内定2023 面接の質問

 


勿論、中には非常に上手くいった面接もある。
8月下旬に受けたとある企業(duda経由で応募)の面接では、訊ねられることがこちらの準備してきたものとピッタリはまり、詰まることのない受け答えができた。そしてなんと、その企業から(1回しか面接をしていないのに)内定が――!

 

……怪しいな……?

 

面接が人事担当者の1回だけ、というのは、それだけ評価されている可能性もあるがそれ以上に『質を問わず社員を大量に確保したい』という可能性もある。だからこそ最低限の質問しかしてこなかった、だからこそ詰まることなく答えきれた……と考えると、悲しいかな合点がいってしまう。提示された条件を見ると労働条件もかなり(数字だけは良かったが)怪しいもので、ここは冷静に辞退することとした。

 

そして内定数が1から0に戻った時、既に時期は8月末。この時点で既に『8月内に内定獲得』という目標の達成は絶望的だった。
流石に危機感を持ち、ダメ元で転職サイト『マイナビ転職』『リクナビNEXT』から事務職の法人・団体に応募し始めるが、営業は嫌だという恐怖だけの志望動機で上手くいくはずもなく、結果、転職活動は9月に食い込んでしまうことに。

 


○  ○  ○

 


中途採用の求人募集は年中行われているものの、そのピークは『4月入社』と『10月入社』の2つ。
活動が9月に食い込んだことで焦りも大きくなり、ようやく数が増えてきた面接も通らず仕舞い(ここに来て通過した面接は内定が出た前述の1回のみ)で、それが更なる不安を招くという負のスパイラルに突入してしまった。

そして成果が出ないままとうとう9月中旬、有給消化を残して会社を退社。
エージェントからの応募も振るわず、自己応募も振るわず、本来なら全く異なる手段を試すなり書籍などを参考に抜本的な改善をするなりすべきところだが、追い詰められた実質無職はどういう訳かマイナビ転職などのサイトを介さない『法人ホームページからの応募』を始めた。

 

違う、そうじゃない 

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  • 発売日: 2013/05/08
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……まさか、この発狂ムーブが明暗を分かつことになろうとは。

 


応募したのは文科省関連のとある特殊法人マイナビからの応募が春時点で締め切られていたものの、『規模』『待遇』『勤務地』『勤務内容』などあらゆる点で文句なしの職場だったため。ついホームページに飛んでみたところ『非常勤職員(契約職員)』での採用は行っているという状況だった。『正職員への登用制度』はあるものの詳細は不明、しかし実質無職にとっては藁にもすがりたい状況で、ダメ元で応募したところ妙にあっさり書類選考を通過。

 

そして2019年9月中旬、面接当日。
面接官は明らかに課長~部長レベルの方々が3人。だだっ広い部屋の中心に裁判の被告人のように座らされ、ガタガタと震えながら笑顔で質問に答えていく。


最後の逆質問で正職員への登用試験について訊ねたところ「公務員試験に近いものだが難易度・倍率共に高くなく、よほどのことがなければ大丈夫」という嬉しい情報が手に入ったが、面接の感触はいつも通り。また落ちた、9月内の転職さえできないのでは――と精神がどん底に落ち込んだ、その日の夕方。


合格、そして内定の通知が電話で舞い込んだ。


どうやら非常勤だから面接は1回だったらしい――だとか、そんなことを考えることもなく当日中に内定を承諾。
2019年9月中旬、虎賀れんと初の転職はギリギリの滑り込みセーフで終わりを告げたのであった。


結果、総応募数は約50社、書類選考通過は16社。(仕事や他面接との兼ね合いから)辞退せず受けた面接は8社。合格した面接=内定は2社。自身の低スペックを突きつけられる凄惨な結果だったが、終わりよければ全て良し。
転職エージェントの方々に一通り『活動終了』の旨と謝罪を伝え、「こんな自分でも必要としてくれる所があるのか……」と翌日までゆっくり感慨に耽りつつ、TSUTAYAに行き、恐竜戦隊ジュウレンジャーを見始めた。

 

 

ようやく戦いが終わった解放感に浸る中、不安がなかったと言えば嘘になる。ただ、この時は思っていたのだ。


面接官の言う通り『よほどのこと』がなければ大丈夫だろう、と……。



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総括『ウルトラマンタイガ』シリーズ屈指の賛否両論作は“奇跡の物語”を紡ぐことができたのか

「この地球に、宇宙人が密かに暮らしていることはあまり知られていない。これは、そんな星で出会った若者たちの奇跡の物語である──」

 


あまりにも印象深い『ウルトラマンタイガ』冒頭ナレーション。これを聞くと、今でも1話『バディゴー!』の壮絶なアバンと当時のワクワクを思い出してしまう。

 

TV本編が終わってから1年以上が経ち、ようやく区切りを迎えた感のある『タイガ』。最新作『ウルトラマンZ』が未だに盛り上がりを見せている今だからこそ、その影の功労者でもある本作を改めて振り返り、その主人公たち、そして『ウルトラマンタイガ』というコンテンツがナレーション通り“奇跡の物語”を紡ぐことができたのか、改めて検証してみたい。

 

 

 

※以下、作品に批判的な内容が含まれます。ご注意ください。

 

 

 

ウルトラマンタイガ Blu-ray BOX I

ウルトラマンタイガ Blu-ray BOX I

  • 発売日: 2019/12/25
  • メディア: Blu-ray
 


ウルトラマンタイガ』 は 2019年に放送された「ニュージェネレーションシリーズ(以下“ニュージェネ”と表記)」第7作。本作は、 ニュージェネらしく挑戦的な要素もある一方で、令和初のウルトラマンということもあってか非常に「堅実」な設定で作られていることが特徴である。

 

本作の主人公、工藤ヒロユキ(井上祐貴)が所属するのは、防衛隊然とした立ち位置ながら大型メカなどを持たない、民間警備会社のE.G.I.S.(イージス)。そんな彼らがメインとなる都合から主な敵は宇宙人となり、 それを踏まえてメインテーマは 「宇宙人との共存」

 

このような無難な土台の上に、 ニュージェネらしい要素としてヴィラン=ウルトラマントレギアが乗ってくる。そのトレギアに相対する存在として複数のウルトラマンを主役にするが、尺の都合なども加味して彼らは「ヒロユキ1人に3人のウルトラマンが宿っている」設定とし、マンネリ打破と新規ファン層へのアプローチを狙っていく……と、 特に前作『ウルトラマンR/B』の反省を活かしたことが伺える手堅さだ。

 

更に、メイン監督は近作のみならず平成ウルトラではお馴染みの市野龍一氏と『ゴジラvs』シリーズなどで知られる神谷誠氏(特技監督)のドリームタッグ。 シリーズ構成ももはや常連となった中野貴雄氏と林壮太郎氏のタッグと、スタッフも非常に安定感のある布陣。トライスクワッドなどのキャッチーさもあって、近年のウルトラマンにしては珍しく初報段階で期待の声が大きく寄せられていたことが印象的だった。


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(円谷プロダクションからの公式発表で『タイガ』一色に染まった当時のTwitterトレンド。本作への反響の大きさが窺えたが、本編のことを考えると胸が痛む単語も……)

 


このように大きな反響を受けて始まった本作において、スタッフがまず狙いとして打ち出したものは「怪獣特撮としての原点回帰」であった。

 

ウルトラマンジード』『R/B』 と2作連続で野生ではない「召喚怪獣」が主な敵となったことに批判が寄せられ、ドラマ面の制約にもなっていたことを踏まえると当然とも言える方針だが、玩具販促的な側面が弱くなることを懸念してか、この点のマーケティングには制作側もかなり気合を入れていたことが窺える。
(実際に、本作はヘルベロス、セグメゲル、ギマイラ、ギガデロスなど実に10体もの怪獣スーツが新規造形で製作されただけでなく、他にもマジャッパやウーラーなど、既存スーツの改造でも多くの新スーツが製作された)

 

また「怪獣特撮」への回帰のためストーリーの方向性にも見直しが入っており、近作のキャラクター/アイテム重視のものから、怪獣や宇宙人を主軸としたシリアス路線のドラマに舵が切られた。

その路線に合わせるべく、アイテムは「1話で託される」もの(レット)を徐々に披露しつつ、 他のアイテム(リング)は縦軸のピースとして徐々に絡めていくという極力オムニバス形式に干渉しないような手法が取られ、結果的に本作は「細い縦軸のあるオムニバス作品」という 『ウルトラマンX』などに近い構成へ戻ることとなる。

 

ウルトラマンタイガ ウルトラ怪獣シリーズ 107 ヘルべロス

ウルトラマンタイガ ウルトラ怪獣シリーズ 107 ヘルべロス

  • 発売日: 2019/07/06
  • メディア: おもちゃ&ホビー
 

 

このように「怪獣」サイドで原点回帰が図られた分、ウルトラマンの設定はニュージェネらしいチャレンジングなもの。

「出自の違う3人のウルトラマンチーム」であるタイガ、タイタス、フーマらトライスクワッド、そして従来のヴィランとはまた異なる妖しい魅力を持ったウルトラマントレギア。この4人は相異なる個性的なキャラクター性から高い人気を博したが、その人気に一役も二役も買ったのが、彼らを演出する特撮とそれを手掛けた監督たちである。


『タイガ』は前述の「怪獣特撮への回帰」 という方針もあり、総じて特撮に力が注がれている。それは神谷誠氏をして「特技監督」という枠が用意されている点からも明らかで、作品序盤は神谷誠監督がタイガとタイタス、田口清隆監督がフーマの初陣をそれぞれ手掛けることでトライスクワッドの人気の礎を作っていた(特に、 タイタスとフーマの爆発的な人気はこの初陣によるものと言っても過言ではないだろう)。

 

更に『タイガ』の特撮においては、 神谷・田口両監督の後を担った武居・辻本(「辻」のしんにょうは点一つ)両監督の奮闘ぶりも欠かせない。

 

武居正能監督は『R/B』のメイン監督としても知られるニュージェネ代表監督の1人。巨大特撮は勿論だが、それ以上に質の高いウェットな人物描写を得意としており、本作でも21 話『地球の友人』などテーマと密接にかかわるエピソードを数多く担当、シリアスなドラマを見事に描き切った。その一方で10話『夕映えの戦士』ではウルトラ史に残る美しい夕景を演出し大きな反響を呼ぶなど『R/B』以前よりもクオリティの上がった巨大特撮を次々に手掛け、隙のない実力者ぶりを見せ付けた。

 

一方、辻本貴則監督は『ウルトラマンX』17・18話のザナディウム光線などで注目を集めたように元来ダイナミックで愛のある特撮を得意とする監督だったが、本作では更にパワーアップした演出を数多く披露。特に12話『それでも宇宙は夢を見る』での「オーラムストリウムをまるでビームサーベルのように振り下ろし、ギマイラを両断するタイガ フォトンアース」や、23 話『激突! ウルトラビッグマッチ!』での「戯画風味の画で激突するゼロとトレギア」など、他ジャンル(主にロボットアニメ?)のノウハウを取り入れた斬新なビジュアルは「辻本監督の新境地」として高い評価を集めた。

 

『タイガ』では9話以降のほとんどのエピソード(13.14.15.24.25 話以外全て) を担った両監督だが、方向性の違う二人が互いに競い合うかのように斬新な画を輩出し合う様は、間違いなく『タイガ」の大きな見所と言えるだろう。
(人気の高い13話『イージス超会議』で鮮やかな監督デビューを飾った越知靖監督の活躍も忘れてはならないトピックだ)

 

ウルトラマンタイガ Blu-ray BOX II

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  • 発売日: 2020/02/27
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「怪獣特撮への回帰」という方針を軸にした様々な試みによって高い評価を得た『タイガ』だが、その反動なのか、本作は「ドラマ・脚本面」に多くの問題を孕んでもいた。

 

本作のテーマは、各所で言及されている通り 「宇宙人との共存」である。昭和ウルトラシリーズから幾度となく触れられてきたこのテーマだが、舞台がこれまでと異なり「宇宙人が密かに暮らしている地球」であること、更に主人公が異なる出自の3人のウルトラマンを宿すこと、ヴィランが他ならぬウルトラマントレギアであることなどから、これまでとは異なる「より深い切り口」での物語が期待された。しかし実際に本編で描かれたドラマは、率直に言うならば「作品の持ち味」が活きていない、ひどく薄味なものだった。


『タイガ』の設定面は「宇宙人との共存」というテーマと絡めるには絶好のものが揃っている。例えばヒロユキは「幼い頃にチビスケを宇宙人に攫われた」というトラウマを持っており、それがE.G.I.S.入社の動機になっている……のだが、その割には「宇宙人との共存」という命題どころか「地球で密かに暮らしている宇宙人」という本作のファクターそのものに対して特段の興味・関心を持っている様子がまるでない。憎むどころか気にもしていないのは主人公としてどうなんだ……?

 

その無関心ぶりは自分に宿るウルトラマンたちに対しても同じで、2話で「タロウの息子」と呼ばれ激昂したタイガに対し、親(タロウ)について訊ねたのはなんと13話。タイタス、フーマとはもはや戦闘時以外に会話したことが何度あるのか思い出せない程度には絡みがなく、13話ではタイタスについてのプレゼンを受けて「タイタスって本当に筋肉が好きだよね」とまるで他人事のようなコメントを寄せていた。

 

では誰に対しても偏見を持たない「超・純朴な青年」なのかと思えば、4話『群狼の挽歌』ではジュースの王冠を猛烈に欲しがるファントン星人のことを指して「宇宙人の価値観ってよく分かりませんね」と差別スレスレの危うい発言をしていたりもする。この「宇宙人」絡みの問題に取り立てて関心のないスタンスは、小田/ナックル星人オデッサとの死闘を経ても、タイガの闇堕ちを経ても特に変わることがなかった。


宿主がそういうスタンスだからか、タイガ、タイタス、フーマもこの手の問題には首を突っ込まない。

タイガは闇堕ちからの復活を経て他人と認め合う心を手に入れるなど「異種との共存」を地で行く成長を見せたものの、世間の宇宙人問題にはヒロユキ以上に無関心。フーマとタイタスに至ってはヒロユキにさえ無関心なのでもうどうしようもない。闇が滲み出ている怪獣リングに「ウルトラマンの力を感じる」とまで言っているのに全く警戒も調査もしないタイタスは本当に賢者なのか……?

 

ウルトラマンタイガ DXウルトラタイガアクセサリーセット02

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では主人公以外はどうなのかというと、宇宙人問題を解決したい佐々木カナ(新山千春)、宇宙人である宗谷ホマレ(諒太郎)、アンドロイドの旭川ピリカ(吉永アユリ)とそれぞれ本作のテーマ(宇宙人との共存/多様性)に沿ったキャラクター造形がされているだけでなく、特にホマレとカナはテーマに触れるエピソードで度々主役となっていた。

 

これは期待できる! と思いきや、そういった「宇宙人との共存」に触れるエピソードでは『タイガ』の宇宙人描写におけるもう一つの問題点こと「“味方側の宇宙人がほぼ地球人”問題」が顔を出してくる。


『タイガ』という作品の暗黙のルール(?)として「善良な側面を持つ宇宙人は基本的に地球人形態しか見せない」というものがある。ホマレを筆頭に、1話のリヴァーズ星人河津、4話のヴォルク、5話のダマーラ星人とセゲル星人碧、9話の行方マイコ、11・12話のサラサ星人麻璃亜、14話のイルト、17話のセモン星人ミード、20話のヘイズ星人ミスティがこれに当たるが、一方で善良な側面を持ちながら宇宙人態を披露したのは10話のナックル星人オデッサ、18話のバット星人とピット星人、21話のゴース星人程度と少なく、更に主人公サイドと明確な敵対描写があるものばかり。まるで「味方/善良な宇宙人は地球人と同じ姿で出し、敵対するなら宇宙人としての姿で出す」という演出方針でもあったのか? と思えてしまう。

低年齢層の視聴者などに向けた「分かりやすさ」という点では確かに有効な演出かもしれないが、異種との共存において「見た目で判断しない」という姿勢は大原則。描くべきテーマに対して、妥協すべき点が根本的に間違っていないだろうか。

 

スタッフの演出意図はさておき、事実として『タイガ』で「宇宙人との共存」というテーマが描かれる場合、宇宙人側は往々にして地球人の姿をしており、更にはその価値基準も地球人と全く同じ。そのため宇宙人としての説得力がなく、まるで「自称宇宙人の地球人」のように見えてしまう。

 

その結果『タイガ』では、地球人と「地球人も同然の宇宙人」たちが懸命に共存を謳うという奇妙な画が頻発。その様は、宇宙人と地球人の問題というよりも、まるで地球人同士の差別問題や違法難民問題のそれである。その状況を、本編で度々見られた後味の悪い結末が後押しした結果、本作の宇宙人絡みのエピソードでは「SFのロマン」や「感動」よりも、往々にして「妙な生々しさ」という、単なる重さとは違う不快/ネガティブな印象が前に出る形となってしまっていた。

 

 

ではそのようなリスクのある演出を行った分「宇宙人との共存」問題への回答は素晴らしいものが描かれたのか、というと、とてもそうは思えない。それどころか、本作におけるテーマへの回答はそのほとんどがどうにも釈然としないものになっている。

 

例えば、20話『砂のお城』では地球人と宇宙人の星を超えたロマンスが描かれるが、宇宙人であるミスティは終始地球人の姿であるため「星を超えた恋愛だ!」と描写されてもこれといった特別感がない。

というのも「星を超えた絆」はウルトラマンシリーズで度々描かれ、その中では「相手の姿が地球人と異なっていても」あるいは「その元々の目的が侵略だったとしても」そんな弊害を超えて絆を結ぶ様が「ウルトラマン」ならではの感動や悲哀を呼んできた。それらに比べ、「同じ姿をした」「善良な宇宙人との」絆が描かれ、これ見よがしに「星を超えた絆だ!」と演出されても見劣りしてしまうのは避けられないし、ホマレも含めて「地球人の姿をしているから受け入れられたのでは?」と邪推することさえできてしまう。

(そもそも『タイガ』は宇宙人との共存をメインに据えているという時点で一定の高いハードルがあるため、仮に従来のシリーズと同等程度のものが出てきたとしても物足りなく見えてしまうのは必然だ)

 

もちろんスーツの都合などはあるのだろうが、それならメインテーマを「宇宙人との共存」にしないとか、ヒロユキとトライスクワッドの関係性を掘り下げて描くとか、やりようはいくらでもあったのでは……と、一介のファンながらそう思わずにはいられない。21話『地球の友人』などこのテーマを真正面から描き切った例外があるだけに「なぜ他の回でもこうできなかったのか」と身勝手な悔しささえ覚えてしまう。

 

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そして恐ろしいことに、この薄味な宇宙人描写によるテーマの瓦解ぶりは最終章で頂点に達する。

24話『私はピリカ』冒頭、トレギアの策略により地球へウーラーが襲来し、隕石のように海に落ちる。それを受けて突如「宇宙人排斥デモ」が始まり、暴徒と化した市民によって次々と(どういう方法を取ったのか全く分からないが)宇宙人たちがその正体を暴かれ、襲われてしまう。

 

ウーラーはまだ落ちてきただけなのに、とか、地球で暮らしていることが「あまり知られていない」はずの宇宙人たちが次々と正体を暴かれているのはなぜなの、とか、そもそも今までの怪獣騒ぎに宇宙人が絡んだものがどれほどあり、それがどこまで一般に知られているのかほぼ描かれていないため、彼らがデモにまで踏み切った動機がピンとこない……だとかこの時点で突っ込みどころ満載なのだが、更に恐ろしいことに、このデモにはヒロユキらメインキャラクターが一切関わらない。

 

メインキャラクターが関わらないので、そのデモ活動は「デモ隊のリーダー格(と思しき人物)が、落ちてきた瓦礫に潰されそうになったところを、ピット星人とガルメス人に救われたことで改心する」という、まさかの「モブがモブを救って仲良くなる」という、文字通り他人事でしかないシチュエーションで終了してしまう。

 

救われてから改心するまでの間に、ピット星人が諦めず戦うタイガの姿に異種との共存における光明を見出すシーンがあったりはするが、デモ隊の改心は描写上明らかに「助けられたから見直した」ものであり、ウルトラマントレギアこと霧崎(七瀬公)がタイガを応援するデモ隊を見て言い放った

「タイガ! 見ているか、これが地球人だ! ウルトラマンも宇宙人だろ? お前たちが迫害してきた、な……。怪獣やヴィランから自分達を守ってくれる存在は特別扱い? ハハハハ……まさに、これこそが混沌だ」

という皮肉を全肯定している有様である。

よりによってこのシチュエーションが最終回の終盤で披露されてしまったため、結果的に『タイガ』における「宇宙人との共存」は「地球人にとって都合の良い存在とならば共存できる」という、薄味どころかこれまでのウルトラシリーズから二歩も三歩も後退した答えを出して終了することとなった。似た問題について、4年ほど前に地球を守っていた無愛想な宇宙人が指摘していたような気がするが……。

 

更に、ダメ押しとばかりにE.G.I.S.の最終作戦がこの回答を補強してしまう。

それは空腹から星を食い荒らす怪獣ウーラーを救うために、ヴィラン・ギルド(シリーズを通しての敵ながら、最終回を終えても組織の全貌はおろか、組織がどうなったのかさえ分からないため、視聴していてかなりストレスを感じる存在である)のマグマ星人、マーキンド星人の力を借りるというもの。

 

両名とも「ピリカの自己犠牲に感動したから」とすんなり力を貸してくるが、彼らは最序盤で登場してそれっきりの個体名さえないモブキャラ、しかも紛うことなき犯罪者である。そんな彼らが伏線も改心もなく味方になり、「バディ・ステディ・ゴー」なる大仰な作戦名で最終決戦に挑み、しまいには「宇宙人との共存のモデルケース」として(描写上何のお咎めもなく)E.G.I.S.の社員になってしまう。

 

これも『タイガ』における「宇宙人との共存」問題への回答だと言うのなら、デモの件と同じように霧崎の「同じ宇宙人でも、怪獣やヴィランから自分達を守ってくれる存在は特別扱い」という言葉を肯定する回答に他ならない。伏線も改心も描かれないまま、モブキャラ同然の前科持ち宇宙人との共闘や共存を見せられても、感情移入のしようがないのである。

 

そんなトレギアを主人公が論破してくれればどうにかなったのだが、ヒロユキもトライスクワッドも宇宙人との共存問題には関わっていないためか上記の発言について触れる機会を与えられず、それどころか、トレギアの力を利用してウーラーを救ったタイガは

「どんなに否定しようと、お前もウルトラマン……光を守護する存在なんだ」

ナチュラルに最大級の煽りを言い放つ始末。こんな煽りを受けたら誰だろうと黙ってはいられない訳だが、かといってトライストリウムに負けて以降特にパワーアップしていないトレギアがタイガに敵うはずもなく、最終回としては信じられないほど緊張感のない戦いの果てにトレギアは敢えなく爆散、因縁の対決はあっけなく幕を閉じる。


これが『タイガ』における「宇宙人との共存」というテーマの顛末だが、「この地球に、宇宙人が密かに暮らしていることはあまり知られていない。これはそんな星で出会った若者たちの、奇跡の物語である―ー」という冒頭のナレーションは何だったのだろうか。

個別にピックアップすれば上質なエピソードもあるとはいえ、作品全体を俯瞰すると、少なくともこのテーマについては「過去のウルトラマンシリーズに胸を張れるものは描かれなかった」と言う他ないだろう。

 

Sign TV size

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では、そのテーマ以外の縦軸、つまりタイガたちトライスクワッドの物語としてはどうだったのかというと、こちらも十分な描写がされていたとは言い難い。


ヒロユキは上記の通り、作品全体のテーマである「宇宙人との共存」にも、自身に宿る3人のウルトラマンにも、更にはウルトラマンでありながら敵として立ちはだかるトレギアにも特段の興味を持っていないようで、物語以前に彼自身がどういう人間なのかを読み解くことが困難である。

 

そんな彼が「相棒」と呼んでやまないタイガも、その成長物語の核となるタロウに関する描写が「タロウの息子と呼ばれ激昂(2話)」「タロウの偉大さを語る(13話)」「タロウからの助言を無下にするシーンの回想(16話)」程度しかなく、その割に最終回で突如「俺はタロウの息子!」と名乗り始めるものだから、どうしても情緒不安定なキャラクターに見えてしまう(散らばっている情報を集めて前のめりに解釈すれば筋は通るが、そこまでしないと分からないような描写量で主人公の成長を謳うのは作り手の傲慢だろう)。

 

タイタスとフーマは前述の通りそれどころではなく、ヒロユキと戦闘以外で何度会話しているのか分からない程度には出番がない。更にその過去やキャラクター性が掘り下げられるのは「ボイスドラマや舞台などの派生・後発作品だけ」である。

 

尺の短い現行のウルトラマンシリーズで3人ものウルトラマンを掘り下げることには無理があるため、このように外部メディアで掘り下げを行うことは『SSSS.GRIDMAN』や『ウルトラマンZ』でも示されたように非常に有効な手段だが、そもそも「異なる出身・性格の3人のウルトラマン」は番組の一番の目玉だったはずである。

にも関わらず、その一番の目玉を『タイガ』本編で十分に描写しないのはまさに羊頭狗肉、不誠実もいいところ。特撮面でこそタイタス・フーマは魅力的に描かれていたが「それだけ」であれば従来のようなフォームチェンジで済む話で、わざわざ「別のウルトラマンにチェンジする」設定である必要がないのだ。

(当然「一番の目玉を本編内で描かない作品」がもれなく駄作という訳ではなく、それならそれで、描写不足を補って余りある他の魅力を発信すれば良いのだが、『タイガ』においてはもう1つの縦軸である「宇宙人との共存」が前述の通りなのでもうどうしようもない)

 

勿論、トライスクワッドの設定が本編中で活きた例もある。代表的なものとして、16話『我らは一つ』での「ヒロユキ、タイタス、フーマによるタイガ奪還作戦」が挙げられるが、なんとこの戦いでは

フーマ「タイガ、お前と初めて会った時は、生意気な……いけ好かねぇ奴だと思ってたけどよ、今じゃ俺とお前は一心同体! お前一人が欠けてもダメなんだ!」

タイタス「君の無駄な熱さに呆れながらも、その心に胸打たれた。思い出せ、私たちの出会いを! 私たちの旅路を!」

……と、2人とも「舞台で描かれるエピソード(しかも放送当時はまだ公演していない)」を引用してタイガに呼びかけるという、視聴者(とヒロユキ)への嫌がらせのような演出が飛び出した。

誰が見ても明白な「作中でヒロユキとトライスクワッドの物語=絆の積み重ねを描かなかったことによるしっぺ返し」であり、この状態でヒロユキと3人がお互いを「相棒」と呼び合うことほど空虚な話もないだろう。

 

トライスクワッドの描写不足については「これまでにも過去が描かれないウルトラマンはたくさんいた」といった意見も見られるが、タイガたち3人は従来のウルトラマンと違って主人公の「相棒」を謳っていることからも分かる通り、「ミステリアスな存在」ではなく「ヒロユキ(主人公)と対等な存在」として描かれている。特にタイガについてはその成長が縦軸に据えられているため「実質的な主人公」であり、その内面に関わる描写が少ないのは、従来のウルトラマンのような「仕様」ではなく、一つの物語における「欠陥」と呼ぶべきものではないだろうか。

 

 

一方、そんなトライスクワッドと対峙するヴィランことウルトラマントレギアの描写不足も中々凄まじいものがある。

 

まず前提として、トレギアにはトライスクワッドのようにボイスドラマや舞台による「本編と並行して行われる掘り下げ」がない。かといって本編でその分が描かれているかというとそんなことはなく、彼について本編から得られる情報は「タロウを憎んでいる」「光と闇、のような決めつけが嫌い」「闇落ちさせたタイガを使って光の国に攻め込もうとした」程度。動機もきっかけも悉く描かれておらず、とてもじゃないが「描写が足りない」なんてレベルでは済まされない。

 

そもそも「タロウとトレギアが元親友」という設定も円谷プロダクションの公式ホームページで明かされただけで、本編ではついぞ言及されることがなかった。ようやくそれらしい言及があったのは折り返し地点の13話。それも「タロウにはタイガスパークを一緒に作った友人がいた」ことが示唆されるだけであり、それだけの乏しい根拠でトレギアに「お前なんだろ? 光の国を出て行った、父さんの友達っていうのは」と言い放つタイガの推理力には驚きを隠せない(この台詞に至っては最終回のものである)。

 

「ベリアル以来の闇堕ちウルトラマン」という鳴り物入りの、それも前作『R/B』の劇場版を前振りに使ってまでデビューしたヴィランとは思えないこの杜撰さ。癖が強いキャラクター性もあり、全く人気が出ない可能性もあったものを見事に人気キャラクターにしてみせたトレギア役 内田雄馬氏、霧崎役 七瀬公氏の名演には本当に頭が下がる思いだ。

 

ウルトラマンタイガ DXトレギアアイ

ウルトラマンタイガ DXトレギアアイ

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そんなトレギアについて語る上で外せないのが、彼の親友(ということになっている)ウルトラマンタロウ。しかし彼は1話のアバンでトレギアと激突、事実上の行方不明となり(ティザービジュアルに堂々と映っているのに)その後本編で無事が確認されることはない。

 

その生存が確認されるのはなんと劇場版。死んでいたら死んでいたで炎上ものだが、生きていたら生きていたで「お前これまで何やってたんだよ!」と突っ込まずにはいられない(しかもその「これまで何やってたのか」は一切描写されない。何故)。

 

こんな有様のため、本編からタロウとトレギアの関係について推測するのは非常に困難であり、当時の状況(『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』配信前)で2人の過去について知るには、本編終了後に刊行された「ウルトラマンタイガ超全集(お值段約3,000円)」掲載の小説「トレギア物語」を読むしかなかった。

 

当時「詳細な過去が分からない」ことで批判もあった『ウルトラマンオーブ』のジャグラス ジャグラーでさえ「ガイとの因縁」や「元々同じ光の勢力に身を置いていたが、ある時ジャグラーが離反した」ことが折に触れて言及された他、短いシーンではあるが、共に戦っていた頃の二人の姿も描写されていた。

 

それに比べ、本編中でろくに言及もされず、具体的な過去に至っては全く描写されないトレギアのなんと不親切なことか。まるで課金しないとコンテンツが解放されないスマートフォン向けゲームだが、そういったものは「面白い作品だから課金したくなる」のであって「課金しないと面白くない作品」はその時点で課金に繋がらない=商業コンテンツとして破綻している。製作陣はトレギアとタロウの描写についてどういう塩梅を狙っていたのか、(どの媒体でも語られることはないと思われるが)非常に気になるところだ。

 


本編終了後に公開された『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』もまた、そんな「課金要素」の1つと言えるものだった。

 

同作は、『タイガ』本編の主だった問題点として挙げられる「タロウがシナリオに関わってこないこと」「トレギアの過去への言及がないこと」「トライスクワッドの物語が描かれないこと」などに対し「それらは全て描くべきだったが描けなかった。劇場版で全部やるから許してね」という制作サイドからの謝罪が聞こえるような「お詫びシナリオ」めいた作品。「真の完結編」と言えば聞こえはいいが、それは本編がしっかり完結し、一つの物語作品として完成していて初めて冠せるものだろう。

 

では実際にどんな内容だったかというと、本作は「タロウが登場し」「クワトロスクワッドの結束でタロウを救い」「トレギアの過去に触れつつ」「トライスクワッドの共闘も交えて」「トレギアと真の決着が付き」「ヒロユキとタイガたちの別れまで描かれる」……と、『タイガ』における問題点を片っ端から回収していくかのような作りになっていた。

 

これらについてはカの入った演出もあって見所が多いのだが、一方でそれらの要素に尺を使ってしまった結果、本当の目玉であるはずの「ニュージェネレーションヒーローズの共演・客演」がおざなりになったり、最終回で仲間になったはずのマーキンド星人とマグマ星人が本編冒頭であっさり退場したり、他細かい描写の粗(乱闘シーンのぶつ切りBGMメドレー、本編使い回しのオーラムストリウムなど多数)が目立ったりと、個人的な体感としてはTV本編同様「良さ」に「悪さ」が勝ってしまう仕上がりになっていたように思う。

 

毎年恒例のイベント「ウルトラヒーローズEXPO」でも同様に「タロウ/トレギア要素の
回収」に尺が割かれたことでやや駆け足のシナリオになってしまっており、劇場版共々「本編できっちりやることをやっていれば⋯⋯」と思わずにはいられないものだった。

 

 

『タイガ』は冒頭でも述べた通り、非常に「堅実」な作品であるはずだった。それがこのように多くの問題を抱える作品となったことには違和感もある。原因があるとして真っ先に考えられるのは、本作に対して何らかの「外的な影響」があったことだ。

 

例えば、メインスポンサーである株式会社バンダイから強いられる玩具販売スケジュールが年々過酷なものになっていることはもはや周知の事実である。更に大きな問題として『タイガ』本編クランクイン後に行われたキャスト変更が挙げられるだろう。これにより撮影が困難を極めたというのは有名な話で、その苦労は素人からしても察するに余りあるものがある。

 

これらを原因として「タイガに粗があるのは仕方ない」とする意見は多いし、実際、それは決して間違いではないだろう。ただし『タイガ』がこういった結果になった根本的な原因はそこではないように思う。

その大きな手がかりになる記事として、特撮ファンにはお馴染みのムック『宇宙船』に掲載されたシリーズ構成対談(林壮太郎氏×中野貴雄氏)から一節を引用したい。

――第7、8話は、フォトンアースの登場回で初の前後編でした。


 各話ライターの皆さんは縦軸のプロットは出し難いでしょうし、ここは自分でやるしかないなと。それでネットアイドルとホラーを絡めたプロットを考えたところ、偶然にも、神谷誠監督がアイドルとホラー映画がお好きでカチッとハマりましたね。

 

引用元:ホビージャパン『宇宙船 vol.166』(2019/10/1発売)P.73

「縦軸の話なのでネットアイドルとホラーの話をやろう」という、この文脈がこれでもかと破綻したコメントこそ『タイガ』がこのような作品になった根本的な原因を象徴しているように思う。

つまるところ、『タイガ』において描くべきだった数々の要素は「諸般の事情で描けなくなった」のはなく「最初からろくに描かれる予定がなかった」のではないだろうか。

 

2クールという短い尺の貴重な前後編について、シリーズ構成担当者から上記の発言が出てくること、上記の発言から作られた前後編におけるボス怪獣ことナイトファングが「過去のトラウマを呼び起こす」という縦軸の描写にうってつけの存在だったにも関わらず、ヒロユキは2話、ホマレは4話、カナは6話(で描かれた彼女の過去)、タイガたちは1話冒頭でのトレギアとの戦いを思い出すだけで、特に縦軸に影響する要素が見当たらないエピソードだったこと。これだけで「タイガのシリーズ構成が根本的に非常に雑だった」ことを推察するには十分だろう(ちなみに『オーブ』以降の超全集にはシナリオに関する企画案などが掲載され続けてきたが『タイガ』はなぜかそれがなかった)。

 

この「シリーズ構成が雑だった説」を前提に考えてみると、宇宙人問題の描写が杜撰なのも、ヒロユキやタイガたちの掘り下げが不足していることも、劇場版などの後発作品で急にそれらの描写不足の補完が図られたことも、7、8話や11、12話のような前後編かつターニングポイントであるべきエピソードで縦軸が全く絡まない奇妙な物語を展開してしまったことも、その全てに辻褄が合ってしまうのである。

 

どれだけ素材が良くても、調理を誤れば美味しい料理は作れない。設定こそ『R/B』などの反省が活かされていたが、脚本面において活かされなければ結果は同じ。

前述の『タイガ』製作にまつわる多くのトラブルなどから、本作のシリーズ構成・脚本にも何かしらのトラブルが起こっていた可能性は否めないが、シリーズ構成における本質的な問題がそこでないことは上記のインタビューが物語ってしまっている。もしこの予想が当たっているのならば、作品発表時『タイガ』から感じる新しい息吹にこれまでにないワクワクと期待を感じたファンとして、本当に残念でならない。

 

宇宙船vol.166 (ホビージャパンMOOK 960)

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  • 発売日: 2019/10/01
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しかし、このような『タイガ』の杜撰さが一つのきっかけとなって生まれた(のかもしれない)ものが、次作にして奇跡の大ヒット作品『ウルトラマンZ』である。

 

『タイガ』にも参加し、同作の超全集では現行のウルトラシリーズをして「すり減ってるところもある」と表現した田口清隆監督。氏は『Z』で自らシリーズ構成を買って出たばかりか、盟友である吹原幸太氏を招き、実質的な共作でシリーズ屈指の緻密な脚本・物語構成を実現。結果『Z』はウルトラマンシリーズでもトップクラスの大きな反響を呼ぶ作品となった。

 

この『タイガ』の惨状から『Z』の成功に至る流れは(些か無理のある話ではあるが)さながら『タイガ』という作品が現行の円谷プロダクションにおける何らかの「業」を背負い、もろとも火炙りになったことで『Z』という奇跡にバトンを繋げたようにも見えてしまうのだ(勿論『Z』成功における功労者が田口監督と吹原氏をはじめとするスタッフ・キャストの方々であることは大前提として)。

 

……と、そんな与太話はともかく、『タイガ』という作品がウルトラシリーズの歴史にいくつもの功績を残していることは疑いようのない事実である。

 

例えば、タイガ、タイタス、フーマという(ストーリーや描写はともかく)主人公と完全に対等なウルトラマンの存在と、そんな彼らが高い人気を博したことは「キャラクターコンテンツ」としてのウルトラマンの今後を強く後押ししている。

 

本作が「怪獣特撮」への回帰という方針を強く打ち出したことは、14話で『マックス』以来の復活となった怪獣名テロップと併せて『Z』の人気を作り上げる重要な礎となっていたし、更にその『Z』で辻本・武居両監督が田口監督から重要なポジションを任され、いくつもの傑作を生み出されたのは両監督が『タイガ』で遂げた進化があってこそだろう。

 

このような功績を残しつつも、まだまだ大きなポテンシャルを秘めている『タイガ』は、本編の展開が一段落した今、トライスクワッドの大活躍という形でまさにその本領を発揮している。

 

『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』では遂にトレギアの過去が映像で描かれただけでなく、トライスクワッドの3人がそれぞれに関わりの深いウルトラマンと共演・共闘したり、本編で見られなかった技を使ったりと獅子奮迅の活躍ぶりを披露。更に年末年始に開催された『ウルトラヒーローズEXPO 2021』では、タイガがアーリートレギアと相対する中で本編から大きく成長した姿を見せ、ファンの涙を誘った。

 

個性豊かで魅力的なキャラクター性に加え、様々なウルトラマンたちとの深く、美味しい繋がりを持つトライスクワッド。彼らの魅力が如何なく発揮される様は「本編でこれをやってくれれば」という惜しさこそ感じるが、その惜しさを補って余りあるほどに「見たかった」ものであり、今後のウルトラシリーズを引っ張っていけるパワーを感じさせるに十分なものだった。

 


そんな本編後の活躍まで含めて、改めて「『タイガ』は“奇跡の物語”を紡ぐことができたのか」という問いに向き合ってみると、些か難しいものがある。

 

『タイガ』が単純に本編の物語やその完成度を指すのであれば、個人的には「従来のシリーズが作り上げてきたものに比して霞んでしまう」ものであったように思えてならない。ただし、本編とその製作背景、加えて派生・後発作まで含めた『ウルトラマンタイガ』というコンテンツを総覧するならば話は違ってくる。

 

確かに『タイガ』には多くの欠点がある、回収しきれなかった要素は未だに多い。だが、いくつもの大きなトラブルを乗り越えて完成し、今後のシリーズに繋がる礎を残しつつ、本編終了後遂にその本領を発揮し、今も多くの人から愛されているのが『タイガ』というコンテンツ。その稀有な軌跡は、間違いなく「奇跡の物語」と言えるのではないだろうか。


様々な制約から解き放たれ、今後の『ギャラクシーファイト』シリーズなどでも活躍が期待されるタイガたち。彼らが今後も「奇跡の物語」を紡ぎ続け、何年後・何十年後かに再びヒロユキたちと手を取り合ってくれたなら、なんだかんだでボロボロと涙してしまうんだろうなと思う。色々と不満も書き連ねてきたが、それ以上に時に熱く、時にユーモラスに、いつも賑やかにカッコよく宇宙を駆ける彼らの爽やかな勇姿が大好きなのだ。

 

先日、新たなるウルトラマンがそのシルエットを見せて界隈を賑わせた。ゼットに続いて令和を担うその戦士に思いを馳せつつも、昨日より今日より明日へ、今も未来へ進み続ける「令和初のウルトラマン」タイガたちの新たな物語を、願わくばハルキ/ゼットと共演する劇場版の実現を、ファンとして密かに待ち続けたい。

 

ウルトラマンタイガ DXウルトラマンタイガ完全なりきりセット

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【感謝】祝500アクセス突破!と、今後の予定について

こんにちは、毎週土曜朝9時と日曜朝10時に咽び泣く男、虎賀れんとです。

 

 

早速のご報告ですが、この度本ブログ【れんとのオタ活アーカイブ】がなんと500アクセスを突破しました!

 

読んでくださった方々、いいねやはてなスターなどで応援してくださった方々、感想を寄せてくださった方々、皆さん本当にありがとうございます……!

 

 

運営開始から2ヶ月ちょっとで500PV、これが多いのか少ないのかというブログ界隈の相場は分かりませんが、自分としてはこんなにも多くの方に見て頂けているんだなぁ……ありがたいよぉ……という感動で一杯です。そもそもたったの3記事しかないブログがこんなに見て頂けるだなんて思ってもみなかった……(五体投地)(更新頻度が亀ですみません)

 

個人的な事情もあり、今後もブログの更新はスローペースになってしまうかと思うのですが、できるだけ定期更新にできるよう引き続き頑張っていきますので、是非また気が向いたら見に来てやってください。

 

参考までに、現在執筆中or執筆予定の記事は下記になります!

 

〈執筆中〉

・【感想】ダンガンロンパ3(未来編~希望編)

・【感想】DARKER THAN BLACKと『ツキアカリのミチシルベ』

・【レビュー】仮面ライダー 正義の系譜

 

〈執筆予定〉

・【語り】坂本浩一監督の撮るウルトラが好きでしょうがない話

・【総括】ウルトラマンタイガはなぜ奇跡の物語を紡げなかったのか

・【考察】ウルトラマンの玩具展開はなぜ難しいのか

 

(その他、もし、仮に、万が一ブログで触れて欲しい、書いて欲しいネタなどあればご意見お待ちしています……)

 

 

これからも皆さんに楽しんで頂きつつ、好きなコンテンツへの恩返しができるようなブログを目指して頑張っていきますので、何卒よろしくお願いします!