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感想 - 舞台『ウルトラマン NEW GENERATION THE LIVE ウルトラマンデッカー編 STAGE5 ~彼方へ続く道~ 』 輝けるものたちへ捧ぐ、「新世代TD」感動のグランドフィナーレ

2023年6月。「ウルトラの夏」が徐々に近付く傍らで、「ウルトラマン TDG 25thアニバーサリー」のフィナーレもまた目前に迫ろうとしていた。 

筆者は、初めて見たウルトラシリーズが『ウルトラマンダイナ』第37話で、初めて見た映画が『ウルトラマンティガウルトラマンダイナ & ウルトラマンガイア 超時空の大決戦』、幼少期の好きなウルトラマンはティガブラストとウルトラマンアグルV2 (と、ウルトラマンジャック) ……という、それはそれはもう直球ド真ん中のTDG世代。「ティガ・ダイナ」を改めて全身で浴びることができた2021年 - 2022年は、そんな自分にパンデミックと戦うエネルギーを与えてくれる、とても幸せで楽しい2年間だった。

 

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様々な事情から非常にアンバランスな作品ではあったものの、優しく暖かなメッセージで2021年の世界にたくさんの笑顔を届けてくれたウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA

 

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『トリガー』の世界観を受け継ぎつつ、その堅実な作風で『ダイナ』のメッセージをより等身大に再構成、令和の世に送り出してくれたウルトラマンデッカー』

 

世間的には賛否両論あるものの、『トリガー』の「無理に光であろうとしなくても良い」というメッセージや爆発的な瞬間最大風速には他にない魅力があったし、『デッカー』の理想的な「令和ダイナ」ぶりには、シリーズでも『ダイナ』が特に好きな身としてはたまらないものがあった。  

けれど、この2作品に「物足りなさ」を感じなかったか、というとそれはまた別の話。その一つが『劇場版 ウルトラマントリガー&デッカー』が見れなかったことだ。

 

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確かに、『デッカー』第7・8話の前後編や第19話において、トリガーとデッカーの共演はこれ以上ない大満足のものを見ることができた。特に第8話は何度見ても泣いてしまうくらいには大好きで、実質的な「令和ティガ&ダイナ」だったと言っても差し支えないだろう。 

それに、トリガーとデッカーには実質的な「劇場版」も存在している。「NEW GENERATION TIGA」の集大成たる『エピソードZ』、ディナスという最高のウルトラマンを輩出し、デッカーという作品の完成度を磐石なものにした『旅立ちの彼方へ…』はどちらもハイクオリティなもの。こんな恵まれた状況で『劇場版 ウルトラマントリガー&デッカー』を望むなんて気が狂っている、不遜にも程がある……とは自分でも思う。 

けれど、それでも、ファンなら一度は思わなかっただろうか。「トリガーとデッカーの繋がりを活かし、ティガもダイナも本筋に関わり、その要素までしっかりと絡ませつつ、それでいて新世代の物語になっている」という夢のような作品を、可能なら1時間以上の尺で見てみたい、と。予算や脚本、キャストの都合から無理な話と分かってはいても、ティガとダイナ、トリガーとデッカーが大好きだからこそ、そんな「叶わない夢」を一度は見てしまうのがファンの人情というもの。 

……だからこそ、そんな「叶うはずのない夢」が叶ってしまった感動を一人でも多くの方に伝えたいし、それができる「ウルトラマン THE LIVE」の可能性をもっと広めたい。 

以下は、そんな一念で書いたレポート記事になります。ネタバレについてはご容赦ください!

 

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引用:『NEW GENERATION THE LIVE ウルトラマンデッカー編 STAGE5 〜彼方へと続く道〜』ツアーファイナル公演のオンライン配信が決定! - 円谷ステーション

 

《目次》


『THE LIVE』と『デッカー編』のこれまで


『NEW GENERATION THE LIVE ウルトラマンデッカー編 STAGE5 〜彼方へと続く道〜』は、2023年3月に大阪、先日の2023年6月17日に神奈川でそれぞれ公演された『ウルトラマンデッカー』の舞台作品だ。 

そんな本公演の内容に触れていくには、何よりまず「STAGE5」というナンバリングの意味、そしてそこに至るまでの「ウルトラマンの舞台作品」の歴史に触れなければならないだろう。

 

 

ウルトラシリーズは予てよりステージショー作品に恵まれており、遊園地やショッピングモールで行われるお馴染みのショーイベントは勿論、夏のイベント『ウルトラマンフェスティバル』や年末年始の『お正月だよ! ウルトラマン全員集合』内でのライブステージ、銀座・博品館劇場で行われる本格的な舞台作品「ウルトラヒーローバトル劇場」……等々、年間を通して多彩な作品が上映されてきた。 

そんな舞台作品は年々そのクオリティを上げていき、やがては「ウルトラマンの舞台作品」という一つの纏まったブランドに収斂されることになっていく。それが『ウルトラマン THE LIVE』シリーズだ。

 

 

自分の記憶が正しければ、ウルトラシリーズの舞台作品が『THE LIVE』というブランドになったのは『ウルトラマンタイガ』放送中の2019年秋。 

「トライスクワッドの過去を描く」というキャッチーな舞台作品『ウルトラヒーローズEXPO THE LIVE ウルトラマンタイガ』と、銀座・博品館劇場の「ウルトラ6兄弟 THE LIVE in 博品館劇場 - ウルトラマンタロウ編』が同時期に上演されたことに始まり、コロナ禍を挟んだ2021年には、夏と年末年始のイベントで上演される舞台も『THE LIVE』の名前を冠するようになっていた。 

その理由については様々な考察ができるし、「ウルトラライブステージ」や「バトル劇場」という名前が無くなってしまうことには惜しさも感じたけれど、クオリティに反してピックアップされる機会の少ない「ウルトラマンの舞台作品」というコンテンツが新たなブランドを与えられるほど期待されている / 重用されていることがそれ以上に嬉しかったし、この変化で舞台文化がよりブラッシュアップされていくことが楽しみでならなかった。 

そして「STAGE~」というナンバリング形式が始まったのも、同じ2021年のこと。

 

 

「ウルサマ」の愛称でお馴染み、『ウルトラヒーローズEXPO サマーフェスティバル (旧:ウルトラマンフェスティバル) 』。その前期公演が『STAGE1』、後期公演が『STAGE2 』とされ、その後、年末年始のイベント『ウルトラヒーローズEXPO ニューイヤーフェスティバル (旧:お正月だよ! ウルトラマン全員集合) 』のステージが『STAGE3』。そして、これまで『タイガ』『ゼット』と公演されてきた、現行ヒーローを主役にした単独舞台作品が『STAGE4』。この4作品が『ウルトラマン NEW GENERATION THE LIVE ウルトラマントリガー編』のシリーズとなった。 

この4作に繋がりはなく、ナンバリングもあくまで「ブランディングの一環」の域に留まっていたけれど、その方式は翌年の『デッカー』にも受け継がれることとなる。

 

 

『ウルサマ2022』前期のSTAGE1『夏の闇夜を照らす者』は、夏らしい怪談要素を盛り込みつつ、その上で『ダイナ』に登場したヌアザ星人イシリスがボスとして復活したり、細貝圭氏が映像+声の出演で復活したイグニス=トリガーダークが地球に帰還、デッカーと共闘するというスペシャル感満載の一篇。 

続く後期=STAGE2『Decker into Space』は、『ダイナ』に登場したロボットをオマージュしたキャラクター「マウンテンガリバーⅡ-Ⅴ」が登場。レイブラッド星人との戦いの中で「正義の心」を自らに問うビターな物語を展開した。

 

 

STAGE3『希望の光に導かれ』は、2022年11月に埼玉、12月に佐賀でそれぞれ上演された単独舞台作品。アスミ カナタ役の松本大輝氏に加え、なんとマナカ ケンゴ役の寺坂頼我氏も出演し、新たな脅威「スフィアトリガー」や、復活したウルトラマンオーブダーク (深水元基氏本人が声を担当!)  との戦いが描かれた。

 

 

2022年末から2023年始にかけて行われた『ウルトラヒーローズEXPO ニューイヤーフェスティバル 2023』のステージは、STAGE4『 ~遥か彼方へ~ 』。『ダイナ』オマージュの宇宙人「リセスティア星人 ハルカ」を巡る、カナタ、リュウモン、イチカらGUTS-SELECTと復活したヤプールの激戦が描かれた本作は、これまで以上に「本編とのリンク」が強いのが特徴で、その完成度が大きな反響を呼んでいたのは記憶に新しいところ。

 

https://m-78.jp/event/post-121764
(各作品のあらすじはこちらから!)

 

……というのが、これまでの『ウルトラマン NEW GENERATION THE LIVE ウルトラマンデッカー編』の経緯。今回の公演はこれらを踏まえた「STAGE5」とのことだけれど、前年同様STAGE1~4にこれといった関連が見られなかった以上、今回も「5」というナンバリングにさしたる意味はないのだろうな――と、そう思っていた。 

しかし、STAGE1~4にここまで詳細な解説を入れているのは、つまり「そういうこと」だったのである。

 

 

『旅立ちの彼方へ…』の向こう側 ~ STAGE5 前半 - 1

 

という訳で、ここからが本題 (激遅) 。 

本作の舞台は、2023年2月に上映された『ウルトラマンデッカー 最終章 旅立ちの彼方へ…』のその後。ナースデッセイの艦長として、ディナスたちと宇宙へ旅立ったカナタが、ウルトラマンダイナ (声はつるの剛士氏御本人が担当!) に導かれ、HANE2と共にとある惑星=惑星グリンへ降り立つくだりから幕を開ける。 

ここでまず第一の衝撃。惑星グリンを襲う敵を相手取って戦っていたのは、ウルトラマンダイナ……と、なんと電脳魔神デスフェイサー! ウルトラマンダイナとデスフェイサーのタッグという、二度見不可避の信じられない光景が繰り広げられていたのである。 

しかし、そのデスフェイサーはグリン星人の科学者・リーフが産み出した防衛ロボット。平和のためのロボットに「デスフェイサー」はそれ言語センスが致命的にアレだぞ! というツッコミは野暮として、何よりもまず久しぶりにデスフェイサーのスーツが見れたのが嬉しかったし、ダイナとデスフェイサー、デスフェイサーとテラフェイザーというとんでもないタッグバトルが見られたのが嬉しかった。開幕から飛ばしすぎじゃない!?

 

 

そんな本作の見所として挙げられるものに、「アスカとカナタの交流がたっぷり描かれる」というものがある。

 

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『デッカー』本編や『旅立ちの彼方へ…』に客演したウルトラマンダイナが「一言も話さなかった」のは記憶に新しいけれど、それ以外の媒体=舞台デッカー編のSTAGE2やSTAGE4においても、ダイナ=アスカの台詞は決して多くなかった。それが原作への限りないリスペクトに由来するのはもはや語るまでもないけれど、それはそれとして「アスカとカナタが仲良く話しているところが見たい」というのもやっぱり本音。このSTAGE5は、そんなファンのワガママをしっかりバッチリ汲み取り、これでもかと贅沢に振る舞ってくれたのである。

 

ネオフロンティア

ネオフロンティア

 

惑星グリンは、かつて豊かな緑に覆われていたものの、文明の発達に伴って環境が悪化、大気中に有毒物質が蔓延してしまった……という、さながら地球の写し鏡のような惑星。そんな惑星グリンが環境汚染で滅びの危機を迎えた時、宇宙から巨大な植物が飛来した。 

グリン星人たちが「キングフラワー」と呼ぶそれは、惑星グリンの有害物質を取り込み環境を復元するという奇跡を起こした――が、その為にキングフラワーには膨大なエネルギーが溜め込まれてしまい、それを狙って他の星から次々と敵対宇宙人がやってくるようになったのだという。そんな侵略者たちからキングフラワー、そして惑星グリンを守る為に戦う為に降り立ったのがアスカ・シン=ウルトラマンダイナであった。 

ダイナは惑星グリンに降り立ってから長い間戦い続けているらしく、すっかりグリン星人たちから友人として親しまれていた。偉大な先輩=ダイナの意外な姿に驚くカナタに、アスカは「仲間たちとの繋がりが、ウルトラマンに “守るための力” を与えてくれる」と語る。それを受けたカナタはグリン星人リーフと親睦を深め、「俺に任せろ」のポーズ=サムズアップを伝授するのだった。

 

 

思えば、カナタがこれまで出会ってきたダイナは「戦士」ウルトラマンダイナのみ。戦いから離れた「人間」アスカ・シンと触れ合ったことはなかったし、その鬱憤 (?) を晴らすかのように、今回のダイナ=アスカは本当によく喋ってくれる。 

グリン星人の子どもたちと遊ぶ姿は『ウルトラマンサーガ』でチームUや子どもたちと触れ合うアスカを思い出すものだったし、タイプチェンジの力を取り戻そうと頭で考えるカナタ  (カナタは最終章で「フラッシュタイプ」の力しか取り戻していない)  を「まあ座れよ」と隣に座らせる姿は体育会系の先輩……もっと言うなら『THE ORISIN SAGA』第4話で見せたような「理想的な “その後のアスカ” 」そのもの。コメディリリーフではなく「良き兄貴分」としてカナタを導くアスカの姿は、それだけでもうチケット代にお釣りが来るものだったし、アスカがグリン星人の子どもに「カナタのことをよく自慢気に話している」という事実を暴露されて慌てるシーンはもう溢れんばかりの多幸感で泣きそうになってしまった。まだ序盤も序盤なのに……!

 

 

『STAGE5』の意味 / ウルトラ舞台作品への限りない「祝福」~ STAGE5 前半 - 2

 

しかし、いつまでも平和に浸っている訳にもいかない。カナタは、地球で「植物と人間のコミュニケーション」にまつわる論文を発表しようとしていたケンゴに「助けてください!!」と頼み込み  (ここのケンゴの苦労人感が最高すぎてスマイルスマイル……!!)  惑星グリンへ召集。HANE2とキングフラワーの解析を進めようとするが、そこに現れたのはなんとタルタロス、ディアポロ、ティターンらアブソリューティアン。アスカがカナタに助けを求めていたのは、彼らから惑星グリンを守りきる為だったのだ。 

アブソリューティアンの狙いは、膨大なエネルギーを溜め込んだキングフラワー。ダイナ、テラフェイザー、デスフェイサー、トリガーがアブソリューティアンたちに応戦する中、タイプチェンジ能力を失っているデッカーはアブソリュートディアボロのパワーに苦戦。「ストロングタイプの力があれば……」と願うその脳裏に、ある男の声が響く。

 

「そんなもんか? 俺が会った時のお前は、もっとゴクジョーだったぜ?」

 

アスカが語ったように、ウルトラマンは「心の繋がり」を糧に強くなっていく存在。そのことを体現していたのが『旅立ちの彼方へ…』における「ディナスのカードにGUTS-SELECTの想いが集まり、フラッシュタイプのカードに進化した」という一幕。 

しかし、カナタの戦いの歴史=彼が絆を繋いできた舞台は、決してTVシリーズや最終章だけではない。デッカーというウルトラマンの根幹 (フラッシュタイプ) を成すのが全ての中心=TVシリーズと最終章の仲間たちであるならば、その可能性 (タイプチェンジ) を広げるのは、TVから派生した作品=「舞台」で得た仲間たち。

 

NEXT NEW HERO

NEXT NEW HERO

 

STAGE1『夏の闇夜を照らす者』でカナタと共に戦ったイグニス=トリガーダーク。戦友であると同時に、カナタの憧れ=トリガーの盟友でもある戦士の激励が、彼と手を取り合った姿=ストロングタイプの力を呼び起こす。

 

STAGE2『Decker into Space』で出会ったロボット=マウンテンガリバーⅡ-Ⅴに向き合い、心をぶつけ合った姿はミラクルタイプ。その姿を――まるで恩返しのように――今度はⅡ-Ⅴの言葉が目覚めさせる。

 

そして、最後に現れたのはSTAGE4『遥か彼方へ』で友情を育んだリセスティア星人=ハルカ。ヤプールとの決戦は、まさに「守りたいという想いがカナタに力を与えた」戦いの最たるもの。その激闘の記憶、そしてハルカとの絆が、最強の力=ダイナミックタイプを蘇らせる。

 

ローブ姿のイグニス (演じるのはアクターだけれど、声はおそらくイグニス役・細貝氏の新録……!) 、Ⅱ-Ⅴ、ハルカ。彼らの幻が現れ、その度にタイプチェンジの力が復活していくこの一連は、謂うなれば「坂本浩一監督の得意とする連続タイプチェンジ演出に、最大限のエモーショナル文脈が加わった」ようなもの。蘇ったストロングタイプとトリガーダーク、ミラクルタイプとⅡ-Ⅴ、ダイナミックタイプとハルカの共闘は、さながら『仮面ライダーオーズ / OOO』最終回のようでもあり、会場ではそのあまりにも熱い展開に惜しみない歓声が上がっていた。

 

ヒカリカナタ

ヒカリカナタ


思えば、デッカーの由来であるウルトラマンダイナは「タイプチェンジの力を持ちながらも、明確な最強形態が存在しない」という現状唯一のウルトラマンであり、フラッシュ、ミラクル、ストロングの3タイプがそれぞれに「最強」と呼べるような見せ場を持っているのが印象的なウルトラヒーローだった。 

それを継いでか、近作の中でも各タイプの扱いが特に丁寧だったのが『ウルトラマンデッカー』という作品。だからこそ、本編終了後というこのタイミングでストロング、ミラクル、ダイナミックタイプが文字通りの「主役」として活躍してくれるのはまさに『デッカー』の面目躍如であったし、STAGE1.2.4という「ストロング、ミラクル、ダイナミックがそれぞれ販促上プッシュされていた時期」と重ねた演出で復活するのは、さながらそれぞれの姿が「全盛期」で復活したかのようで、彼らそれぞれに主役として最後の大舞台を用意してくれた製作陣の愛情には頭が上がらない思いだった。

 

 

一方、この一連を「各タイプの復活」と同じかそれ以上に盛り上げていたのが、そのきっかけ=これまでの『NEW GENERATION THE LIVE ウルトラマンデッカー編』で築いてきた繋がり。  

どうあっても「本筋」ではない彼らの記憶がカナタにとって大切なものであり続けてくれたことの嬉しさ、「ここに来てナンバリングが回収される」というカタルシス……。それだけでもたまらなかったのに、更に衝撃的だったのは「デッカーがタイプチェンジの力を取り戻す」という、今後のシリーズに間違いなく関わってくるであろう展開がこの舞台で描かれたこと。それはつまり、このSTAGE5――ひいては、『NEW GENERATION THE LIVE ウルトラマンデッカー編』そのものが実質的な「正史」になったということ。そのことが涙腺粉砕の決め手になったのか、自分はこのシチュエーションで『デッカー』本編以上に号泣してしまっていた。

 

そもそもの話、『舞台作品』とは得てして「正史」には含まれないもの。いくら自分にとって大好きなものでも、それがあくまで「どこかの可能性世界」でしかない……という事実は (事情も分かっているし納得もしているけれど) いつもどこかで心の中に影を落としていた。 

ところが、そんな「舞台作品はパラレル世界」という暗黙の了解に胃を唱えたのが『ウルトラヒーローズEXPO THE LIVE ウルトラマンタイガ』だ。

 

 

『ウルトラヒーローバトル劇場』の系譜に位置する「現行ヒーローを主役にした単独舞台作品」である本作は、なんと「ウルトラマンタイガたちトライスクワッドの結成秘話」という正真正銘・公式の前日譚であり  (『タイガ』本編中の出来事として描かれる後半は怪しいが、前半の方は後に『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』で内容が拾われる一幕があるため、少なくともこちらは正史となっている) 、次作となる『ウルトラヒーローズEXPO THE LIVE ウルトラマンゼット』も「ゼットとジードが初めて会う物語」という公式前日譚になっていた。 

「本編のスピンオフ」というある種のお墨付きを得たこの2作が好評を博したのか、約1年後の『NEW GENERATION THE LIVE ウルトラマンデッカー編』は、上記2作のように (実質的な) 正史と明言されることこそないものの 

・カナタがウルトラマントリガーと対面しない (STAGE1、2)  

ウルトラマンダイナは「何処からかカナタに語りかける声」のみでの登場 (STAGE2)  

ウルトラマンゼット、エースが「時空を越えて」現れたと明言される (STAGE1)  

・別の時空が舞台になる (STAGE2、3)

・『デッカー』第7,8話でトリガーがスフィアのカードを使ったことがきっかけで事件が起こる (STAGE3) 

・『デッカー』第19話で滅びたヤプールがスフィアに侵食されて登場する (STAGE4)  

・「スフィアバリアを一時的に突破する」くだりがストーリーに組み込まれている(STAGE4)  

……など、ショーとしての特別感やケレン味を担保しつつも「本編にあってもおかしくない」よう随所に細かい配慮がされるという非常に凝った構成が取られており、正史かどうかは私たちファンの解釈次第、という塩梅。自分のような舞台作品ファンにはそれだけでも十分すぎる采配だったし、むしろ「これが限界点」だと思っていた。 

……という、この流れを経ての『STAGE5』。これまでは平行世界、良くて「外伝」止まりだった舞台作品が、長年の積み重ねを経て「正史」を扱う公演を行えるようになり、遂にこの『NEW GENERATION THE LIVE ウルトラマンデッカー編』においては、その全て=夏 (STAGE1.2) と年末年始 (STAGE4) のイベント、加えて単独舞台作品 (STAGE3.5) が全て正史と相成ったのである。

 

正史かどうかに固執するのは面倒なオタクだけだと思われるかもしれないけれど、厳密には自分も「『NEW GENERATION THE LIVE ウルトラマンデッカー編』が正史になった」こと自体がそこまで嬉しい訳じゃない。何より自分の胸を打ったのは「円谷プロダクションがこの脚本にGOサインを出した」ことそのもの。それはつまり、同社が「舞台も含めて、全てあっての『ウルトラマンデッカー』」と認識していることの、何よりの証明であったからだ。  

これまで決して「王道」ではなかった舞台作品がこうして認められたこと、それほどまでにウルトラの舞台作品が大きな作品となり、製作陣からも大切にされていること。それら全てがファンとして我が事のように嬉しかったし、カナタがトリガーダーク、Ⅱ-V、ハルカに背中を支えられながら叫んだ「皆が俺を支えてくれているから、俺は前だけを向いて戦える!」という言葉が、まさに「舞台作品も『デッカー』という作品の大切な一部」であることを体現しているように思えたのは、決して自分だけではないはずだ。  

(整合性などの問題から、今回の出来事が必ずしも今後の作品に反映されるとは限らないけれど、それでも「この脚本に一度はOKが出るほど、舞台作品が大切にされている」という事実は変わらない。だから、仮にこの一連が「正史」にならなかったとしても、そこには本当に大きな「意義」があったように思う)

 

 

「デカ・スゴ」なサプライズ展開 ~ STAGE5 後半 - 1

 

『NEW GENERATION THE LIVE ウルトラマンデッカー編』をTV版の延長にある『旅立ちの彼方へ…』と接続させることで、ある意味『ウルトラマンデッカー』そのものを総括してみせたとも言えるSTAGE5前半。 

文量から明らかだとは思うけど、この時点で筆者は大泣き拍手の大絶賛。ここまでの盛り上がりの上で、一体何をやってくれるのか……と期待半分不安半分だったけれど、思えばこの時点では「最大の謎」がそっくりそのまま残されていた。

 

デッカーたちの反撃を受け、撤退するアブソリューティアン。しかし、それは彼らの反撃に恐れをなしたのではなく「キングフラワーの正体」を察したからだという。 

タルタロスの残した不吉な言葉を裏付けるかのように、突如不気味な胎動を放つキングフラワー。その触手がグリン星人リーフを捕らえると、彼はこれまでとは全く異なる人格で「もうエネルギーの貯蔵は十分」と言い放つ。 

戸惑うデッカーたちに対して、リーフ、もといキングフラワーは遂に自分達の正体を明かす。――植物生命体、モネラ星人と。モネラ星人!?!?!?

 

 

『映画 ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ 光の星の戦士たち』の黒幕=宇宙植物獣人モネラ星人。 

確かに、『トリガー』『デッカー』には原典である『ティガ』『ダイナ』のボス格キャラクターが形を変えてほぼ全て登場していたが、その唯一の例外が彼らモネラ星人だった。であれば、「新世代TDのラストステージ」であるSTAGE5の黒幕が彼らであることは十分に考えられたし、デスフェイサーやキングフラワーなど、ヒントは十分すぎるくらい散りばめられていた。 

……なのに、自分は恥ずかしながら「モネラ星人」の一言が出るまでこのことに全く思い至らなかった。自分が鈍いというのは大前提だけれど、モネラ星人がそもそもCG表現された宇宙人であったこと、『ティガ&ダイナ』からのオマージュは本編で既に行われていたこと、そして何より、キングフラワーが植物は植物でも「花」の方をメインにしていたことが大きいだろう。 

これが「キングプラント」などであれば話は違ったのだろうけれど、敢えて「巨大な花」にすることでギジェラやジャギラの方に寄せ、モネラ星人のイメージから遠ざけるだけでなく「キング」という最も肝心なキーワードから注意を逸らしてみせた。 

そう、モネラ星人が姿を変えた巨大な花の名前は「キング」フラワー。リーフを乗っ取り、溜め込んだエネルギーを使って魔人へと変貌したモネラ星人は、自らを「キングモネラ」と名乗る。や、やられた………………ッ!!!!

 

 

花粉によって他の生命体を操る力を備えたキングモネラは、その力で洗脳した惑星グリンの住民、そしてリーフの力で操るデスフェイサーによってウルトラマンたちを圧倒。変身が解除されたカナタを何処かへと連れ去ってしまう。

 

モネラ星人は “相手にとって最も絶望的なやり口” を好む宇宙人だ。デッカーを操り、彼自身に地球を滅ぼさせるつもりなのかもしれない……!」

 

かつてモネラ星人と戦った経験からそう予想するアスカ、キングモネラの花粉を防ぐ方法を模索するケンゴ、そしてテラフェイザーを駆るHANE2。3人がグリン星人たちやデスフェイサーに追い込まれる一方、地球では、カナタがキングモネラの洗脳に必死に抗っていた。

 

「変身できるからウルトラマンなんじゃない、未来を諦めないからウルトラマンなんだ!」

 

変身させられる前にウルトラDフラッシャーを放棄し、かつて (STAGE4) アスカから託された言葉で啖呵を切ってみせるカナタ。しかし、洗脳には抗えても力では及ぶべくもなく、カナタは為す術もなく生体檻に閉じ込められてしまう。 

「デッカーを操り地球を滅ぼす」プランが水泡に帰したため、自ら地球を壊滅させようとするキングモネラ、しかし、その前に「彼女」が立ちはだかる。

 

『ウルトラディメンション! ウルトラマンディナス!』

 

 

駆け付けたのは、なんと (カナタに光を繋いで自らは変身能力を失ったはずの) ウルトラマンディナス! カナタは、Dフラッシャーを「捨てた」のではなくディナスの下に転送しており、彼女は一時的に変身能力を取り戻したのである。あ、熱すぎる……! 

このウルトラマンディナスの登場は予め告知されていた (登場キャラクターの一覧にいる、というようなものでなく、なんとウルトラマンディナスも登場! というように大々的な宣伝が打たれていた。現状最新のウルトラマンということも踏まえても、その人気の高さが窺える) ものだけれど、まさかその復活にここまで完璧なロジックがあるとは思ってもみなかったし、その美味しすぎる登場には会場が大きく盛り上がっていた――のだけれど、それすらも超えてしまう、ある意味本公演における「最大のサプライズ」がこのすぐ後に控えていた。

 

Dazzling FLASH

Dazzling FLASH

 

もっと高く、もっと眩く ~ STAGE5 後半 - 2

 

「死者の亡霊を操る」という更なる力を発動するキングモネラによって、徐々に追い込まれていくディナス。この苦境を打開するにはカナタの復活が必要不可欠であり、その為には私たち観客の力が必要なのだという。「がんばれ」の応援を言えない代わりに、手を出して光 / エネルギーを届ける「ウルトラチャージ」の出番だ。  

それ自体は近年のウルトラマンのイベントではお馴染みの流れ。安心と信頼のウルトラチャージだ。満席の観客からカナタに光が送られようとしたその時、ディナスがある一言を口にする。

 

「最後まで諦めなければ、人は皆光になれるんだよ!」

 

彼女の台詞で、ふと何かに気付きそうになった――その時だった。

 

 

観客のウルトラチャージは、この時だけは普段と違う力を発揮した。光が直接カナタに贈られるのではなく、光が「カナタを救う為の力」となって顕現する。 

そう、この最終局面で現れた最後の救世主とは、事前に一切登場が告知されていなかった戦士=ウルトラマンティガ。  

人々の光が、モネラ星人に囚われた「D」の光を救う為にティガを呼ぶ。それはまさしく『映画 ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ 光の星の戦士たち』の再演であると同時に、当時生まれていない子どもたちも、自分のような当時の子どもたちも、そこにいた誰もが時を越えて「光」になった瞬間だった。

 

降臨したティガは (『ティガ&ダイナ』と全く同じ所作で) モネラ星人の生体檻を破壊し、カナタに光エネルギーを与える。 

並び立つカナタ、ディナス、そしてティガ。更に、そこに遅れる形で惑星グリンの窮地を切り抜けたトリガー、ダイナ、テラフェイザー (HANE2) が到着。 

原点と新世代、ティガから始まった全ての光がここに集い、最終決戦の火蓋が切って落とされる――!

 

 

キングモネラが蘇らせた亡霊闘士は、いずれも『NEW GENERATION THE LIVE ウルトラマンデッカー編』のボスを務めた強敵たち=ヌアザ星人イシリス、レイバトス (STAGE2のボスは実体のないレイブラッド星人だったため、彼だけは代役) ウルトラマンオーブダーク、巨大ヤプール。テラフェイザーがデスフェイサーを撃破 (これも垂涎ものの戦いだった……!) すると、続いて繰り広げられる戦いは「ティガ&トリガー VS レイバトス&巨大ヤプール」。BGMは『Higher Fighter』

 

 

ティガとトリガーは度々共に戦っているけれど、実は『Higher Fighter』をBGMにしての共闘は史上初。同曲が大好きでたまらない自分にとっては、トリガーという作品が主役になる (当面は) 最後の舞台で、満を持してこのシチュエーションを見れたことが本当に嬉しかった……!  

しかし、なんとここに至っても「更なるサプライズ」を用意してしまうのがこのステージ。ティガとトリガーが並んで高台から跳躍した瞬間、突如ステージがブラックアウト。明かりが点くと、そこには――。

 

 

遂に並び立ったグリッタートリガーエタニティ、そしてグリッターティガ……!  

これまではWマルチ・Wパワー・Wスカイを披露するに留まっていたトリガーとティガが、満を持して「Wグリッター」を披露するだけでも頭が沸騰しそうなのに、その場が「新世代TDのラストステージ」であること、BGMが『Higher Fighter』であること、そして「跳躍した2人 (もっと高く!) が、空中でタイプチェンジして着地」したように見える粋な演出……と、ただでさえ熱いシチュエーションには更なる「魅せ」や文脈が満載。結果、頭と心が限界に達してしまったからか、その後このWグリッターがどういう戦いを披露したのかがさっぱり記憶にない。い、一生の不覚……!
(帰宅後に購入したブロマイドを見ると「グリッターWスラップショット」とかいうトンデモ技を披露していたらしい。最高!!!!!!!!)

 

ところで、自分がこの「Wグリッター」に感極まってしまった理由がもう一つある。それは、その並びが「グリッタートリガーエタニティが ”グリッター” として認められた」図のように思えたことだ。

 

 

グリッタートリガーエタニティが初登場したのは、『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』第11話『三千万年の奇跡』でのこと。グリッターという名こそ冠しているものの、その実態は「エタニティコアの力を得た、トリガーの強化形態」の域を出るものではなく、その美麗なデザインやケンゴ自身にも制御できないほどのパワー、第15話『オペレーションドラゴン』で見せたケレン味たっぷりの必殺技乱舞……といった魅力を披露しても、依然として『ティガ』ファンからは否定的な意見が絶えなかった。 

が、それも仕方のない話で、原点の「グリッター」とは単なる強化形態ではなく、時にレナや世界中の子どもたちの想い、時にかつて滅び去った巨人たちの魂、時に "その世界に存在しないはずのヒーローたち" の勝利を願う人々の希望……と、常にその戦いを見守る存在から贈られた「光」の結晶であった。そんな奇跡的な存在を受け継ぐものとして見ると、確かにグリッタートリガーエタニティへの進化は(ユザレとユナの想いを受けての進化と見て取れなくはないものの、それを踏まえても)些か「文脈」が弱すぎる=魅力が欠けていると言わざるを得ないだろう。 

しかし、どうやらそのことには製作陣も半ば自覚的だったらしく、『トリガー』における最強の姿=物語の到達点は、グリッターではなく「光と闇を併せ持つ」ウルトラマン=トリガートゥルースであった。自分はこのトリガートゥルースがもう好きでたまらないのだけれど、それはそれとして「視聴者から散々叩かれた挙句、最強の姿としてすら扱われない」グリッタートリガーエタニティを思うといたたまれない気持ちになってしまったし、この姿にも何らかの「面目躍如」があればな……と、半分諦めながらも祈らずにはいられなかった。  

ところが、その機会は思ったより早く訪れた。実質的な劇場版ことウルトラマントリガー エピソードZ』である。

 

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詳細はこちらの記事に譲るけれど、『エピソードZ』終盤で登場するグリッタートリガーエタニティは「エタニティコアの力を得た、トリガーの強化形態」という出自こそ変わらなかったものの、その意味合いは「GUTS-SELECTの仲間たちがくれた絆の結晶」へと大きく変化。この時初めて、グリッタートリガーエタニティは正真正銘「グリッターを継ぐもの」へと到達したのである。  

そして、そんな『エピソードZ』から更に1年。遂にグリッタートリガーエタニティは「グリッターティガ」と並び立つことができた。製作陣にそんな意図はないだろうとは思うのだけれど、紆余曲折の果てにようやくグリッターティガと並び立ち、Wグリッターとして惜しみない応援を贈られるグリッタートリガーエタニティの姿は、まるで彼が「グリッターを継ぐもの」として認められた――転じて、『トリガー』という当時非難轟々だった作品が、時を経て遂に「NEW GENERATION TIGA」として認められた証のようでもあった。  

自分がこのWグリッターに号泣してしまったのはそのことも大きいし、デッカーだけでなくトリガーにもこんな「グランドフィナーレ」を設えてくれたことが心から嬉しかった。ありがとう、良かったね、ウルトラマントリガー……!!

 

 

繋がれていく光と想い  ~ STAGE5 後半 - 3

 

残る2体の強敵=ヌアザ星人イシリスとウルトラマンオーブダークに挑むのは、「受け継がれるDの光」=ウルトラマンダイナとディナスのタッグ! 

神聖なティガ&トリガーとはまた異なる「家族」のような関係性の2人が遂に肩を並べて戦う光景には、熱さだけでなく「暖かさ」が満ちており、そんな2人の戦いを彩る歌が『ウルトラマンダイナ』なことには思わず感極まってしまうものがあった。

 

(実際に流れたのはボイジャー版ではなく、当時版の『ウルトラマンダイナ』)

 

最近のダイナといえば『君だけを守りたい ~アスカの歌~ 』をバックに戦うことが多く、『ウルトラマンダイナ』を背に戦うダイナは本当に久しぶり。まるで「ディナスに光を繋いでも、アスカはあの頃のアスカのまま」だというメッセージのようで、25年間彼を応援してきたファンとしてはたまらないものがあった……し、こっちもこっちでテンションが上がりすぎて「この2人がどういう共闘を見せてくれたのか」が記憶から吹き飛んでしまった。  

しかし、こちらについては一つ弁解をさせてほしい。

 

 

ウルトラマンブレーザー、突然の参戦!! 

彼もディナス同様その登場が告知されていたけれど、この局面でそんなことを覚えていられるはずもなく、まんまと観客一同「ウォォォアァァ!?」とそれこそブレーザーみたいな呻き声を上げてしまっていた。 

そんな彼の戦いぶりは如何なるものだったのか、その戦いを見届けたダイナから一言。

 

「味方なのは間違いない」

 

……味方なのは間違いない、とこんなにギリギリのラインで言われる主人公ヒーロー、何!?!?!?!?

 

 

蘇らせた亡霊もデスフェイサーも粉砕され、残すはキングモネラただ一人。黒幕と決着を付けんとするカナタには、ケンゴから逆転の切札=ルルイエキーが託されていた。ルルイエキー!?!?!?

 

 

一見トンチキな代物のようで、その実綿密に伏線を張った上で登場するルルイエキー。詳細は割愛するけれど、その力は「キングモネラの洗脳花粉を中和する」こと、そして、キーに溜め込まれたエネルギーを直接キングモネラに流し込むことで、モネラ星人からその依り代=グリン星人リーフを解放できること。 

ティガ、ダイナ、トリガー、テラフェイザー、ディナス、そしてルルイエ。新世代TDの「総決算」を双肩に決戦を挑むデッカーだが、リーフを解放するには「キングモネラに直接キーを打ち込む」必要がある。苛烈な攻撃に隙を見出せず苦戦する中、一瞬、その動きが鈍ったかと思うと――苦しげに呻き、よろめき始めるキングモネラその左腕が作っていた「サムズアップ」のポーズは、カナタがリーフに教えた「俺に任せろ」の合図であり、リーフがモネラ星人の支配に抗って作り出した「最初で最後のチャンス」だった。

 

 

光のバトンを繋ぎ続け、遂に迎えたカナタ=デッカーのラストステージ。その逆転のきっかけを作ったのは、ダイナでもディナスでもデッカー自身でもなく、本作で登場した科学者で、家族を愛するごく普通の青年=リーフ。しかし、だからこそこのクライマックスはこの上なく『ウルトラマンデッカー』の締め括りに相応しいものだったように思う。

 

この現代において、夢見る未来を持つことは簡単ではない。それを持てない人も大勢いるかもしれない。けれど、その有無が人の価値を決めることはない。夢を持っていない / 持てないなら、目の前にある「今」に全力を尽くせばいい。
「大切な相手との約束を守る」ことでもいい、「隣にいる、苦しんでいる誰かを助ける」ことでもいい。覚悟と責任を胸に、今すべきことを全力で走り抜けることができたなら、それは立派な「ヒーロー」であり、その努力と献身は皆の「夢見る未来」を作り、支えていく礎になる。カナタがアガムスという「隣人」の心を救ったことが、地球の解放という未来に繋がったように。

引用:総括感想『ウルトラマンデッカー』 令和の世を映す “新たなる光” は「NEW GENERATION DYNA」となり得たのか - れんとのオタ活アーカイブ

大きなことでも小さなことでも、「今すべきこと」を全力でやり遂げる。その積み重ねと継承こそが、遥かな未来を変えていく力になる――。そのことを、ごく普通の青年=アスミ カナタを通して描いたのが『ウルトラマンデッカー』という作品だった。

リーフは優れた科学者であったが、デスフェイサーを失い、モネラ星人に乗っ取られた今となってはただの「普通の人間」。だからこそモネラ星人は彼の反撃を想定さえしていなかったし、彼に力を与える「家族への愛」というものの輝きを理解することさえできなかった。 

普通の人間であるリーフが「今できること」に命を懸け、それこそがウルトラマンに勝利を導く……。このクライマックスは、リーフの決意とサムズアップが「これまでは受け継ぐばかりだったカナタから “継承された” もの」だった点も含め、これ以上ない『ウルトラマンデッカー』のグランドフィナーレだったのではないだろうか。

 

ソラノカナタへ

ソラノカナタへ

 

 

おわりに ~ TDG 25th アニバーサリーのフィナーレへ

 

かくしてカナタはリーフの救出に成功。モネラ星人が亡霊と融合して誕生した巨大なファイブキングを撃破したことで、デッカーたちの最後の戦いは大団円で幕を下ろすこととなった。

勿論、その後に待っていたのは恒例のフィナーレ (閉幕後に、本編未登場のウルトラマンや敵も加わって最後の大乱闘を繰り広げる、直近のウルトライベント恒例行事) 。STAGE5ではカットされた「ティガ&ダイナ」に、特別ゲストとして追加登場したガイアSV・アグルSVも加わって「TDGA」が集結するなど、改めて「ああ、これは “TDG 25th” のフィナーレでもあるんだな」と思わされてしまった。

 

 

例年通りなら、今年も『ウルサマ2023』のガイア25周年イベントや『TDG THE LIVE ウルトラマンガイア編』などが行われるのだろうけれど、TVシリーズとの連動企画に比べればどうしても規模で劣ってしまうだろうし、この『デッカー編 STAGE5』のかつてない本気ぶりも、本作が “TDG 25th” の一区切りだと考えると合点がいくというもの。 

確かに、ティガ、ダイナと来たのだからガイアも……という気持ちはあるけれど、もはやファン界隈では周知の事実となっている通り、企画当初の『ウルトラマンデッカー』はダイナオマージュの作品ではなく、あくまで「トリガーの続編」だったのだという。 

『ティガ』だけでなく『ダイナ』にここまでスポットが当たったことがそもそも奇跡の産物であるし、「NEW GENERATION GAIA」の不在よりも、こうして「NEW GENERATION DYNA」がグランドフィナーレを迎えたことを何より喜びたい――。このSTAGE5はそう素直に感じさせてくれる素晴らしいステージだったし、今回で長い旅路を終えるケンゴ役・寺坂氏、カナタ役・松本氏の挨拶は、TDG云々を越えて『トリガー』と『デッカー』に出会えてよかった、と心から思えるものになっていた。

 

 

「作品の締め括りが舞台」というのは決して珍しい話ではないけれど、今回ほど「フィナーレが舞台で良かった」と思えたこともないと思う。 

舞台だからこそ、スーツと優れたシナリオさえあればどんな贅沢な展開も実現できるし、昨今のウルトラに付き物である「スケール感」についても、元来「観客側の想像力補正が働く」舞台というジャンルなら (脚本でスケール感を出せれば) クリアできる。そう考えると、実際の劇場版 (旅立ちの彼方へ…)で「予算に見合った文芸重視の物語」を描き、舞台という予算を度外視できるコンテンツで『劇場版 ウルトラマントリガー&ウルトラマンデッカー』を描く、という今回の試みは、今後のウルトラシリーズや『ウルトラマン THE LIVE』の可能性を大きく広げる試金石になったのではないだろうか。  

そして何より、〆が舞台だったからこそ、ケンゴ役・寺坂氏、カナタ役・松本氏という「パンデミックと戦ったウルトラマン」たちが、ようやく、ようやく子どもたちからの声援を生で受け取れたこと……!

 

 

もし『デッカー編』がSTAGE4で終わりだったら、結局ケンゴとカナタは「子どもたちの生の声援を受け取る」機会がないままバトンを繋がなければならなかったかもしれない。この舞台はそういった意味でも本当に大きな意義のある舞台になったと思うし、ティガ&ダイナ、トリガー&デッカー、2つの「TD」の大ファンとして、こんな素晴らしいグランドフィナーレを作り上げてくださったスタッフ・キャストの皆様にはいくら感謝してもし足りない。本当に、本当にありがとうございました……!

 

 

そして、未だ子どもたちからの「生の声援」を受け取っていないヒーローがもう一人。ウルトラマンゼット=ナツカワ ハルキ役、平野宏周氏だ。 

もう『ウルトラマンZ』も3年前の作品。ゼットも「現役ヒーロー」と呼べるか怪しい頃合いになってきてしまったけれども、どうか彼にも――もとい、パンデミックと真正面からぶつかってしまい、その上で負けることなく世界中に笑顔を届けてくれた彼だからこそ、すぐにでも子どもたちからの声援を浴びてほしいし、その為の「大舞台」があればこんなに嬉しいことはない。 

ブレーザーブレスにゼットストーンが付属するなど、未だその人気の高さが伺える『Z』。かつて『ティガ』がその人気を受けて数年後に劇場版を実現したように、いつかハルキにも劇場版、あるいは今回の舞台のような「真のフィナーレ」が来ることを心待ちにしていたい。