れんとの転職活動レポート【中編】~契約社員、パンデミックに堕つ~


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~これまでのあらすじ~

虎賀れんとが新卒で就職した営業職、それは想像を遥かに越える地獄だった。

営業から逃げ出して平和なオタクライフを手に入れるべく始まった転職活動は、50社もの応募を経て遂に実を結ぶ。しかし、その雇用形態はあくまで契約社員という不安定なもの。

「正社員登用試験に受かればいい」と高みの見物を決め込むれんとだったが、水面下で『ある脅威』が世界に迫っていることを、この時は気付くはずもなく……。

 


○  ○  ○

 


時に2019年10月。
どうにか無職の期間を作ることなく、とある特殊法人の非常勤事務職員として転職に成功。前職は(どういう訳か)営業が営業事務をほぼ全て自身で行う会社だったため、事務職としての経験は十分。順調すぎるほどに業務をこなし、配属先での評価も上々。気分はさながら異世界転生して無双する主人公だった。 ※フラグ

 

しかしどれだけ成果を上げようとも、2年半という契約期間も、それまでに正職員登用試験に合格しなければならないというミッションも変わらない。

仕事の傍らで試験絡みの情報を収集していき、その試験が厳密には『一般向けの正職員採用試験に自分も参加するだけ』という(聞いていた話となんか違う)ものであることや、規模を変えて年2回開かれること、そのどちらも形式は同じで


①書類選考
②教養・作文試験
③1次面接(グループディスカッション)
④2次面接
⑤最終面接
という流れであることを知る。

 

当時は10月。最初の試験となる冬試験は、目的が欠員補充のため枠が少なく倍率が高い(30倍ほど)もの。そこで肩慣らしを行い、春に開かれる本試験で合格を狙う……というプランを立て、大学受験以来となる試験勉強の日々が幕を開けた。

 

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  • 作者:畑中 敦子
  • 発売日: 2018/02/28
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非常勤職員ということもあってかそこまでハードな仕事は任されず、仕事は概ね定時で上がることができた。そうして確保できた時間を惜しみなく勉強に投入していく。
試験科目は公務員試験に準ずるため、大雑把に言うなら

・数学(数的推理/判断推理)
・国語(文章読解)
・社会(日本史/世界史/地理)
・理科(物理/化学/生物/地学)
・英語(文章読解)
・政治
・経済
・法律
・時事
・作文

といったところ。多くない?


ただでさえまともに勉強したことのない経済や物理といった科目が並んでいるのに、数学や世界史といった過去の宿敵たちまで並ぶ様相はまさに世紀末。早速この道を選んだ自分を全力で呪いつつ、家では数学の参考書、外では暗記科目の一問一答に教材を絞っていざ猛勉強。

 

そしてあっという間に迎えた2020年1月、無事に教養・作文試験を通過。1次面接となるグループディスカッションも上手いこと発表を担えたからか無事突破するも、2次面接で不合格となってしまった。

対策期間を考えれば健闘した方だぞ! と励ましてくれる自分もいれば、割とがっつりショックを受けている自分もいたりしたが、どのみち本番は次(6月)の春試験。怯むことなく試験の全容を書きまとめ、次なる対策を始めていく。

 

不安定な状況には違いなかったが、なぜかこの時の自分には「春試験では大丈夫だ」という妙な確信があった。
なにせ今度は対策の時間も十分。出題形式も分かるし、面接の形式も分かる。採用枠も多ければ、日々の仕事を通して法人への理解も深まっている。


そして何より面接担当者から言われたのだ、「よほどのことが起こらなければ大丈夫」だと。

 

 

2020年2月。
某ウイルスによる未曾有のパンデミック発生、緊急事態宣言発令。

 

2020年5月。
職場の友人から
「応募数が昨年比3倍」
というおぞましい報せが入る。

 

2020年6月~7月。
本試験に臨むも2次面接で落選。

 

2020年8月。
今回の試験の採用枠が昨年比1/10であり、実質的な倍率がおおよそ100倍スタートの試験だったと知る。

 


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ウゾダドンドコドーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 


そんなこんなで春試験は無事開催されたものの、またしても力及ばず敗退。
確かに、確かに自分が誰よりも完璧に仕上げていれば問題はなかった。『内部の人間』という大きなアドバンテージがあったのに、というのもその通り……なのだが、こんなのって、こんなのってないよォ!!!!!!!!!(碇シンジ)

 

だが本試験で採用が少なかったということは、転じて『欠員補充』を本来の目的とする冬試験での採用枠が増える可能性が高い、ということだ(ポジティブシンキング)。
契約期間(残り1年半)内に受けられる試験は残り3回。次を最後にする意気込みで、冬試験までの半年間をかけた更なる追い込み修行が始まった――!

 

フリージア

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2021年1月、試験当日。

熱 が 出 ま し た /(^o^)\


2021年2月。

人事担当「パンデミックのせいで経営悪化しました、3月で解雇ね ^ ^

 


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ウゾダドンドコドーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 

 


正直、半期決算を見て嫌な予感はしていたし、その時点でこの事態を予想しておくべきだったのかもしれない。
そこで「どうにかなるっしょ!!」などと楽観を決め込んだ結果がこの始末。残り1年の猶予期間も、最後のチャンスだと思っていた残り2回の試験も消滅。全ての展望が白紙に戻ってしまったのだ。


厳密には『受験はできる』のだが、その場合は『無職の状態で、受かるかどうかも分からない試験に全てを懸ける』ということになる。それがいくらなんでも無謀すぎることくらい、冷静さを欠いた頭でも難なく理解できていた。
結果、残された道はたった1つ。

 

2021年2月。
パンデミックが世間を襲う中、転職活動が再び始まったのである……!

 


○  ○  ○

 


こうして幕を開けた第2次転職活動。しかし、同じ転職活動といっても状況は前回とまるで別物。

前回の転職時は社会人3年目。つまりはギリギリ『第二新卒』だった訳だが今度は4年目。第二新卒でないどころか『たった4年で2度も転職をしている要注意人物』という烙印が押されている状態だ。


更に、転職市場が売り手市場だったのも過去の話。世間はパンデミックでリストラが横行する真っ只中で、前回と同じような甘い覚悟で挑もうものなら惨敗するのが目に見えていた。

 

転職活動のピークは4月/10月就職分。そして、転職活動にかかる期間は平均して1~3ヵ月と言われている。
当時は既に2月。ピークに合わせて4月就職を目指すならすぐにでも応募を始めるべきだったが、見切り発車でどうにかなるような状況じゃないことは明白。急がば回れ、まずは土台を磐石にすることが何より必要だった。

 

絶対内定2023 自己分析とキャリアデザインの描き方

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という訳でまずは前回の転職活動の振り返り。するとまあ、志望動機や自己PRの拙いこと拙いこと。1年以上かけて正職員登用試験対策の修行を積んでいたこともあり、かつての自分の転職活動ぶりが無様に見えてしょうがなかった。気分はまさにフリーザとセルを同時に相手取るGT悟空。(オタク特有の伝わらない比喩)

 

問題は自己PRや志望動機だけではない。他にも業界や職種への理解度、将来の展望(ビジョン/キャリアプラン)といった『自己分析に由来する点』全てが練り不足だったため、自己分析のやり直しはまさしく急務だった。

 

前回の転職活動では転職エージェントとの面談や適性検査を経て早々に終えてしまった自己分析。確かに『資格・技能』や『数年間1つの職種で勤め上げてきた経験』など、箇条書きにするだけで伝わる魅力を持っている人ならばそれで問題ないだろうが、虎賀れんとというポンコツはそうもいかない。資格もなければ、社会人4年目にして転職2回目、しかも経験職種はバラバラだ。こんな履歴はプラスどころか明らかにマイナスなため、その分を自己PRや志望動機のような部分でカバーする=自己分析を人並み以上にしっかり行う必要があった。

 

その上でメインに据えたのは書籍。アナログな考え方だが、自己分析や面接対策のような『多様な切り口から学ぶ必要があるコンテンツ』に向き合う時は、各ページに都度飛ぶ必要があるネットよりも一つのモノとして体系的に纏まっている書籍の方が圧倒的に使い易い。


勿論この手の書籍には当たりはずれもあるが、そんな時に便利なのが書店。(時世柄あまり良いことではないが)店頭で内容をサッと確認し、自分の感じている『つまずき』に対応した回答が記載されているか、説得力のある文章か、などポイントを絞って転職活動のお供を見定めていく。

転職大全 キャリアと年収を確実に上げる戦略バイブル

転職大全 キャリアと年収を確実に上げる戦略バイブル

  • 作者:小林 毅
  • 発売日: 2019/04/19
  • メディア: 単行本
 

個人的にお勧めなのがこちらの書籍。

転職に特化した書籍自体が少ない中、この本は『転職初心者とコンサルタントの対談』を模した形式になっているため、シビアな転職事情を素人の視点から分かりやすく学ぶことができる。スタートアップから内定周りのことまで一冊でカバーしている点もポイントが高く、買っておいて損はない一冊だ。

(これまでに何度か貼り付けてきた『絶対内定○○』も非常に有用なシリーズなので、特定の分野に不安のある方は是非)

 

この本をベースにしつつ、不足している点を他の書籍や『マイナビ転職』などの転職サイトに掲載されたコラムなどで補い、自己分析を一からやり直す。そしてその自己分析を元に、これまで転職エージェントに丸投げしていた職務経歴書を自分で一から作り上げる。

 

ラジオ体操を全力で行うとかなりの運動量になるように、自己分析もここまでガッツリ行うと中々に時間がかかるもので、この時点で既に2月下旬。はやる気持ちを抑えつつ、次は『どうやって応募していくか』を見直していく。


結論から言うと、個人的な最適解は『転職エージェントと転職サイトの併用』だった。

 

前回の転職活動では転職エージェント2社(duda、マイナビジョブ20s)を利用し、自己応募は片手で数えるほどの件数しか行わなかった。しかしその結果が2/50の内定で、それも片方は非常勤職員というハードルの低い採用=実質的にノーカウント。大敗だ。

この大敗には、自分自身の力不足という大前提に加えて、もう1つ『エージェント経由の場合は採用側のハードルが高い』という事情が影響している。

 

転職エージェントは(自分の知る限り)無料で利用することができる。では転職エージェントの利益はどこから出ているのか? というと、求職者が転職した場合に採用した企業からエージェントに支払われる『紹介料』だ。

ここで、求職者-転職エージェント-企業の関係を整理すると下記のようになる。

 

     【求職者】
    依頼↓ ↑企業を紹介
   【転職エージェント】
求職者を紹介↓ ↑依頼(成約時に追加報酬)
  【社員を募集する企業】

 

つまり、転職エージェントとは求職者から見れば『無料で利用できる頼もしいアドバイザー』である一方、企業から見れば『高いお金を払うことで、安心して質の良い新入社員を迎えられる』サービスという訳だ。


そのため『わざわざ高い金を払ってでも雇いたい』レベルの求職者でなければ、いかにエージェントのフォローがあれど選考を勝ち抜いていくことは難しいのである。
(参考までに、エージェント各社に『事務職への転職における書類選考通過率』を訊ねたところ、各社多少のブレはあったが10~20%という共通の回答が出ていた。低すぎない……?)

 

こういった事情から、転職エージェントは確かに便利だが『それ一本でやっていくにはリスキー』なシステムで、安定した転職活動を求めるならそのリスクを補う方法が必要になってくる。そこで登場するのが『マイナビ転職』のような転職サイトだ。

 

転職サイトへの求人掲載は(ハローワークを除くと)有料だが、転職エージェントと違い採用時に特段の追加発生料金がないため、企業からすると安定性に優れた求人方法で、採用も比較的気軽に行うことができる。そのためエージェントを介する場合よりも書類選考率が高い、という訳だ。

 

当然だが、転職サイトからの応募は『自己応募』であり、転職エージェントのようなサポートを受けることはほぼできない。書類は0から作らなければならないし、応募手続きも全て自分で行う必要がある。しかし、だとしても選考通過率が高いというメリットに敵うものなんてない。

 

この転職サイトを転職エージェントと組み合わせて使うことで『転職エージェントのサポートで得たノウハウを活かし、転職サイトから応募し安定した活動を実現する』という(個人的な体感として)最も有効な転職活動が可能になるのだ。
(勿論、サポートを受けるためにもエージェント経由での応募は不可欠。難易度こそ高いが、持ち玉が多いに越したことはない)

 

このように大まかな方針を決めた次は、より細かい準備を行っていく。

まず、使う会社は自分の経験と各所の評判、実際の使いやすさなどから判断し、転職エージェントを『マイナビジョブ20s』と『マイナビAGENT』に、転職サイトを『マイナビ転職』にそれぞれ決定。

 

志望職種は諸般の事情、そして自分の能力や経験を踏まえて広義の事務職(人事/総務/労務/経理/事務/営業事務)に限定。更に志望業界を自身の適性や希望としっかり擦り合わせることで、ようやく第2次転職活動の準備が完了。

長い戦い、その最終章が遂に始まろうとしていた。

 

○  ○  ○

 

第2次転職活動、その準備を始めた頃はまだ2月上旬、しかし準備が終わってみれば2月末。
4月の転職に向けて大きく出遅れてしまったが、時間をかけて様々なことを学び、改善していく過程は苦労に見合った自信を与えてくれた。

 

努力は絶対に裏切らない、などと柄にもないスポ根精神を胸に秘め、ゆっくりと歩き出す。
目標は3月以内の内定獲得。

世間がパンデミックの脅威に震える中、本当の最後の戦いが遂に幕を開けた――!

 


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