感想 - 舞台『ウルトラマン NEW GENERATION THE LIVE スターズ編 STAGE1 in 博品館劇場』“看板に偽りあり” を補って余りある、voyagerに捧ぐ絆のディメンションロード

現在のウルトラシリーズTV作品は、おおよそ7月~1月が「2クールの新作番組」、2月~6月が「過去作の映像と新規撮影映像とを交えた、2クールの総集編番組」の放送期間という極めて珍しい放送形態を取っている。 

現在、2023年4月はその後者の時期であり、毎週土曜日朝9時からは『ウルトラマン ニュージェネレーションスターズ』が放送中だ。

 

 

ウルトラマンゼロ、ギンガ、ビクトリー、エックス、オーブ、ジード、ロッソ、ブル、タイガ、ゼット、トリガー、デッカーらを主とする新世代戦士たちの活躍を振り返るという内容の本作は、「2話ごとに各ウルトラマンがフィーチャーされていく」「主役のウルトラマンが新撮映像でナビゲーターを務める」という、これまでに比べてより「新作」として凝った作り方になっており、さながら『仮面ライダーディケイド』のようなワクワク感や、洗練された「上手い」セレクション、魅力的な総集編には毎週のように盛り上がらせて貰っている。 

そんな『ニュージェネレーションスターズ』はやはり製作陣=円谷プロダクションにとっても肝煎りのようで、なんと放送間もなくこの作品を題材とした舞台公演が発表されることとなった。

 

 

その名もズバリウルトラマン NEW GENERATION THE LIVE スターズ編 STAGE1』。  

ニュージェネレーションの戦士たちが大好きで、かつ件の『ニュージェネレーションスターズ』に楽しませて貰っている身としては、どうしても気になるし応援したいところ。スケジュールの都合でオンライン配信の鑑賞となったのだけれど、その内容は良くも悪くも非常に変わったものとなっていた。 

 

自分自身今回の公演には賛否両論の思いが激しいのだけれど、そんな複雑な心境を吐き出せるのが個人ブログの真骨頂。 

4月21日(金)~5月7日(日)に行われるアーカイブ配信をより多くの人に見て頂くという意味合いも込めて、下記、今回の公演への正直な感想を書き連ねていきたい。


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引用:『ウルトラマンニュージェネレーションスターズ』をテーマにした「NEW GENERATION THE LIVEスターズ編 STAGE1 in博品館劇場」の開催が決定! - 円谷ステーション


ウルトラマン NEW GENERATION THE LIVE スターズ編 STAGE1 in 博品館劇場』(以下、『スターズ編』)のあらすじは以下の通り。

 

第一部

失われたニュージェネレーションウルトラマンの記憶を取り戻す為、ボイジャーの2人が立ち上がる。ニュージェネレーションウルトラマンに欠かせないボイジャーの歌声。紡いできた歌の歴史で、記憶を辿れ! 

第二部
今も何処かで、自分たちの道を進み続けるニュージェネレーションウルトラマン。今回はウルトラマンデッカー、ウルトラマントリガーが大活躍!彼らの活躍を目撃する事で、新たな記憶を刻みこめ!

引用:NEW GENERATION THE LIVE スターズ編 STAGE 1 in 博品館劇場 - 博品館劇場公式ホームページ

 

博品館劇場を中心に開催される、ウルトラシリーズの舞台公演は、その多くが「二部構成」=第一部だけで一区切りは付くが、その決着は第二部で行われる……というシナリオ構成を取っており、具体的には概ね「第一部=物語重視 第二部=バトル重視」といった印象だ。 

今回の『スターズ編』で参戦が確定しているウルトラマンは「ゼロ、ギンガ、ビクトリー、エックス、ジード、タイガ、ゼット、トリガー、デッカー」といった面々。それを踏まえて今回のあらすじを見てみると、なるほど、第一部がゼロ~ゼットをメインにしつつ、第二部でトリガー、デッカーが合流するスタイルかな……と思っていたのだけれど、この『スターズ編』はそんなこれまでとは全く異なる、良し悪しの極端な内容になっていた。

 


※以下、『ウルトラマン NEW GENERATION THE LIVE スターズ編 STAGE1 in 博品館劇場』のネタバレが含まれます、ご注意ください※

 


『スターズ編』は、結論から言えばなんと驚異の4部構成だった。  

本公演の流れは 

〈前説〉
 ↓
〈第一部〉
 ↓
〈15分休憩〉
 ↓
〈第二部-デッカー編〉
 ↓
〈第二部-トリガー編〉
 ↓
〈第二部-最終決戦編〉
 ↓
〈フィナーレ〉 

というもの。 

ゼットがナイスの代役という非常にレアなシチュエーションの前説を踏まえて始まった第一部は実質的に「Voyagerのライブ」であり、『ニュージェネレーションスターズ』の内容に合わせて「voyagerの歌で、ニュージェネレーションウルトラマンたちの記憶を皆でディメンションナイザーに刻もう」という非常に粋な構成。 

しかも、このライブは、どうやらその日によってセットリストが変わるらしいという贅沢な仕様だったようで、自分が鑑賞した3日目のセットリストは 

ウルトラマンX』
ウルトラマンギンガの歌』
フュージョンライズ!』
『みんな大好きなウルトラマン
『Ultra Spiral』 

という、『ギンガの歌』『フュージョンライズ!』『Ultra Spiral』がvoyagerの歌の中でも特にお気に入りだった自分としてはまさに仰天もののラインナップ! オンライン観賞なのをいいことにPCの前で変な声を上げてしまったし、生の『Ultra Spiral』をバックに繰り広げられるゼロ、ギンガ、ビクトリー、エックス、ジード、タイガ、ゼットが一堂に会しての大乱戦は拍手喝采。この時点で、自分にとって本公演は非常に満足感の高いステージになっていた……のだけれど、問題は続く第二部。ここから徐々に、本公演の「否」が顔を出してくる。

 

ヒカリカナタ

ヒカリカナタ

 

まずは前半のデッカー編。タイトルは『空夢の彼方』で、まさか……と思ったら、本当にそのまさかだった。このエピソードはなんとウルトラマンダイナ42話『うたかたの空夢』のオマージュとで、物語としては原点と同じく「カナタが夢を見る」というそれだけのものだけれど、その夢が中々どうして原点に負けず劣らずのトチ狂った (誉め言葉) になっていた。

 

まさかまさかの登場「レギュラン星人 ズウォーカァ3世」(スーツはアトラクション用のレギュラン星人) 

・ズウォーカァ3世が「出でよ我が大軍団!!」と威勢良く配下を呼び出すも、出てくる怪獣が2体だけ(あまりにもズウォーカァ将軍っぽい) 

・ズウォーカァ3世に仲間を倒され、ハネジロー族最後の生き残りとなった設定のHANE2 (声優は、本編同様に『忍者戦隊カクレンジャー』のニンジャブルー/サイゾウを演じた土田大氏) 

・そんなHANE2の口調が、些かフェミニンで忍者戦隊カクレンジャー』のニンジャブルー/サイゾウにそっくり  

・HANE2が戦う時だけ、スクリーンにカクレンジャー』よろしくアメコミ風SEが表示される 

・HANE2が乗り込んだテラフェイザーが使う技が「ハネジロー流 スクエア切り」
※スクリーンにでかでかと映る「忍」の文字
カクレンジャーの技はどれも “カクレ流◯◯” という名前
※ニンジャブルーのトレードマークは四角形 

・デッカーとテラフェイザーのピンチに、ウルトラマンダイナの名BGM『明日へ…』と共にやたら仰々しく現れる巨大ハネジローこと「ハネジロー神」  

この『空夢の彼方』は約10分強と非常に短い内容だったのだけれど、このように気の狂った(誉め言葉)が満載で個人的には大満足。
ただ、この辺りで少しだけ不安があった。「スターズ編なのに、ギンガたちが全然話に絡んでこないな……」と。

 

Believer

Believer

  • マナカ ケンゴ (寺坂頼我)、シズマ ユナ (豊田ルナ)、ヒジリ アキト (金子隼也)
  • アニメ
  • ¥255

 

続くトリガー編のタイトルは『悪魔の誘い』。カナタがマルゥルに作成を依頼したロボット=マウンテンガリバーⅡ-Ⅴに「人知を越えた力」を見たキリエロイドが、それを「神の器」として利用すべく暗躍する……というストーリーで、その尺はデッカー編同様10分強。コメディなので短尺がピッタリだった『空夢の彼方』に対し、こちらはその尺不足が露骨に響いていて、マウンテンガリバーⅡ-Ⅴの初登場舞台こと『ウルトラヒーローズEXPO サマーフェスティバル』第二部の焼き直しのよう……というのが率直な印象、加えて「『トリガー編』と銘打っているにも関わらずトリガーが一言も喋らない」という深刻な違和感が、その印象を更に悪化させてしまっていた。  

(なぜかエンディング前に一言だけ喋る。寺坂頼我氏っぽい声だったけれど、少しテンションに違和感があったので代役かアーカイブである可能性が高そう)

 

その後、このデッカー編、トリガー編が合流。キリエロイドが融合・変貌したファイブキングにトリガー、デッカー、そしてウルトラチャージで登場したゼロ、ゼットが立ち向かう……という最終決戦を経てシナリオは終了するが、その後例によって「フィナーレ」と題してウルトラヒーローが集合。voyagerの生『STARS』をバックにトリガー、デッカー、ゼロ、ゼット、ギンガ、ティガ、ダイナが激闘を繰り広げ、本公演は幕を下ろした……。

 

さて、お気付きだろうか。なんとこの公演、『スターズ編』と銘打っておきながら、ゼロ、ギンガ、エックス、ジード、タイガ、ゼットが一切ストーリーに関与しないのである。  

前説やナレーションも担当するゼットは比較的出番が多いが、ギンガ、ビクトリー、エックス、ジード、タイガには台詞が一切なく、ゼロも最後の最後にアーカイブの宮野氏ボイスで挨拶するだけ。その出番も 

・ゼロ=ライブと最終決戦だけ 

・ギンガ=ライブとフィナーレ 

・ビクトリー、エックス、ジード=ライブのみ 

・タイガ=ライブのみ (自分の歌はなく、Ultra Spiralの最後にゲストとして顔見せ+バトルしてくれるだけ) 

という状態で、「『スターズ編』なのだから、直近で何度も舞台があったトリガーやデッカーではなく「ニュージェネレーションの面々」を主役にした舞台を見たかった」というのが本音だし、せめてフィナーレくらいはポスタービジュアルの面々で戦わせてほしかった。あのポスターでそれが見れないなんてことあるの……!? と、今でも些か信じられない気持ちだし、流石にこれは「看板に偽りあり」という謗りを免れないのではないだろうか。  

(voyagerのライブは本当に嬉しかったし素晴らしかったけれど、それはそれ、これはこれ、という問題だ)

 

 

と、このように「良い内容だったし、voyagerのライブは最高だったけれど、それはそれとして期待していたものとはかなり違った」という印象が拭えなかった今回の公演。正直「間違いなく見れるだろうし、それが見れればもう100点」だった「ニュージェネレーションスターズがメインの舞台」が見れなかったのは結構なショックで、観賞後はしばし何とも言えない感情に囚われてしまっていた。 

けれど、今回の公演に対する満足度を敢えて点数にするなら、そのようなマイナスを加味してもズバリ「50000000000兆点」。それはvoyagerのライブが素晴らしかったことは勿論だけれど、第一部の最後を〆る演出=「voyagerのディメンションカードが出現し、それをディメンションナイザーでスキャンする」という演出があまりに素晴らしかったことに尽きるだろう。

 

 

ウルトラマン ニュージェネレーションスターズ』において、ディメンションカードとは「未来から送り届けられたウルトラマンの記録」であり、それを読み込み、謎の存在に奪われた「ウルトラマンの記録」を蘇らせるアイテムがディメンションナイザー。 

同番組では、毎話ラストでこの「未来から届けられたデータを、カードをスキャンすることで現代に復活させる」演出が入るのだけれど、今回の『スターズ編』第一部のラストでは、これと全く同じ映像で「voyagerのディメンションカードが未来から送り届けられる」→「ディメンションナイザーでロードし、『ニュージェネレーションヒーローズ!』の音声と共に、voyagerの過去の活躍がスクリーンに広がる」という演出がある。  

そう、ゼットの「voyagerがいなければ、ニュージェネレーションの歴史は変わっていたかもしれない」という台詞も含め、このステージはつまり「voyagerもまた、ニュージェネレーションスターズの一員である」ということを証明するものであり、voyager……の中でも、ゼロと共にデビューしたTAKERU氏・瀬下千晶氏両名に捧げる、円谷プロダクションからの最大の「ありがとう」だったように思えてならないのだ。

 

 

一時は凍結寸前だったウルトラシリーズというコンテンツは、ゼロに始まった新世代のヒーローたちと共に懸命に走り続け、今や他の特撮ヒーローシリーズに負けず劣らずの大人気コンテンツとして見事な復権を果たした。……しかし、ウルトラマンR/B』以降、シリーズのファン層拡大や製作上の都合からか、voyagerが手がける歌を聞く機会は大きく減ってしまっていた。  

『ギンガ』『X』『オーブ』『ジード』では少なくともOP、ED、挿入歌の最低いずれか一つはvoyagerが担当していたが、『R/B』以降のTV新作ではvoyager担当曲が一つもなくなってしまう。 

その間、voyagerは活躍の場をシリーズのサブコンテンツ=『ウルトラギャラクシーファイト』や『ニュージェネレーションスターズ』のような「総集編枠」に移したものの、『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』や『ウルトラマンクロニクルZ』では既存曲が流用されるだけだったり、『ウルトラマンクロニクルD』では新曲ではなくカバーだったりと、voyagerの歌がシリーズの楽しみの一つだったファンとしては、どうにもモヤモヤを感じざるを得ない状況が続いていた。

 

確かに、タイアップするアーティストを広げることは今のウルトラシリーズには間違いなく必要であるし、そういう点から「新風」が入ることに喜びを感じる自分も間違いなくいる。けれど、voyagerなくして今のウルトラシリーズはありえないし、近年のシリーズとvoyagerのアーティスト性のシンクロニシティは依然として他の追随を許さない程に圧倒的。自分自身もっともっとvoyagerのウルトラソングが聞きたくてしょうがないし、TV新作の主題歌が難しいならせめて挿入歌を担当して頂くとか、サブシリーズで毎年新しい歌を担当して頂くとか、何かあるだろう……と、どうしてもそう思わずにはいられない。様々な都合があるのだろうとは思うけど、それでもその出番が減っていくことは寂しいし、異を唱えたいし、絆のヒーロー・ウルトラマンを送り出す会社=円谷プロダクションには、そんなvoyagerとの「絆」を大切にしてほしかったのだ。 

だからこそ、『ニュージェネレーションスターズ』という作品の主題歌アーティストにvoyagerを抜擢してくださったことと、今回の『スターズ編』の内容が本当に嬉しかった。……ほんの少し、これが最後の大舞台なのだろうか、卒業してしまうのだろうか、という不安もあるけれど、少なくともそこに円谷プロダクションの「誠意」は間違いなく感じることができたように思う。voyagerという存在への祝福が詰まったステージを通して、そんな円谷プロダクションとvoyagerとの絆を知ったこと。ともすれば、それこそがこの舞台を見たことによる一番の収穫と言えるかもしれない。

 

 

ウルトラシリーズはこれからもずっと続くだろう。仮に一度途絶えたとしても、きっといつか必ず蘇ってくれるのだろうと思う。  

けれど、「ウルトラシリーズとvoyagerの繋がり」はいつか必ず終わる時が来る。それはどうあっても仕方のないことだし、仮にその時が来たとして、それをして円谷プロダクションを批判するつもりはない。そんな「事情」を察せないほどに幼稚では、それこそ自分を育ててくれたウルトラシリーズに面目が立たないというものだ。 

少なくとも、円谷プロダクションがvoyagerを「朋友」として大切に想ってくださっていることは、今回のステージから存分に感じることができた。であれば、自分のようなファンにできることは「これからもvoyagerというヒーローを精神的・物理的に応援し、その更なる活躍を願う」こと。それこそが、ファンとしての役割であり「礼儀」なのだろうと思う。

 

 

……と、そんな本公演のアーカイブ配信は4月21日(金)19:00から5月7日(日)まで。 

voyagerが大好きで、まだ本公演を見ていないというそこの貴方。是非、上記リンクから一緒にvoyagerやウルトラヒーローの勇姿を見届けましょう!