平成ライダーの“名挿入歌”勝手にベスト10【後編】


f:id:kogalent:20211027125410j:image


~これまでのあらすじ~

はてなブログ先輩「ブロガー! これを使え!」
 ⇒《 はてなブログ10周年特別お題「好きな◯◯10選」》 

筆者「文字数が限界突破したので前編と後編に分けます」 

はてなブログ先輩「えぇ……」

  


○  ○  ○

 


という訳で始まった超個人的ランキング企画、平成ライダーの“名挿入歌”勝手にベスト10」ですが、ランキング10位~6位の時点で文字数が8000オーバーとなってしまったので、残る5位~1位に触れていくのが本記事となります!(タイトル詐欺感)

 

kogalent.hatenablog.com

↑ 10位~6位についてはこちらからどうぞ!


怒涛の名曲ラッシュに、是非当時の情景を思い出して頂ければ……!
さあ、(まだランキングに挙がっていない皆さんの)推しの挿入歌を数えろ!!

 

 

〇  〇  〇

 


5位:「仮面ライダーディケイド」より
『Ride the Wind』
作詞:藤林聖子 
作曲・編曲:鳴瀬シュウヘイ
 歌:門矢士 (井上正大) 

Ride the Wind

Ride the Wind

  • 門矢 士(CV.井上正大)
  • アニメ
  • ¥255
 

5位は『仮面ライダーディケイド』より、主人公=門矢士役、井上正大氏自身が歌う1stエンディングテーマ『Ride the Wind』

 

この曲の特徴は、これまでのライダーソングでは使われてこなかったラテン調のテイストが用いられていること。 

アニバーサリー作品の楽曲と言えば、奇をてらうことなくこれまでの王道を踏襲するというスタンスが基本とされる中、敢えて我が道を行くのは非常に『ディケイド』らしいし、この曲の個性が、各世界のライダーたちに負けないディケイドの魅力や『ディケイド』という作品の「らしさ」構築に一役も二役も買っていたと言えるだろう。

 

……と、もう1つ。この曲の印象深さと言えば(個人的に)避けて通れないのが『ディケイド』のSEについて。 

平成に限らず、仮面ライダーシリーズにおいて「SE」という話題は避けて通れないもので、シリーズを振り返っても印象的なものが多い。クウガが助走で大地を踏みしめる音、アギトのジャンプ音、ファイズの手を振る音……などなど。そんな「SE」が、『ディケイド』から一部その毛色を変えたような気がしてならない。  

例えば、士がカードを構える時の「シャキーン!」というキレのいい音。あるいは、ディケイドライバーを操作する時の「ガショーン!」という機械的な音。そういう「SEの主張」が、所々ではあるが『ディケイド』から強まっているように思えるのであるブレイドの斬撃音変更などもこの影響……?)

 

それが『Ride the Wind』とどう関わっているのかというと、それこそ初披露となる10話『ファイズ学園の怪盗』などでも見られた「よくある流れ」として下記のようなものがある。

 

\ブォォーン(ライドブッカーのSE)/
士「変身!」\シャキーン!/
Ride the Wind『テレテレテレーテーレテレテレレッ(イントロ)』
ディケイドライバー『カメンライドォ \ガショーン!/ディケーイ!!』
Ride the Wind『テレテレテレーテ~~レ~~~ッ!!!!』

 

この\ブォォーン/「変身!」\シャキーン!/

 ⇒『テレテレテレーテーレテレテレレッ(イントロ)』

 ⇒変身 ⇒『テレテレテレーテ~~レ~~~ッ!!!!』

……の流れがすごーーーーーーーーーーく気持ちいいんですよ!!!!!

 

この現象を筆者は勝手に『Ride the Windくん音ハメ現象』と呼んでいるのだけれど、他にも下記のようなものがある。  

Ride the Windくん『ライッザーウィーンッッ! ココノツーノー』
\ブォォーン/⇒\シャキーン!/
Ride the Windくん『ソコントコー!』
ディケイドライバー『ファイナルアタックライドォ \ガショーン!/  アアアアギトォゥ!!』
Ride the Windくん『メザスベキゴールノバーショガー』
士「やぁぁーーーッ!」
Ride the Windくん『ジャスキーポンウォーキーーーーン!!』
(爆発音)

 

あ~~~~~~最高~~~~~~!!!!!!(結騎さんありがとうございます!!!!!!)

 

平成ライダーの挿入歌は数あれど、ここまでの気持ちいい音ハメ感を出してくれるのは『Ride the Wind』ぐらいじゃなかろうか。  

痛快なメロディで場を盛り上げるだけでなく、戦闘シーンをパッケージして一段階高く盛り上がる「見所」としてお出しするのも挿入歌のお仕事。Ride the windがいかにその面で達人級なのか、この感覚をもっとスマートに伝えていくために語彙を磨いていきたいところ。

 


○  ○  ○

 


4位:「仮面ライダー龍騎」より
『Revolution』
作詞:海老根祐子
作曲・編曲: 酒井ミキオ
歌:きただにひろし 

Revolution

Revolution

 

4位は『仮面ライダー龍騎』から、3rdエンディングテーマの『Revolution』

 

挿入歌の醍醐味と言えば、その一つとして挙げられるのが新フォーム登場と併せての熱い初お披露目(トリニティフォーム、ライナーフォーム、コズミックステイツ等々)。そのカタルシスにおいて仮面ライダー龍騎』34話における龍騎サバイブの初変身を越えるものはないんじゃないか、と思う。

f:id:kogalent:20211027131449j:image

何より叶えたい願いのために、己の迷いを振り切るために戦いを迫る仮面ライダーナイト=秋山蓮(松田悟志)。自ら退路を断たんとする友を止めるべく、決意と共に『サバイブ』のカードを引き抜く仮面ライダー龍騎=城戸真司(須賀貴匡)。その心を映すかのような業火が一帯を包み込むと、満を持して流れ始める『Revolution』。その盛り上がりが最高潮に達した瞬間、龍騎は遂に龍騎サバイブへと転身を遂げる――! 

「俺は絶対に死ねない。1つでも命を奪ったら、お前はもう……後戻りできなくなる!」

「歌の終わりと共に次回へ続く」という粋な引きも含めて、挿入歌の魅力がこれでもかと極まった文句無しの名場面だ、

 

『前編』でも触れた内容だが、特に平成仮面ライダーシリーズ初期の作品群において、挿入歌は仮面ライダーたちの「ヒーロー感」を補強・担保する役割を担ってもいた。それが特に色濃く当てはまるのが、シリーズで初めてライダーバトルを作品の中心に据えたこの『仮面ライダー龍騎』である。 

『Revolution』、そしてその前にメインで用いられていた1stエンディングテーマ『果てなき希望』の双方を手がけたのは、アニメ『ONE PIECE』の主題歌『ウィーアー!』などで知られるきただにひろし氏。氏の熱く溌溂とした歌声がなければ、人間同士の殺し合いを描いた『龍騎』はより陰鬱な作品になっていただろうし、これらの挿入歌がライダーたちとミラーモンスターたちとの戦いを強く印象付けたことは龍騎』という番組の「子どもたちに向けた特撮ヒーロー番組」という側面を力強く支えていたように思う。

 

『Revolution』も当然その役割は継承していたが、同楽曲が使われた作中後半は前半よりもライダーバトルが中心となっているためか、『Revolution』はモンスター戦よりもライダーバトルの挿入歌という印象が強い。しかし、『果てなき希望』に比べよりメロディアスに進化した曲調が、彼らの悲壮かつ熾烈な戦いにこれ以上なくマッチしてもいるのだ。  

そんなメロディに乗せて歌われる歌詞も、

たった一度与えられた 命はチャンスだから

僕自身を 勝ち得るため 魂 (ココロ) の旅を 進んで行く

……と、『龍騎』という物語を的確に体現するドラマチックなフレーズばかり。


ライダーたちのヒロイックさを支えながら、よりそのドラマ性とシンクロする進化を遂げた『Revolution』。聴くだけで脳が沸騰し、涙が溢れそうになる圧倒的な熱量は「平成仮面ライダーシリーズ挿入歌」の最初の到達点とでも呼べるもので、あらゆる面において、同曲は平成ライダー、特に平成仮面ライダー第1期を象徴する名曲と言えるだろう。

 


○  ○  ○

 


3位:「仮面ライダーW」より
『Extreme Dream』
作詞: 藤林聖子
作曲: AYANO 
編曲・歌: Labor Day  

Extreme Dream

Extreme Dream

  • Labor Day
  • アニメ
  • ¥255
 

3位は『仮面ライダーW』作中で僅か2回のみ使用されたレアな挿入歌にして、文字通りサイクロンジョーカーエクストリームのテーマソングである『Extreme Dream』

 

初披露はテラー・ドーパントとの決着回である46話『Kが求めたもの/最後の晩餐』。そして最後の出番は、言わずと知れた伝説のエピソードこと48話『残されたU/永遠の相棒』。本当にここぞという名勝負でしか使われない、まさに『W』を背負う名曲中の名曲だ。 

使われたエピソードがこれら2つのため、同曲は作中において「サイクロンジョーカーエクストリームのテーマソング」というよりも、むしろ2人の主人公、左翔太郎(桐山漣)フィリップ(菅田将暉)のテーマソングとして使われている。しかし、そもそもエクストリームという姿は2人の絆の結晶なのでそれも当然のこと。歌詞に鑑みても、この歌は事実上「翔太郎とフィリップ=仮面ライダーWそのもののテーマソング」であり、そのため『Extreme Dream』はあくまで一形態のテーマソングでありながら、上記のような大舞台にこれでもかと映える曲に仕上がっている。

 

同曲を手掛けるのは、主に前半で使われたサイクロンジョーカーのテーマソング『Cyclone Effect』を手がけたLabor Day。軽快かつキレの良い歌声は風の戦士ことサイクロンジョーカーにピッタリで、その進化形態のテーマソングを同氏が担当されるのはまさに納得の人選だ。 

一方その内容はというと、同じ『仮面ライダーW』を歌っているのは勿論だが、『Cyclone Effect』が「風都の仮面ライダー」としての在り方にフォーカスしているのに対し、前述のように『Extreme Dream』は翔太郎とフィリップの関係性を歌い上げているのが印象的。 

そんな楽曲だからこそ、この『Extreme Dream』は48話『残されたU/永遠の相棒』でのユートピアドーパントとの最終決戦において、そのカタルシスをこれでもかと引き上げる最高の立役者となっていた。

「いくよ翔太郎、最後の……」
「ああ……最後のォ!」
『サイクロン!』『ジョーカー!』
「「――変身ッ!!」」

瞬間、流れ出す『Extreme Dream』 。そしてサイクロンジョーカーエクストリームへの直接変身――! 

まるでこの歌に合わせて作られたかのような絶妙なテンポで展開していくユートピアドーパントとの決戦は、「フィリップの最後の想いが籠っているW」の圧倒的な強さもあって、その裏にある切なさを吹き飛ばすほどに熱く盛り上がる。 

かくして放たれる最後の一撃は対ユートピア用の新必殺技。翔太郎とフィリップ、2人の叫ぶ「「ダブルプリズムエクストリーム!」」が、サビのフレーズ『That's so Extreme! 』と重なり合い、曲の終わりと共にメモリブレイク……。

 

この一連は物語としても号泣必至の名シーンであるが、それを押し上げる挿入歌の使い方もまた一級品。曲選から音合わせのテンポなど何もかも究極のバランスで魅せる、平成ライダーが築いてきた「挿入歌」文化の真骨頂と言えるだろう。  

余談だが、この『Extreme Dream』はファン人気の非常に高い楽曲でありながら「仮面ライダーW SPECIAL CD-BOX」のみの収録となったため、ファン投票で収録曲を決めるCDアルバム『KAMEN RIDER BEST 2000-2011』の発売に際し、なんと得票数2位を記録。見事再収録されたという華々しい逸話を持っている。That's so Extreme...!

 


〇  〇  〇

 


2位:「仮面ライダー鎧武」より
『乱舞 Escalation』
作詞:藤林聖子
作曲・編曲:鳴瀬シュウヘイ
歌:葛葉紘汰(佐野岳) & 駆紋戒斗 (小林豊)   

乱舞Escalation

乱舞Escalation

  • 葛葉紘汰・駆紋戒斗(C.V. 佐野 岳、小林 豊)
  • J-Pop
  • ¥255
 

この曲を語らずして「平成ライダーの挿入歌」を語れる訳がない。2位は『仮面ライダー鎧武』から、極アームズのテーマソング(仮)こと『乱舞 Escalation』

 

同曲を歌い上げるのは、葛葉紘汰役の佐野岳氏、そしてその宿命のライバル、駆紋戒斗役の小林豊氏。 

『オーズ』の『Time judged all』以来となる俳優タッグの挿入歌で、2人が心を重ねるのではなく「真正面からぶつかり合う」かのような曲調・歌詞は歴代の仮面ライダーシリーズ挿入歌でも屈指のダイナミックさを作り上げており、まさしく「戦国乱世」を謳うかのような心滾る挿入歌となっている。
(否が応でも場を盛り上げる熱さからか、あまり挿入歌が用いられることのない『鎧武』の中では使用回数の多い挿入歌だった)

 

その初披露は36話『兄弟の決着! 斬月VS斬月・真!』の鎧武VSレデュエで、以来数回に渡り、主に極アームズの処刑曲として採用。『鎧武』は『E-X-A (Exciting × Attitude)』『時の華』『Raise Up Your Flag』と、鎧武の進化に合わせて各テーマソングが挿入歌として用いられてきたこともあり、極アームズの処刑曲としてこの歌が使われることには何の違和感もなかった。

 

「なんで戒斗も歌ってるんだ……?」という一点を除けば。

 

そう、極アームズの挿入歌という仮面を付けて現れたこの『乱舞 Escalation』の真の魅力は、紘汰と戒斗、2人の決戦が幕を開ける45話『運命の二人 最終バトル!』における鎧武VSバロンの戦い、その一戦のために用意された(であろう)点にある。  

「お前を倒して証明してみせる……! ただの力だけじゃない、本当の強さを!」
「それでいい……貴様こそ、俺の運命を決めるに相応しい!」
『バナ-ナ!』
『♪ 俺たちが 最強の力 手に入れたとして』
「うぉぉぉぉぁぁっ!!」
『オレンジ!』
『♪ その後に この目には どんな世界映るのか――』

 

ライダーの挿入歌は数あれど、『たった1つの戦いのみを想定して作られた』それも『戦う相手同士』を同時に歌い上げた挿入歌など他にあるだろうか。  

事実、この楽曲はその歌詞からして「紘汰と戒斗の魂のぶつかり合い」以外に形容する言葉が見つからない凄絶なものになっている。

 

争いはまた 争いの種を残し
時が経つまま 悲しみの実を育てる 

逃げたいのなら 下りればいいこのバトルを
理想並べて 叶うほど甘くない 

誰もが 自分が 求める 未来を目指せ 

俺たちが 最強の力 手に入れたとして
その後に この目には どんな世界 映るのだろう 

状況打開してくほどに

支配するほどに……

極 Escalation

 

『ドライブ』の挿入歌『Spinning Wheel』では主役3人がレースの様に競い合っていたが、この『乱舞 Escalation』は全身全霊によるまさに一騎打ち。 

お互いの生き様を自身に問いかけ、覚悟を決めて、心の刃をぶつけ合う。そんな歌がこれ以上ない最高潮の中で用いられた結果、件の45話における鎧武VSバロンでは、同曲が「ほぼフル尺で使われる」というとんでもないシチュエーションが爆誕することとなった。


まるで『鎧武』という作品が自分たち2人の物語であったと豪語するように、力を得てしまった者の宿命を体現するかのように、次々とライドメカや己の姿を変えて切り結んでいく鎧武とバロン。2人の戦いは『乱舞 Escalation』をBGMにしたまま次回へ持ち越されるが、その引きを含めてまさしく唯一無二の大舞台、『乱舞 Escalation』どころか挿入歌という概念にとっても2つとない、奇跡の花道/ステージだったと言えるだろう。

 


〇  〇  〇

 


1位:「仮面ライダーフォーゼ」より
『Giant Step』
作詞:藤林聖子 
作曲・編曲:鳴瀬シュウヘイ 
歌:Astronauts(May'n & 椎名慶治)   

Giant Step

Giant Step

  • Astronauts
  • J-Pop
  • ¥255
 

1位は『仮面ライダーフォーゼ』から『Giant Step』

 

同曲は、3位の『Extreme Dream』や2位の『乱舞 Escalation』のような「ここぞという特定の場面において使われる真打」のような挿入歌ではなく、所謂「1stエンディングテーマ」に該当するもの。 

前二者ほどの派手さはないものの、1位に相応しい魅力を備えたこの楽曲について、順を追って語っていきたい。

 

『Giant Step』は、6話『電・撃・一・途』において、新登場したエレキステイツと共に初披露となり、その後、実質的なフォーゼ(ベース・エレキ・ファイヤーステイツ)のテーマソングとして25話『卒・業・後・髪』まで使われ続けることとなった『フォーゼ』を代表する楽曲の一つ。 

長期に渡って作品を盛り上げたことから印象的なシーンも多いが、中でも白眉と言えるのが、10話『月・下・激・突』におけるアルター・ゾディアーツとの決戦シーン。  

「野座間の全てを受け入れようとする如月の心が、ファイヤースイッチの眠れる力を呼び覚ましたのか……!」

「全てをありのまま受け入れる」というフォーゼ=如月弦太朗(福士蒼汰)の想いに救われた野座間友子(志保)が、今度は弦太朗に「炎を吸収して力に変える」というファイヤースイッチの能力を伝えることで彼を救う=「弦太朗の紡いだ友情が巡り巡ってフォーゼ自身の力となる」という逆転劇は、まさしく『フォーゼ』らしさ溢れるシチュエーション。

そんな名勝負のカタルシスを、アルター・ゾディアーツの炎を浴びながら進み続けるフォーゼ ファイヤーステイツの美しさ、そしてメロディアスな『Giant Step』のサビがこれでもかと引き立てる。「覚醒」の美しさを頭ではなく心で感じさせてくれる、作中でも屈指の名シーンと言えるだろう。

 

そんな名シーンをいくつも生み出してきた『Giant Step』を手がけるのは、椎名慶治氏とMay'n氏のユニット「Astronauts」。実力派アーティストの2人が『フォーゼ』限定でタッグを組んだスペシャルユニットだ。 

椎名慶治氏の力強い歌声は、弦太朗とその相棒、歌星賢吾(高橋 龍輝)の関係性に代表される「絆/友情」を、アニメ『マクロスF』メインヒロインの一人、シェリル・ノームのボーカル担当として高い人気を博したMay'n氏のパートは「青春」の持つ爽やかさ/切なさをそれぞれ体現しているようで、ライダー作品のために結成されたスペシャルユニットとしてはシリーズ屈指のシンクロニシティを誇っている。

 

一方、そんなAstronautsを擁する作品『仮面ライダーフォーゼ』はというと、言うまでもなく仮面ライダーシリーズ指折りの異端児。 

主人公の弦太朗は短ランリーゼントの高校生で、その舞台は彼らが通う天ノ川学園高等学校。ある種の箱庭モノとして繰り広げられる、弦太朗たち仮面ライダー部の友情・青春とゾディアーツの暗躍が火花を散らす物語……。こうして改めて設定を並べると、『フォーゼ』が大好きな今の自分でも「なんだこの作品は……」と困惑してしまったりする。

 

事実、その中身を見てみれば見てみるほど顔を出すのはイレギュラーな要素ばかり。 

例えば、メインライダーである仮面ライダーフォーゼは宇宙服がデザインモチーフ。それだけならともかく、ベースステイツのドがつくほど直球なデザインは、武器である各種モジュール共々非常にポップで、見方によっては「おもちゃっぽい」デザインと言わざるを得ない。  

続くエレキステイツも全身金ピカのスーツでモチーフが雷神と、ベースステイツとはまた違った方向性で奇抜なデザインになっていた。

 

 

更に、当然ながらその物語もシリーズ中に類を見ないもの。 

『W』などでお馴染みのお悩み相談方式がベースではあるものの、舞台が舞台なので、描かれるのは天ノ川学園高校、通称天高に通う高校生たちと弦太朗たちによる青春模様。そのため、全体的に描写・演出は「明るく楽しく痛快に」が根底にあるようで、シリアスな場面こそあれ、概ねその雰囲気は(特に当時からすると)およそ『仮面ライダー』らしいものとは思えない奇抜なものに仕上がっていた。 

これらのうち「物語」については、仮面ライダーメテオ=朔田流星(吉沢亮)の参戦などをきっかけに徐々にシリアスさを増していき、骨子として貫かれ続けた『フォーゼ』らしさとの化学反応によって唯一無二の熱く切ないストーリーが生まれていく……のだけれど、当時はそのようなことを知るはずもなく。結果、『フォーゼ』開始から間もない頃は、その斬新な作風や秀逸な脚本に唸りながらも、同作を「新しい仮面ライダー」として受け入れられない自分がいたのをよく覚えている。

 

ところが、そんな自分の『フォーゼ』観は『Giant Step』という挿入歌の登場でガラリと変わることになった。  

『Giant Step』初披露回である6話『電・撃・一・途』は、仮面ライダー部の一人ことJK(土屋シオン)の仲間入りを描いたエピソード。したたかで打算的、しかも友情に対して懐疑的という彼と、ステイツチェンジの力を秘めた暴れ馬=エレキスイッチを、弦太朗が「癖があるヤツは、捻じくれてひん曲がった部分も含めて受け入れる」ことで新たな力、エレキステイツを発現させるという『フォーゼ』の方向性を示した一本で、エレキステイツの初登場と共に華々しいデビューを飾ったのが他でもない『Giant Step』。

 

そんな『Giant Step』の最たる特徴は、爽やかで弾むような曲調の前半と、泣きメロ風味でヒロイックなサビというその切れ味鋭いギャップだろう。 

明るくフレッシュな青春物語の中に「仮面ライダー」としてのシリアスなドラマ/バトルが盛り込まれた『フォーゼ』。そんな作中の挿入歌が例えば『龍騎』の『果てなき希望』だったら、流れるや否や唐突に画面の温度が変わりすぎて風邪を引いてしまうだろうし「合わない」という悪い意味でのギャップは、むしろ視聴者の没入感を吹き飛ばしてしまいかねない。 

ところが『Giant Step』は前述のような(他のライダーには合わないような)曲調・テンポ感のおかげで、『フォーゼ』の空気感を崩さないまま自然に「仮面ライダー」としてのバトルに橋渡しするという役割を果たしているのだ。

 

更に、そのように自然な形で挿入歌が使われてしまうと弱いのがライダーファンの性。 

『Giant Step』はライダーシリーズの挿入歌では比較的珍しいタイプの曲ではあるが、サビの熱い盛り上がりは間違いなく「平成ライダーのエンディングテーマ」の系譜を継ぐもの。そんなカッコいい挿入歌をバックに戦うフォーゼは、いかにそのデザインが奇抜だろうとポップだろうとバッチリ「仮面ライダー」に見えてしまうのである。

これら2つの効果はまさしく『フォーゼ』に感じていた「欠けていたピース」を埋めるものであり、もしこの曲がそこまで狙い澄ました上でプロデュースされたものだとすれば、『Giant Step』は「作品の一部」として他の追随を許さない圧倒的な完成度を誇っていると言えるのではないだろうか。

 

事実、それまで『フォーゼ』にどこか乗り切れずにいた自分も、この曲をきっかけに一気に作品にのめりこんでしまった。 

『Giant Step』はあくまでベースステイツ、エレキステイツ、ファイヤーステイツの戦闘曲として使われていたため、強化形態であるマグネットステイツ、コズミックステイツや仮面ライダーメテオの参戦に伴いその出番が無くなってしまう。しかし、その頃にはすっかり『フォーゼ』のデザインに慣れるどころかその味が癖になっていたし、毎週繰り広げられる熱く切ないドラマに釘付けになってしまっていた。言い換えれば「『Giant Step』が流れなくなる頃には、既にその効果が必要ないところまでフォーゼ沼に漬かり切っていた」のだ。 

そういった意味で、自分が『フォーゼ』を大好きになれたのはまさしく『Giant Step』のおかげ。数多の『フォーゼ』ファンの中には、似たような経験をされている方も少なからずいるのではないだろうか。 

Giant Step

Giant Step

  • Astronauts
  • J-Pop
  • ¥255
 

また、同曲はその「歌詞」もまた大きな魅力の一つ。 

通常、仮面ライダーの挿入歌、とりわけライダーの戦闘に合わせて用いられる「エンディングテーマ」に属するものは、主に各ライダーのキャラクターソング(のようなもの)となっており、そのヒロイックな戦い/物語を歌い上げていることがほとんどだ。
ところが、ここで『Giant Step』の歌詞を見てみると……。

 

どうして震えてる 新しく変われる
スタートを前にして

見えない明日という タイトロープを歩く
イメージで躊躇してる?

落ちそうだから 下を向いたら
宇宙(そら)は見えない
無限ポシビリテ
君のことを 呼んでいるんだ!

一歩 GIANT STEP
君にとってLittle だとしても
世界には (For the new world)
未来には (For the new days)
影響は 大き過ぎるほど!
きっと GIANT STEP
1センチだって構わない
ほらなんか (今 風が) 変わったの (気付いてた?)
だから君 そのまま One more step

 

そう、この歌は厳密には「フォーゼという仮面ライダーのテーマソング」ではなく、明らかに「大きな可能性を秘めた若者たちへの応援歌」になっている。 

しかし、だからこそこの歌は「若者たちの一途な想いが世界を変えていく」様を描く『フォーゼ』とこの上ないベストマッチであるし、他ならぬ仮面ライダーフォーゼ=如月弦太朗もそんな若者の一人のため、『Giant Step』は同作の挿入歌として完璧に成り立っているのである。

 

加えて、その歌詞には若者たちの無限の可能性/未来を宇宙になぞらえた表現も多く、タイトルそのものも、人類で初めて月面に降り立った宇宙飛行士ニール・A・アームストロングの名言「人間にとっては小さな一歩だが人類にとっては偉大な一歩だ」から取られたもの。 

「若者への応援歌にオーバーラップする宇宙のエッセンス」という内容はまさしく『フォーゼ』そのもの。仮面ライダーの挿入歌らしさ」を捨てて「フォーゼの挿入歌」として特化したその在り方は、「仮面ライダーらしさをかなぐり捨てて、東日本大震災後の世界に送り出すヒーロー像として相応しいものを追求した」という同作には殊更に相応しいと言えるかもしれない。  


確かに『Giant Step』はこれまで挙げてきた『乱舞 Escalation』や『Extreme Dream』などに比べると、印象深さや爆発力では大きく劣るだろう。「仮面ライダーの挿入歌らしさ」という点でも同曲は異端児と言えるかもしれない。 

しかしこれまで述べてきたように、『Giant Step』はアーティスト・曲・歌詞、その全てが『フォーゼ』と噛み合った、裏を返せば他のライダー作品では挿入歌として成立しないほどには『フォーゼ』と切っても切り離せない楽曲だ。 

更には、この歌そのものが『フォーゼ』を「仮面ライダーシリーズ」足らしめるために無くてはならない必須パーツの一部として機能・貢献しているなど、その存在感と役割の大きさはもはや「作品内の楽曲の一つ」に留まるものではなく、『フォーゼ』を構成する一つの「核」とさえ言えるものだろう。

 

挿入歌としての圧倒的なポテンシャルとシンクロニシティ。個人的な好みは勿論入っているけれど、それを押してでも1位に相応しい突出した魅力があると感じている『Giant Step』。 

折しも今年はフォーゼ10周年、つまりは『Giant Step』の10周年! 聴いたことのある方もない方も、この記事をきっかけに改めてこの楽曲に触れて頂けたなら、こんなに嬉しいことはありません……!

 


○  ○  ○

 


以上、5位から1位までのランキングでした! 
10位~6位も含めてまとめると下記のようになります。 

10位 『Spinning Wheel』仮面ライダードライブ)
9位 『Supernova』仮面ライダーキバ
8位 『Just The Beginning』仮面ライダーウィザード)
7位 『BELIEVE YOURSELF』仮面ライダーアギト
6位 『The people with no name』仮面ライダー555

5位 『Ride the Wind』(仮面ライダーディケイド)
4位 『Revolution』仮面ライダー龍騎
3位 『Extreme Dream』仮面ライダーW
2位 『乱舞 Escalation』仮面ライダー鎧武)
1位 『Giant Step』仮面ライダーフォーゼ) 

推しの挿入歌が入っていた方、入っていなかった方……どちらもいらっしゃるかとは思いますが、しかし、これはあくまで「筆者の主観による」ランキング。 

人によってランキングそのものが変わるのは勿論、同じ挿入歌についても人によって語り口は千差万別。何が言いたいのかというと、是非これを読んでいる皆様のランキングや推し曲語りも聞かせてください……!! 

主題歌や劇中未使用のキャラクターソング、昭和ライダーに令和ライダーといった「今回触れられなかったコンテンツ」は勿論、今回ランクインしていたものについても、皆様の「自分はここが好き!」を聞くことができれば、挿入歌オタクとしてはそれだけでもこの記事を作った甲斐があるというものです!
(そしてそのような流れができたなら、放送まで間もなくとなった件の特番『仮面ライダー大投票』をより一層楽しめるのでは、などと仄かに期待していたり……)

 

それでは、またも長文にお付き合い頂きありがとうございました。また別の記事、あるいは皆様のランキング記事でお会いしましょう!   

仮面ライダー大投票』でどうか『Giant Step』がランクインしますように……!!