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全話感想『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』+『エピソードZ』 それでも僕は「トリガーが大好き」と叫びたい。

2022年7月2日、新番組『ウルトラマンデッカー』の放送を翌週に控えたこのタイミングで、『ウルトラマントリガー エピソードZ』のグランドフィナーレ上映会が行われた。



『エピソードZ』上映後に登壇したのは、マナカ ケンゴ役・寺坂頼我氏。シズマ ユナ役・豊田ルナ氏。ヒジリ アキト役・金子隼也氏、そしてウルトラマンデッカー/アスミ カナタ役・松本大輝氏。 

寺坂氏・豊田氏・金子氏3人の仲の良さもあってか、舞台挨拶は終始和やかムード。一つ一つのコメントに『トリガー』は勿論、ウルトラシリーズへの愛が溢れていた他、松本氏の天然ぶりが大きな笑いを呼んだり、サプライズとなったウルトラマンゼット/ナツカワ ハルキ役、平野宏周氏から4人へのメッセージが涙 (と困惑と笑い) を誘ったりと、まさに「グランドフィナーレ」の名に相応しい素敵なイベントでした。キャスト、スタッフの皆様、本当にありがとうございました……!


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(こちらの写真はアップロード許可済です)


と、そんな素晴らしい舞台挨拶を見ていると、自分の中でムズムズと騒ぐものがあった。 

自分はまだ、『トリガー』への愛を叫べていない、こんなにも好きな作品にお礼を言えていない……ッ! 

『トリガー』についてはこれまで4つの記事を通して自分なりの思いを発信してきましたけれど、今回はその (一旦の) 締めくくり。客観的な目線を捨てて、筆者の至極個人的な『トリガー』への愛を叫ぶ感想記事となります。『トリガー』を愛してくださった方もそうでない方も、是非お付き合いください。

 

笑顔を信じるものたちへ~PULL THE TRIGGER~

 

もはや言わずもがなではあるけれど、『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』はそれはもう凄まじい賛否両論を呼んだ作品だった。個人的な体感として『ジード』以降のニュージェネレーションシリーズは (『Z』を除いて) いずれも賛否両論の中にある作品だったけれど、『トリガー』の台風の目っぷりは群を抜いたものだったように思う。 

かくいう筆者も『トリガー』には清濁併せ持った複雑な気持ちを持っており、第3話の放映前には『トリガー』への期待と不安で頭がぐちゃぐちゃ、毎週のように土曜日朝9時半は「どうして…………」とうなだれ、今後の心配ばかりしていた。

 

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(2話時点での『トリガー』感想をまとめた記事がこちら。こんな記事を書いてしまうくらいには、既に同作への感情が凄まじかった)


けれど、その時点で既に「自分、トリガーめっちゃ好きかもしれん……」という思いが多分にあったのもまた事実。その理由は至ってシンプルに「好み」だったことで、そんな好みが特に詰まっていたのが、第1話『光を繋ぐもの』。

 

 

火星という「旧作ファンへの目配せ」と「新鮮なビジュアル」を両立させてくれる舞台。伏線をこれでもかと散りばめられた「縦軸に期待させてくれる」ドラマパート、初回ではOP主題歌『Trigger』が使われず、あくまで「挿入歌」として初お披露目される粋な演出、「ゼペリオンソードフィニッシュ→サークルアームズを突き立ててゼペリオン光線→人形爆破」というあまりにカッコいい初戦クライマックス……。正直、これらの演出があまりにも好みで、歴代ウルトラシリーズの中でも好きな1話を挙げるなら上位に食い込んでくる一本だ。

 

そこからの第2話~第5話は、凄まじい画が連続したりガッツウイングの登場が話題になったりしたものの、ドラマ面で盛り上がりに欠けたこともあり (後々書籍で明かされた製作事情に鑑みると、“そんな無茶な状況でよくここまでやってくれた” という気持ちになってしまうけれど) 、些か「ノレない」状況が続いていた。総集編が挟まったことや、この時期に池袋で開催されたイベント『ウルトラヒーローズEXPO サマーフェスティバル』のライブステージが歴代でも間違いなく上位に食い込む素晴らしい出来映えだったこともあり、本編への不安は高まるばかりだった。 

ところが、そんな悪い流れは第6話『一時間の悪魔』にて一変する。

 

 

あのギガデロスがヒュドラムに改造されたというかなり重めの背景を持つ強敵、サタンデロスに対し、イグニスとGUTS-SELECTが共同戦線でこれを撃破する……という、特撮ドラマらしいカタルシスに溢れた一本。本話ではイグニスの過去が一部明かされたり、イグニスがケンゴの正体を知った上で彼に接触したりとドラマ的な進展もあったが、それ以上に心を掴まれたのが、武居監督 (『デッカー』のメイン監督!) 渾身のフィニッシュシーン。 

トリガーがランバルトアローストライクでサタンデロスを足止めし、そこに同時攻撃を叩き込むナースデッセイ号とガッツファルコン。そして、続け様にランバルト光弾でヒュドラムを撃退するトリガー……! この一連は、「ウルトラマンが防衛隊のアシストを担う」「防衛隊がウルトラマンでも敵わない強敵を倒す」「あまりに美しい、ランバルト光弾振り向き撃ち→オープンセット爆発」と、シチュエーションも画も完璧揃いで、今尚話題に挙がりやすい『トリガー』屈指の人気エピソードだ。

 

 

続く第7話『インター・ユニバース』そして第8話『繁殖する侵略』は、パワードダダの復活に我らがウルトラマンゼット&ハルキの客演といった諸々のパーツが程よく噛み合い、『続・ウルトラマンZ』とでも呼ぶべき魅力的な前後編を展開。田口監督特有の圧倒的なバランスの良さを見せ付け、今後の『トリガー』のハードルを猛烈に高めていった……のだけれど、第9話『あの日の翼』はそれをしっかりと飛び越えるものを見せてくれた。

 

 

ようやくティガ世界 (ネオフロンティアスペース) との繋がりが明かされたが、むしろ見所だったのは「ミツクニのガッツウイングとトリガーとの共闘」や「後にも先にも越えるもののない、ダントツでカッコいいゼペリオンソードフィニッシュ」といったシーンのカタルシス。続く第10話『揺れるココロ』は (ダーゴンが上滑りしているという図が演出意図通りだということを踏まえても) 好意的な見方が難しいシーンも多かったが、ユナとアキトを守るダーゴンの武人としての誇りや、変身怪獣らしい活躍を見せてくれるザラガス、デラシウム光流でのフィニッシュを用意してくれるという気配りなど魅力的なシーンも多いエピソードだった。

 

 

そんな、トリガーが徐々に「ノッてきた」段階で迎えた中盤の盛り上がり回が、第11話『光と闇の邂逅』第12話『三千万年の奇跡』。 

ケンゴが何者なのか、3000万年前に一体何があったのか……という『トリガー』の根幹に関わる情報を明かす重要エピソードだが、その異様なまでの分かり辛さから、同作の批判では何かと槍玉に挙がりやすい本作だが、個人的にはこのエピソードが今後の『トリガー』への期待を一気に高めてくれた立役者でもある。

 

 

至極個人的な話になるけれど、筆者は「こちらの想像を飛び越えてくれる」作品がとても好きで、そういった「飛躍/突出」があれば、たとえ作品として他に見劣りする点があったとしても気にならず、むしろ大好きになってしまうところがある。筆者がシリーズの中でも『帰ってきたウルトラマン』や『ウルトラマンダイナ』『ウルトラマンジード』などに魅せられてしまったのは恐らくその点が大きい。 

(自分自身の好みというのもあるし、最新作がそういう展開を見せてくれると「シリーズの可能性が広がる」という点で2倍嬉しい)

 

それは『トリガー』も同じで、自分自身のそういう嗜好を痛感したのがこの前後編だった。 

そもそも、「ケンゴ自身がタイムスリップして3000万年前の真実を目にする」ばかりか、そのケンゴ自身がトリガー転生の「引き金」だった、というプロットがあまりにも素晴らしい。更にはケンゴの正体が「ウルトラマントリガーそのもの」であることも明かされてしまう……と、本エピソードで描かれる展開はいずれもウルトラマンでは見たこともない「突き抜けた」もので、まさしく筆者がウルトラシリーズへの外部ライター参戦を待ち望んでしまう理由そのもの。 

そうそう、これ (想像を越えた展開) が見たかったんだ……! と、今でこそネタ台詞として扱われがちな「君は、僕だったんだね」の台詞も初めて聞いた時は思わず涙ぐんでしまったほどで、『Trigger』のオーケストラ風アレンジをBGMにしたグリッタートリガーエタニティへの初変身や、その「制御しきれない強大な力」という演出も含め、非常に好みの前後編になっていた。 

……いや、まあ、結局その展開やタイムパラドックスの真実が本編でちゃんと言及されないとか、カルミラの呪術でタイムスリップするのは無理があるだろうとか、見れば見るほど問題点だらけでもあるんですけどね、この前後編は……!

 

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(批判込みの批評や、テーマや物語などの分析・考察はこちらの記事からどうぞ。本記事で言及する「総括記事」はこれのことです!)

 

そんな良くも悪くも突き抜けた脚本へのコメントは上記の総括記事に任せるとして、ここからは第2クール目について。 

この辺りから『トリガー』のスタッフはこの独特な作品の描き方を「掴んだ」らしく、話がクライマックスに向けて動き出すことと併せて、作品の熱量がグングンと右肩上がりになっていく。 

一件コメディタッチの総集編のようでいて、トリガー過去編の整理という重要な役割を持つ第13話『マルゥル探偵の事件簿』を挟みつつ始まった2クール目。その中でもお気に入りのエピソードが、第14話『黄金の脅威』第15話『オペレーションドラゴン』の前後編だ。

 

 

本エピソードは「グリッタートリガーエタニティの習得」「ウルトラマンリブットの参戦」「ナースデッセイ号のバトルモード起動」という重すぎる3つのトピックを見事に捌ききった脚本が光る名編で、特に、グリッタートリガーエタニティを習得させるためにリブットが取った手段が「ダンスを通して邪念を振り払い、精神世界で己を見つめ直させる」ことという展開は見事の一言。一見するとおちゃらけた展開のようにも見えるが、それこそが「ただ強くなるだけでは ”皆を笑顔にする” ことはできない」ことを体現しているだけでなく、ケンゴの一連の葛藤と気付きが本作の根幹となる「光と闇の融和」にも深く関わる……と、シリーズ構成として、脚本家としての足木氏の手腕が如何なく発揮されていた。こんなにも有機的にストーリーに組み込まれたダンスシーン、見たことない……!!

 

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(第15話『オペレーションドラゴン』最大の魅力はこちらの記事からどうぞ)

 

他にもこの前後編は数多くの魅力に溢れているが、その魅力は悉くが「ティガ要素」からは遠く離れたもの。そう、『トリガー』の2クール目とは、トリガーが自身の『NEW GENERATION TIGA』とは異なるアイデンティティー/魅力を物凄いスピードで打ち立てていく時期でもある。 

その魅力を象徴するのが、本作の影の主人公であり、サブキャラクターから闇の巨人に、闇の巨人から主人公格に昇格するというあまりに稀有なシンデレラストーリーを紡いだ存在、リシュリア星人イグニスだ。

 

 

何より絶妙なのは、彼が手に入れた力が「トリガーダーク」であるという点。 

イグニスは、一見するとGUTS-SELECTの味方のようであるが、その実ヒュドラムへの復讐手段を獲得するために利用し続けていた……と、ただでさえ不明瞭なポジションであっただけでなく、彼の変身するトリガーダークもまた「闇の巨人」とも「ウルトラマン」とも取れる存在。味方になるのかならないのか、生き抜くのか死んでしまうのか、ここまで先行きの見えないウルトラマンは、個人的には『ガイア』のウルトラマンアグル以来か、ともすればシリーズ初とさえ言えるものだった。 

(トリガーダークという、登場が予期されていたキャラクターをこういった形で活用するのは、個人的にはとても好きなタイプの “予想の裏切り” )

 

イグニス/トリガーダークのポジションや動向は様々な場所で話題になっており、TSUBURAYA IMAGINATION 独占配信番組『尊哉の部屋』のイグニス役・細貝圭氏登壇回においては、「トリガーダークはウルトラマンなのかどうか」という点で、ウルトラマンとして認識しており、家族に報告までしてしまった」細貝氏、「細貝氏をウルトラマンにしたくない」パーソナリティの青柳尊哉氏、「ティガオタクとしての見地から冷徹な意見 (トリガーダークは闇の巨人枠) を出す」小池亮介氏と盛大に意見が割れる (面白すぎる) 一幕があるなど、「イグニス/トリガーダークがどのようなポジションに落ち着くのか」というのは大きな語り草であり、2クール目の大きな目玉となっていた。

 

 

そんなトリガーダーク (イグニス) のデビューは第16話『嗤う滅亡』第17話『怒る饗宴』の前後編。詳しくは総括記事に譲るが、越監督の手腕が大いに発揮された見せ場だらけの大特撮編で、ストーリー面においても「復讐の為に手にした力を “人々を見捨てられない” が故に使ってしまう」イグニスや、トリガーを守るGUTS-SELECTの姿に強さを見るダーゴンなど、今後の布石が数多く散りばめられた名編と言えるだろう。
(個人的には、グリッタートリガーエタニティの二刀流エタニティパニッシュも大興奮だった……!)

 

『トリガー』において個人的に大きな魅力を感じているのは、「単発のエピソードの中に縦軸の要素を散りばめる」ことが非常に上手い点。2クール目はその共存ぶりが顕著で、前述の第14~17話はそういった意味でもお気に入りのエピソード群だ。 

続くエピソードでもそれは継続しており、第18話『スマイル作戦第一号』、第19話『救世主の資格』では、キリエロイドとウルトラマンティガの参戦という一大イベントを展開しながらも、闇の巨人内の亀裂や「カルミラの笑顔」という重要なトピックに言及したり、第20話『青いアイツは電撃と共に』では、イグニスと、彼が当初「ユザレの器」としてのみ価値を見出だしていたユナとの和解が描かれていた。 

情報量が非常に多く、捌ききれていないことも否定できない『トリガー』だが、こういった点に力を尽くしているからこそクライマックスの盛り上がりが実現したのだろうし、そのような尽力が作品から伝わってくるからこそ、自分は『トリガー』が好きなのだろうな、とも思えてならない。

 

 

そして、そんな『トリガー』の中でも愛してやまないのが、ここから始まる最終5部作 (『Z』のように明言された訳ではないものの、エピソードの繋がり方や「闇の巨人との決戦編」であることから、そのように見ても間違いではないと思う) だ。

 

 

第21話『悪魔がふたたび』は、史上初となるアボラス・バニラのタッグマッチや「バニラがウルトラマンと戦う」点が大きな話題となっていたけれど、『トリガー』の中でもアキトとイグニスに注目していた筆者としては、そんな2人の和解→アキトの助力でトリガーダークの制御が可能になる (ここでイグニスが自分の心の闇を制御する、という展開を挟まないのが、本作においてはむしろ肝と言えるポイント) という展開はまさにご褒美で、キャラクターソングである『Hunt In The DARK』を引っ提げ、遂にトリガーと共闘するトリガーダークの姿にはもはや感動さえあった。 

しかし、そんなトリガーダーク(イグニス)の本領が発揮されるのはその戦闘後、ケンゴ・アキト・ユナを見送りつつ、思い詰めた表情で変身すると、なんとユナを拐ってしまうトリガーダーク。

とんでもなく動揺したのは勿論だけれど、それ以上にイグニスが「どこまでが嘘で、どこまでが本心なのか分からない」というトリックスターぶりを最後の最後まで貫いてくれることや、この最終局面で『トリガー』が大いに盛り上がってくれることを予感させてくれる展開が何より嬉しくて震えてしまった。

 

 

そこからはもう、個人的には全て「神回」と言えるエピソード。特に、啖呵を切った第22話『ラストゲーム』と、続く第23話『マイフレンド』はウルトラシリーズ中でも屈指と言えるお気に入りのエピソードで、この2編については是非総括記事を参照されたいが、敢えて言いたいのは、その魅力はこれまで『トリガー』が積み重ねてきたキャラクターたちの魅力があればこそ、ということ。  

ケンゴ、アキト、ユナ、イグニス、ダーゴン、ヒュドラム……といった面々の物語があったからこそ、それぞれのクライマックスは勿論、イグニスのユナに対する「怖く……ないのか?」という問いかけ (第22話) や、ダーゴンを説得するケンゴ・ユナ・アキト (第23話) といった、些細な会話シーン一つ一つにどこまでもグッと来てしまう。この2編はどちらも号泣してしまったエピソードなのだけれど、その理由は、それだけ『トリガー』のキャラクターたちが魅力的で、自分自身の彼らへの愛着もまた凄まじいものになっていて、その上で、彼らの魅力を最大限に見せてくれる素晴らしいシナリオ・演出が冴え渡っていたからだろう。

 

この2編があまりにも素晴らしい傑作だったので、残るカルミラとの決着戦、第24話『闇の支配者』と最終回『笑顔を信じるものたちへ 〜PULL THE TRIGGER〜』の前後編への期待値、もといハードルは凄まじいことになっていたけれど、案ずるなかれと言わんばかりに大いに盛り上がるものを見せてくれた。 

物語の軸はカルミラとケンゴの顛末であり、その決着の素晴らしさについては (如何せん話が長くなってしまうので) 前述の総括記事に譲りたいところだが、この前後編ではケンゴ/トリガーとイグニス/トリガーダークの共闘ぶりも大きなトピックだ。

 

 

第24話において、かつてのユザレと同じように自己犠牲を選ぼうとするユナ。これまで強く在り続けたユナが、死を目前にして初めて「ユザレ……。貴女は、死が怖くなかったの?」と涙を流すと、そこに駆けつけ、間一髪で彼女を止めるアキトのカッコよさたるや……! そして、

 

「大丈夫だユナ。この世界にはGUTS-SELECTの仲間がいる、ケンゴがいる、俺がいる。それに……」

「“俺がいる” ってかァ!?」

 

という、あまりにも最高でズルくて美味しい台詞泥棒をしながら参戦するトリガーダーク!!そういうところだぞイグニス……!! 

世界のために、などという理由ではなく「俺は宇宙一のトレジャーハンターだ、ゴクジョーのユナは傷付けさせないぜ!」という、本心とも照れ隠しとも取れる台詞と共にトリガーと肩を並べるトリガーダーク。ここで『Trigger』のオーケストラ風アレンジが流れ始め、満を持して真に分かり合った2人の熱いタッグマッチが描かれるばかりか、そのフィニッシュはなんとグリッターゼペリオン光線とダークゼペリオン光線の同時発射!トリガーダークという特異なキャラクターと、光と闇の融和という作風があったからこそ実現した、まさに『トリガー』ならではの魅力が爆発した名シーンと言えるだろう。 

その後、第24話ラストにおいては遂に待望の同時変身を披露。初期からのレギュラーでありながら、このド終盤まで「真の共闘」も「同時変身」も引っ張ることで凄まじいカタルシスを実現させたスタッフの心意気には惜しみ無い拍手を送りたくなったけれど、まさかこの先にそれを越えかねないカタルシスが待っているとは予想だにしていなかった。 

そう、トリガートゥルースの登場である。

 

 

ウルトラマンタロウの参戦にギンガエスペシャリー、コスモミラクエスペシャリー、ハイブリッドアーマー、オリジウムギャラクシス、ジープルーフ、シン・ボルテックバスター、クワトロスクワッドブラスター、特空機集結にゼスティウム光線 (オリジナル)  ……と、平成ウルトラではままあれど、ニュージェネレーションシリーズではもはや恒例となっていた「最終回のスペシャル演出/形態」だけれど、『トリガー』については、グリッタートリガーもトリガーダークとの共闘・合体技もティガの参戦も、切れるカードは全部使ってしまったのでは……? と思っていたため、「トリガーを真の姿に戻す」という一言には思わず全身の毛が逆立った。 

見たことのない景色、見せてくれるのか……? と期待しつつも、いやいや真のトリガーって言ったってエフェクトがかかってるマルチタイプかトリガーダークでしょ……と全力でハードルを下げていた。しかし、イグニスがケンゴにトリガーダークの力を返すと、そこには見たこともないキーが……!

 

 

やって……やってくれるのか……!? 本当に……!?

 

「必ず勝てよ、ウルトラマントリガー」

 

という、『ティガ』最終章のイルマ隊長を思わせるイグニスの熱いエールを背に、ナースデッセイ号から飛び降りるケンゴ。そして出現する未知のウルトラマン、トリガートゥルース!!

 

 

端的に言って、これ以上なく「好き」が炸裂していた。 

光の化身であるケンゴが「落ちながら」「カルミラと対等になるべく闇の力を持つ姿に変身する」のはまさしく堕天であるとか、ケンゴのポーズがそのまま変身バンクに繋がるのが上手いだとか、そんな細かいことが考えられないくらいに大興奮して発狂していた。 

『トリガー』が、確かなテーマと共に「グリッターティガとは異なる答え」を出してくれたこと、悪魔的なデザインの最終形態という概念の魅力と、そのデザインの素晴らしさ、トリガートゥルースという名前の良さ、最終回限定形態なのに変身バンクが新規で作られた感動、そして何より、専用BGMのカッコよさ……!! 一斉に押し寄せてくる「ド好みの要素」の濁流にただただ飲み込まれて奇声を発していたのをよく覚えている。 

だからこそ、その後に「子どもたちの光を受けてトリガーが復活し、ミツクニがそこにグリッターティガを見る」というのは、せっかくトリガーが独自の道を歩んだのに……というモヤモヤを感じてしまったけれど、それでも、フィニッシュを「ナースデッセイ号 (アキト) 、エタニティコア (ユナ) 、GUTS-SELECTの全てを結集したトゥルータイマーフラッシュ」という最高の形で決めてくれたこと、そして、カルミラとの物語を「ケンゴは光であり、人であり、そして闇でもある」という視点で美しく締め括ってくれたこと……。それら含めて、何から何まで「好き」尽くしの最終回だった。確かに、決して出来が良いとは言えないかもしれないけれど、それでも「ならでは」の爆発力や熱さ、テーマ性を持った素敵な作品、それが『トリガー』だと、最終回を見て自分は深く深く確信していた。

 

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それから約3ヶ月が経ち、『トリガー』の最終章にあたる作品『ウルトラマントリガー エピソードZ』がTSUBURAYA IMAGINATION、そして全国劇場にて公開された。

 

初見での感想は上記記事の通りで、そのあまりにも極端な一長一短ぶりはある種『トリガー』らしいなと感じたものの、『ウルトラマンZ』も好きなファンとして納得できない部分が大きかったり、基本的に右肩上がりだった『トリガー』にはもっと綺麗に有終の美を飾ってほしかった……という思いもあった。 

けれど「そんな不満を押し退けてしまうくらい素晴らしい部分が大きかった」というその出来映えのは、やはり『トリガー』に魅せられたファンとして非常に嬉しいところで。

 

 

そんな「素晴らしさ」が詰まっていたのは主に終盤。 

まずは何より、遂に正体を表したトキオカ隊長、もとい、超古代人の科学者ザビル。皆の笑顔の為に戦ったケンゴに対し、ユザレの笑顔の為に戦った青年であり、トリガーが光の戦士に転生したことが遠因で闇に心を落としてしまった……と、まさにケンゴの影として作られた存在であるザビル。そんな彼のキャラクター造形は、まさに『ティガ』のティガ/ダイゴに対するイーヴィルティガ/マサキ・ケイゴのそれであり、「設定はなぞるが中身は別物/無関係」というパターンのティガオマージュが多かった『トリガー』において、最も「NEW GENERATION TIGA」という副題が似合うキャラクターと言えただろう。
(ケンゴとアキトが2人でバリアを突破し、ガッツスパークレンスを取り戻すという展開も、ザビルよろしく秀逸な “NEW GENERATION TIGA” だったように思う)

 

けれど、この『エピソードZ』における個人的な白眉はその後のシーン。

 

イーヴィルトリガー、そしてデストルドスを前に苦戦を強いられるトリガー、トリガーダーク、ゼットの前に駆け付けるGUTS-SELECTの面々。ナースデッセイやガッツファルコンを失って尚一歩も引かないGUTS-SELECTの姿と、アキトの「お前が皆を笑顔にするなら、俺たちがお前を笑顔にしてやる!」という叫びに、ケンゴは作中序盤でトキオカに投げ掛けられた問いの答えを悟る。

 

「なぜ、トリガーは僕を人の形で生み出したのか……」
「どんな強い光も一人じゃ輝けないんだ!誰かが側にいてくれないと……!」
「だから、僕は人間として生まれた! ……ウルトラマンになれるだけの、ただの人間なんだぁーーーっ!!」

 

「人には光と闇の両方があり、無理に闇を捨てる必要も、自分を犠牲にしてまで光であろうとする必要もない」というメッセージを放った『トリガー』。そのメッセージの先にあるもの=「“人” が光と闇の同居した存在であるならば、ケンゴが人として転生した意味 / 人が人である意味とは何なのか」という命題への答えを示したのが、この台詞の真髄と言えるだろう。 

弱くてもいい、けれども、だからこそ人は手を繋がなければいけない。繋がり合い、絆を結ぶことで、たとえ各々が不完全だとしてもそれを補い合い、ウルトラマンさえ越えるほどに強く輝くことができるのだと。

 

『人が人を想い、繋がり合おうとする心。その絆が天と地とを繋ぐ光なんだ。その光とユナイトするからこそ、私たちは “光の巨人” と呼ばれるんだ……!』

 

『劇場版 ウルトラマンX きたぞ!われらのウルトラマン』におけるエックスの台詞でも示された、ウルトラシリーズを貫く「人と人との絆こそが光」というテーマ。  

『エピソードZ』はそのテーマを『トリガー』の文脈に乗せつつ、未回収の謎と掛け合わせた上でストーリーのカタルシスに繋げるという離れ業を実現してみせた。このテーマに心を打たれ続け、更に上記の台詞をシリーズ中でも指折りに推している身としては、もうこれだけでも拍手喝采号泣必至なのだけれど、このシーンの感動は武居監督の名演出で何乗にも膨れ上がっていく。 

何より明らかなのは、このシーンのBGMに『トリガー』後期ED主題歌『明日見る者たち』を採用するという神懸かった采配と、その見事な挿入タイミング。

 

明日見る者たち

明日見る者たち

  • マナカ ケンゴ (寺坂頼我)、シズマ ユナ (豊田ルナ)、ヒジリ アキト (金子隼也)
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

近年のウルトラシリーズとしては珍しい静謐なメロディと、激しく打ち込まれるサビのギャップが魅力的な同曲は、なんとケンゴ・ユナ・アキトの3人が歌うキャラクターソング。シリアスな展開が続く2クール目にピッタリで、第23話『マイフレンド』におけるアキトとダーゴンの決着を彩ったことでも名高い名曲だ。 

そのイントロが、ケンゴの「なぜ、トリガーは僕を人の形で生み出したのか……」という台詞に合わせて流れ出し、「だから、僕は人間として生まれた!……ウルトラマンになれるだけの、ただの人間なんだぁーーーっ!!」という叫びと共にサビに入る。この圧倒的な盛り上がりに追い打ちをかけるように、ユナの「行って、ケンゴの元へ……! 笑顔を届けて!」という台詞が響き、その光を受け取ったトリガーはグリッタートリガーエタニティへの進化を果たす。 

本編ではあくまで「エタニティコアの力を得た形態」であり、グリッターの名には些か釣り合わない向きもあったグリッタートリガーエタニティ。『エピソードZ』でもその本質は同じなのだけれど、「仲間たちの想いを受けたケンゴの成長・覚醒」と同時に進化するという演出もあり、心なしか、このグリッタートリガーエタニティはグリッターティガと同じ「人々の光を宿した最強の姿」とも、トゥルースと並ぶ「トリガー最強の姿」とも見て取れてしまう。第15話でグリッタートリガーエタニティに惚れ込んだ身としては、この上なく嬉しい「面目躍如」ぶりであったし、そんな進化シーンを素晴らしいものにしてくれたケンゴ役・寺坂頼我氏、そしてユナ役・豊田ルナ氏の名演ぶりには本当に頭が下がる思いだ。

 

 


「自分の好きな作品が、世間的には受け入れられていない」ということの辛さを、筆者はこの『トリガー』を通して初めて真に実感したように思う。 

前述のように『トリガー』は決して出来の良い作品と手放しに褒められるような作品ではないし、筆者自身、その「ダメな点」は徹底的に洗い出し、目を逸らさないように心がけてきた。けれど、そこまで分かっていても、それでも自分は『トリガー』が本当に好きなのだ。その理由は、ここまで読んでくださった方ならば少なからず理解してくださったと思いたい。 

好きな理由というのはそれはそれで言語化が難しいもので、筆者自身も、果たして一連の記事でどこまでそれを形にできているのか不安でしょうがない。それでも、もしこれらの記事が「トリガーのことが大好き」な誰かの支えになったり、『トリガー』が肌に合わなかった方にその魅力を伝える一助になるのであれば、それに勝る喜びはありません。 

本当なら、『トリガー』という作品を知るにあたって避けては通れない舞台作品『NEW GENERATION THE LIVE ウルトラマントリガー編 STAGE4 -僕らが咲かす花-』(2022年6月まで各地で公演)についても触れたかったのだけれど、今回はあくまで『トリガー』本編に限った話として筆を置きたい。

 


しかし、まだまだ『トリガー』は終わらない。今は『ウルトラマンデッカー』で待っているケンゴ・ユナ・アキトとの再会に思いを馳せつつ、トリガーからデッカーへのバトンタッチを見守っていたい。どうか、新たなる光『ウルトラマンデッカー』が、トリガーが明るく照らしてくれた世界をより熱く、ダイナミックに輝かせてくれる作品でありますように……!

 

最後に、非常に厳しい製作状況の中、本作『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』を作ってくださったスタッフ・キャストの皆様、素晴らしい作品に出会わせて頂き、そしてたくさんの笑顔を頂き、心から感謝申し上げます。本当にお疲れ様でした、素敵な一年をありがとうございました!