感想『アイカツスターズ! 98話』 心に従い次代を拓く「ゆずっとリリィ☆」の輝きと「フレンズ」の萌芽

アイカツスターズ!』が放送されたのは2016年4月~2018年3月。自分が同作を視聴したのは2022年11月~2023年10月。これだけの時間差があるのに、なぜか市場にはアイカツスターズ!縁の新製品が溢れており、その一つがこちらの「アイカツスターズ!キャラナップコレクション」だ。 

 

後追いオタクは新品のグッズを買えないのが辛い、と度々言っていた中での「コレ」である。当然、半ば反射的に「ブロマイドみたいなもんやろ!」などと軽い気持ちで購入してしまったのだけれど、いざ届いた現物は「本物のチェキフィルムにプリントされ、保護カバーの上から各アイドルのサインが書かれている」という見たことも手にしたこともない代物。チェキという「実在のアイドルでしかあり得ないグッズ」によって、逆説的にゆめたち架空のアイドルの「実在感」を高めるという、極めて剛腕かつクレバーなグッズだった。  

 

普通のブロマイドとは異なる豪華な仕様や写真風味の透明感・立体感、そして何よりその圧倒的な「本物感」に自分はすっかり惚れ込んでしまったのだけれど、このキャラナップコレクションにおけるもう一つの「グッと来る」ポイントが「ゆめ、ローラ、小春、真昼、あこ」の5人に加えて、ゆめと「ローラの」私服バージョン、ひめ、そしてリリィというラインナップ。  

ローラを主人公として、ひめを作品の核として、そしてリリィを「メインキャラクターとして」扱ってくれていることに「キャラクターそれぞれへの愛情」が垣間見えて、そのことが、このグッズを見てたまらなく幸せになれる要因の一つなんだろうと思う。

 

一方、それは『アイカツスターズ!』という作品そのものにも言えること。実質的な最終回=96話を経た後の、正真正銘のラストスパートにおいて尚ゆずリリ回があることは全くの「予想外」だったけれど、その内容は、このタイミングで描かれるに相応しい「ゆずとリリィへの祝福」そして、「『アイカツスターズ!』の本懐」と呼んで差し支えないものとなっていた。 

ゆずとリリィ、本作の中でも特にハードな宿命を背負っていた2人が辿り着いたゴールがどのようなものだったのか、そして「なぜこのタイミングで2人のエピソードが描かれたのか」を振り返っていきたい。

 

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(第97話以前の感想は、こちらの記事か『アイカツスターズ!』タグからどうぞ!)

 

《目次》

 

 

88話が「フィナーレ」でなかった理由 - 2人の小さなすれ違い

 

第97話『Bon Bon Voyage!』においてヴィーナスアークのフィナーレが描かれたことで、自分は「残る3話で何が描かれるか」について「ゆめVSひめ」と「小春VS真昼」を確定枠としつつ、「ローラ or あこVSツバサ」か「ゆめVSローラの最終決戦」のどちらかが来るだろうと予想していた。ところが、いざ蓋を開けてみれば、ほぼ確定と考えていた小春VS真昼は勝敗とその後の会話のみが描かれ (ここについては、後に感想記事とは別枠で触れる場を用意する予定) 、代わりに描かれたのがまさかの「ゆず&リリィ」だった。

 

 

ここに来て「ゆずリリ回」が来ることが全く予想できなかったことに「本当にアイカツスターズ!のオタクか!?」とツッコまれたら返す言葉がないのだけれど、当時のファンもこればかりは予想できなかったんじゃなかろうか。何せ、ゆずリリについては第88話『お正月だゾ☆全員集合!』があまりに美しいフィナーレだったように思えてならないのだ。

 

「やっぱり、ゆずは眩しすぎます……。私は教師失格ですね」
「そんなことありません。リリ子先生は、ぼくと違って国語が得意じゃないですか。お互い足りない部分を補い合って、生徒のみんなを指導していけばいいんですよ」
「……! そうですね、誰にだって得意なものと苦手なものがある……。それを補い合うことが、大事なのかもしれませんね」

-「アイカツスターズ!」 第88話『お正月だゾ☆全員集合!』より

 

第42話では、リリィのことを「色白の美人さん」で「自分にとっての太陽」だと語っていたゆずだが、本当に「見た目」だけがその理由だったのだろうか。 

前述の通り、おそらく「周囲からの期待」に応えられない自分にコンプレックスを持っていたであろうゆず。そんな彼女から見て、大きなハンデを持ちながらも「周囲からの期待」に応え続けている尊敬すべき人物でありながら、「普通じゃない」自分を友人として慕ってくれるリリィは、ゆずの孤独を癒やし、その道行きを暖かく照らしてくれる、文字通りの「太陽」だったのだろうと思う。 

ゆずが「ゆず男」としてリリィに告げた上記の台詞は、きっと役を被っている状態だからこそ真っ直ぐに言えたゆずの本心。ゆずがリリィとの日々から貰った「足りない部分があっても、誰かと補い合って生きていけばいい」という希望をリリィに手渡す、彼女なりの「恩返し」だったのかもしれない。

引用:感想『アイカツスターズ! 87~89話』 5人の輝きと “二階堂ゆずの真実” に魂が震える、笑いと涙の「スターズ!」流年末年始 - れんとのオタ活アーカイブ

 

「ゆめたち5人から一歩退いた」立ち位置だからか、『アイカツスターズ!』のキーワードである「個性」の負の側面を背負っていたゆずとリリィ。その物語は「誰もが誰かの太陽になれる」「足りない部分があるなら、誰かとそれを補い合っていけばいい」という、極めてストレートで、だからこそ力強い「多様性の肯定」を打ち出した。それは、「どんなに当人にとってコンプレックスだったとしても “自分らしさ” を大切にしてほしい」という『アイカツスターズ!』からのエールに思えたし、だからこそ、それが本作における2人のフィナーレだと思い込んでいた。これから2人はずっと2人で歩んでいくのだろうし、本作においてこれ以上の「ターニングポイント」は訪れないだろう、と。しかし。

 

「ねぇねぇ、リリエンヌは卒業したらどうするの?」
「私は、四ツ星学園の高等部に進学致します。中等部では、夢をいくつも叶えることができました……。これからは、支えてくれた方々に感謝しながら、高等部で精進していきたいと思います」
「高等部なら近いですし、これからも会えますね!」
「んっ? じゃあ、卒業後は……」
「お別れです」
「えっ」
「ゆずは、心躍るような楽しいアイカツをしたいんですよね」
「う……うん」
「夢は人それぞれ。夢を叶える為に、旅立たなければならないこともある……。ローラさんのように」
「……!」
「分かりますね?」
「……うん」
「ならば行くべきです。貴女は、世界中から求められているアイドルなのですから」
「うん。……ありがとう」

-「アイカツスターズ!」 第98話『ゆずっとリリィ☆』より

 

卒業と「S4三連覇」という偉業の達成により、世界から無数のスカウトが届くゆず。そんなゆずを動じることなく送り出すリリィの姿には「補い合って生きていくんじゃなかったのか……ッ!!」と思ってしまったけれど、冷静に考えてみると、このリリィの行動は88話をしっかりと踏まえたからこそのものなのだ。 

一つは「87話以前のリリィでは、こんなにも毅然とゆずを送り出せなかっただろう」ということ。彼女はきっと、88話で「ハンデを背負った自分自身」を受け入れられたからこそ、これからは自分の足で、ゆずに心配をかけることなく立っていける――と、ゆずを送り出す「覚悟」を決められるだけの強さを手に入れてしまったのではないだろうか。 

そしてもう一つは「リリィに対して、ゆずの気持ちが十分に伝わっていないのでは」ということ。

 

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詳しくはこの記事に譲るけれど、ゆずは「自分にとってなぜリリィが太陽なのか」その本心を今もって明言していない節がある。

 

「やっぱり、ゆずは眩しすぎます……。私は教師失格ですね」
「そんなことありません。リリ子先生は、ぼくと違って国語が得意じゃないですか。お互い足りない部分を補い合って、生徒のみんなを指導していけばいいんですよ」
「……! そうですね、誰にだって得意なものと苦手なものがある……。それを補い合うことが、大事なのかもしれませんね」

-「アイカツスターズ!」 第88話『お正月だゾ☆全員集合!』より

 

前述のこの台詞についても、ゆずの事情・心情を知る第三者には「役を被ったことによる本心の吐露=実質的なプロポーズのようにさえ思えてしまう (※個人の見解です) けれど、リリィから見たゆずは「自分がいない方が輝ける」存在。その状況で、よりによって「役を被っている」状態のゆずからこの台詞を言われてもその真意までは届かなかったのかもしれない。結果、リリィはこの時点で尚「ゆずにとって自分がどれほど大切な存在なのか」を理解しきれておらず、だからこそ「ゆずの想いを受けて自立し、彼女を世界へ送り出すことこそが一番の恩返し」だと考えてしまったのではないだろうか。

 

 

が、そうなると問題は「リリエンヌに別れを宣告されてしまった」ゆず。 

ゆずが世界に旅立つことを予見し、覚悟を決めていたであろうリリィに対し、ゆずは (お別れです、と言われた際のリアクションからして) リリィとの別れを想定さえしていなかった様子。おそらく、ゆずにとっては「リリィが自分と離れる道を選ぶ」ことも、リリィが自分に対して未だ罪悪感を持っていることも、則ち「リリィに自分の真意が伝わっていなかったこと」も、そのどれもが大きなショックだったのかもしれない。 

けれど、人生――アイドルとして生きる道なら殊更――に別れは付き物。「夢は人それぞれ。夢を叶える為に、旅立たなければならないこともある……。ローラさんのように」というリリィの言葉を受けて、自分も「ゆずはこの別れをどう受け入れるのだろう」と、2人が別れる前提で見てしまっていたし、よもやその前提が根本からひっくり返されるなどとは正直思ってもいなかった。

 

「ゆずの道って、何?」
「え?」
「世界へ行くのは楽しそう。でも、何だかモヤモヤするんだゾ……」
「二階堂、そんな時は自分の“ハート”に訊くんだッ!」
「ハート?」
「答えは心の中にある。今までのアイカツの中で、心躍るほど楽しかったこと、嬉しかったことは何だ!?」
「心の中……楽しかったこと、嬉しかったこと……!」 

(中略) 

「進路、決めたゾ!」
「何処へ行くのですか?」
「四ツ星学園の高等部!」
「えっ?」
「ゆずはこれからも、リリエンヌと一緒にアイカツするゾ!」
「……あ」
「楽しいことはたくさんあったけど、リリエンヌとのアイカツが一番楽しかったから……!」 

(中略) 

「リリエンヌが走れないなら、こうすればいいんだゾ!」
「これではゆずが……。私はいつも助けられてばかり」
「助ける為じゃないよ。ゆずがリリエンヌといたいんだ」
「……!」
「う……っ!ぐぬ……っ!」
「ゆず、危ない……! 降りてください!」
「ゆずは決めたんだゾ!絶対、リリエンヌと登るって!」
「大丈夫ですか……!?」
「うん!……やっぱり、リリエンヌは凄いゾ」
「えっ」
「いつも見てる景色なのに、リリエンヌと一緒だとすっごく綺麗に見えるよ。アイカツも、一人より二人の方が楽しいんだゾ!」
「……」
「ゆずのハートが叫ぶんだ。 “リリエンヌといたい” って!」
「……私は、身に余る程の夢を叶えました。これ以上望んでも、良いものでしょうか……?」
「夢が叶ったら、その後はもっともーっと楽しい夢を見れば良いんだゾ!」
「名言ですね」
「リリエンヌのハート、何て言ってる?」
「勿論……! ふふっ」

-「アイカツスターズ!」 第98話『ゆずっとリリィ☆』より

 

夢は見るものじゃなく叶えるもの。その為に、それぞれのアイドルたちが「らしく」「本気で」在ることを願い続けた『アイカツスターズ!』。けれど、そもそも「叶えたい」からこそ夢なのであって、周囲から押し付けられた夢に囚われて自分のハートを見失ってしまったら、それは単なる呪いでしかない。 

ローラがゆめたちとの別れを惜しみつつも世界に旅立つのは、あくまで「彼女の “叶えたい夢” 」がそこにあり、ローラの心が「行きたい」と叫んでいるから。いかにS4を三連覇したとはいえ、ゆずはあくまで若干15才の少女。彼女は、何より自分の心に自由であるべき=その言葉通り「楽しいのが一番」であるべきなのだ。 

夢は大切なものだけれど、“夢” という言葉に囚われてはいけない。それは夢を真摯に描く本作だからこそ欠かせないある種の反証であり、主人公たちから一歩退いた立ち位置にいるゆずとリリィだからこそ描けた『アイカツスターズ!』における「もう一つの本懐」であり、これまで様々なしがらみに囚われ続けてきたであろうゆずとリリィに対する心のままに、もっと欲張って生きてほしい」という目一杯の祝福なのかもしれない。


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「ゆずっとリリィ☆」が拓いた可能性

 

こうして「心に従う」ことで真に分かり合うことができたゆずとリリィ。しかし、その美しさに胸を打たれる一方で、どういう訳か諸手を挙げて喜びきれない=微かに「不安」を感じている自分がいた。 

「アイドル自身が笑顔であること」を大原則として説きつつも、一方ではアイドルたちを取り囲む世界の厳しさも描いてきた『アイカツスターズ!』。「心に従う」というゆずの選択は素晴らしいものだったけれど、第45話『あこ、まっしぐら!』であこが特別なグレードアップグリッターを手にできなかったように、ゆずが世界中からのスカウトを断ったことも、決して「それだけ」で終わるはずがない。この選択が、(作中では描かれないとメタ的に分かっていても) 2人の未来に何か暗いものを引き寄せてしまうのでは――と、その懸念で胸が無性にざわついていた。 

けれど、件の第45話で「グリッターよりも子どもたちの笑顔を優先した」あこの選択がすばるからの賞賛に繋がったように、そのような「行動の結果」に自覚的な上で「それこそが正しいんだ」と高らかに叫んでくれるのもまた『アイカツスターズ!』という作品。それは本話においても例外ではなく、ゆずの選択は予想だにしなかった「新たな可能性」を切り拓くこととなった。

 

「アニマる……!それは、本能に従って生きる野性動物のように、自分の気持ちのままに行動すること!」
「「「「「リリィ先輩!?」」」」」
「ゆずは、リリエンヌとアニマるゾ~!」
「則ち、二階堂ゆずと私、白銀リリィは、ユニットを組むことをここに宣言します!」
「「「「「ユニット!?」」」」」
「ユニット名は “ゆずっとリリィ☆” だゾ!」
「世界各国からのスカウトを、全て断るということですか!?」
「こんなチャンス、もう二度と……!」
「チャンスは自分で作ればいいんだゾ。リリエンヌと一緒なら、ゆずは無敵なんだゾ!」
「私たちの思いは一つ……!」
「「も~っと2人で、アイカツしたいです!/ゾ!」」

-「アイカツスターズ!」 第98話『ゆずっとリリィ☆』より

 

そう、重大発表とはユニット「ゆずっとリリィ☆」の結成。そして、それは自分が知る限り『アイカツスターズ!』において初めて「正式なユニットアイドルが表立って結成された」瞬間だったように思う。 

 

思えば、四ツ星学園は生徒たちの自主性を重んじ、セルフプロデュースを必定とする校風。その校風で「グループアイドル」を育成しようものなら、(ゆめと小春でさえこうなので) 生徒間で対立が頻発し、有望なアイドル候補生の芽を摘み取ってしまいかねない。大人気アイドルを数多く輩出する名門=四ツ星学園がこのような状況であることに加え、世界的なトップアイドルスクール=ヴィーナスアークもまた個人主義であることに鑑みると、『アイカツスターズ!』において「グループアイドル」が鳴りを潜めている(ように見える)のは、これらの理由から「人気アイドルが軒並みソロアイドルだから」なのかもしれない。

引用:感想『アイカツスターズ! 64~77話』 星のツバサと運命のドレスが導く、虹の向こうの「二人の一番星」 - れんとのオタ活アーカイブ

 

これまで、自分の中には「アイドルといえばグループ (ユニット) 」という先入観があったのだけれど、本作にはS4とM4しか本格的なユニットアイドルが登場せず、他はダブルミューズのような例外的なものや「ゆずこしょう」など一時的なもの、あるいは非レギュラーのゲストキャラ。その理由を自分は上記のように考察していたので、尚のこと「ゆずっとリリィ☆」の結成に驚いてしまって――しかし、それ以上に大きな安心もあった。押し付けられる「正しさ」にNOを突き付けた上で、「誰も想像できなかった方法」でそれを越えてみせるこの2人なら「ユニットのジンクス」も覆していくだろうし、これから「スカウトを断ったことで失ったもの」以上に多くの栄冠を手にしていけるだろうと確信できたからだ。 

そのことは、2人の「アニマルカーニバル」直後に早くも示唆されることになる。

 

「ヘーイ!お届け物だよベイビ~!」

「エルザビーフ!?」

「トラック一台分!?」
「新ユニット結成のお祝いだそうだよ!」
「ゆずがお知らせしたんだゾ! “お祝いして” って! 」

-「アイカツスターズ!」 第98話『ゆずっとリリィ☆』より

 

華々しく旅立ち、作品からもフェードアウトするかと思われたエルザが早くも (実質的な) 再登場。ゆずっとリリィ☆の結成をトラック一台分のエルザビーフで盛大に祝うという太っ腹ぶりには「エルザから四ツ星学園への恩義」を感じて嬉しくなるし、それはそれとしてトラック一台分もの牛肉を送り付けてくるという若干の天然ムーブにも別種のエルザ様らしさを感じてほっこりしてしまうところ。  

……と、一見するとギャグシーンのようでもあるこのくだりだけれど、一方でこのシーンが「ゆずの方から世界に行かなくても、ゆず自身が望む道で “一番の輝き” を放っていれば、世界の方からゆずの元にやってくる」というメタファーにも見えてしまうのは、きっと自分だけではないだろう。  

ゆずとリリィ、2人がこれからアイドルとしてどこまで羽ばたいていくのか。その姿を『アイカツオンパレード!』で拝めるのかどうかは分からないけれど、2人がこれからもずっと「楽しいアイカツ」を続け、夢を追い続けていけるよう祈らずにはいられない。ゆずっとリリィ☆、どうか末永くお幸せに……!

 

アニマルカーニバル

アニマルカーニバル

  • かな・みき from AIKATSU☆STARS!
  • アニメ
  • ¥255

 

アイカツフレンズ!』の萌芽と「二階堂ゆず」という太陽

 

アイカツスターズ!』を見終わると、得てして「本編の熱に当てられて、余韻に浸りながら呆然とエンディングテーマを聴く」という時間が発生する。今回も例に漏れず「良かった…………」と感慨に浸りながら『森のひかりのピルエット』を聴いていたのだけれど、直後のミニコーナーで一気に目が覚めた。

 

「リリエンヌはゆずの大切な友達。2人のアイカツは、すっごく楽しい!」
「これからは、2人で新しいアイカツを届けましょう!」
「もっとも~っと楽しいアイカツを届けられる “フレンズ” になるんだゾ!」

-「アイカツスターズ!」 第98話『ゆずっとリリィ☆』より

 

今、「フレンズ」って言いましたッ!? (女児アニメ違い)

 

 

アイカツ!シリーズ素人の自分でも『スターズ!』の次作が『アイカツフレンズ!』なことは知っているし、それが2人組のユニットをフィーチャーした作品だということも聞き及んでいる。『スターズ!』と『フレンズ!』はおそらく別の世界での物語なのだろうけれど、このタイミングでゆずの口から「フレンズ」の名前が出ることは、まるで「ゆずっとリリィ☆の存在によってユニットアイドルが大きな盛り上がりを見せ、それがアイカツフレンズ!という次の時代に繋がった」かのようで、(単なる偶然だと分かっていても) 胸を熱くせずにはいられなかった。 

(実際のところ、このくだり……ひいてはこの第98話そのものが『アイカツフレンズ!』への前振りであり「本来は88話が最後のゆずリリエピソードになる予定だった」と考えると諸々辻褄が合うようにも思う)

 

が、そんな妄想も「強ち間違いではなかった」らしいということが、ほんの少し先のエピソード=第100話『まだ見ぬ未来へ☆』で発覚してしまう。

 

 

第100話では、真昼の口から「真昼・ツバサ・夜空」によるユニット結成=実質的な「SKY-GIRLの正式デビュー」が語られたことを皮切りに、「これはユニットを組んでいるのでは……?」と思われるアイドルの姿が多数見られていた。その光景は「ゆずっとリリィ☆」という超新星が、スターズ!世界における「ユニットアイドルが下火」という風潮そのものを覆した=「ゆずとリリィ、2人でのアイカツがより一層行いやすい世界になった」ことを意味しているように思う。そのことは、まるで「これまでリリィに過酷な試練を与えてきた世界を、ゆずの一途な愛が作り変えた」かのようにも思えてしまうし、ゆめともエルザとも異なり、世界を照らす力をただ一人の為だけに使うゆずは、まさしく「リリィだけの太陽」と呼べるのではないだろうか。  

キャラクター同士の多様な「愛情」が描かれたのも『アイカツスターズ!』の特徴。しかし、「精神と身体に “普通でない” という呪いを受けて生まれた2人が、そんな呪いを越えて結び付き、やがてその世界の方を変えてしまう」というゆずとリリィの物語は、中でも特異なもの――「お伽噺のような美しさ」と「破滅的なまでの情熱」を同時に孕んでいるように感じられた。テーマの面でも、関係性の面でも、ゆずとリリィはまさしく『アイカツスターズ!』の「裏主人公」だったのではないか……と、そう思えてならない。  

そんな彼女たちに対し、本作の「表主人公」=ゆめとローラは一体どんなフィナーレを見せてくれたのか。そのことには、次の記事で改めて向き合っていきたい。

 

 

「新しい一年を前に……」
「旅立ち前に……」
「「何か忘れてるような……」」
「ゆめも!?」
「ローラも?」
「次回、アイカツスターズ!『ふたりの忘れ物』掴め、アイドル一番星!」

-「アイカツスターズ!」 第98話『ゆずっとリリィ☆』より