総復習『ウルトラマン列伝』の系譜 - 「列伝」から「ウルトラマンクロニクルD」まで、激闘の年代史を振り返る

遂に放送直前となった『ウルトラマンブレーザー』に界隈が盛り上がる2023年6月24日。恒例の「列伝系番組」ことウルトラマン ニュージェネレーション スターズ』が最終回を迎えた。

 

 

ニュージェネレーションシリーズが10年の積み上げを行ってきた傍ら、あまり注目を浴びないながらも試行錯誤を続けてきた「列伝系」番組。その試行錯誤は (新作TVシリーズ並か、時にはそれ以上に) 浮き沈みの激しいものだったけれど、今回の『ウルトラマン ニュージェネレーション スターズ』は、そんな同シリーズの積み重ねが遂に花開いたかのような、文句無しに「過去最高」の作品になっていた。  

今回は、そんな『ウルトラマン ニュージェネレーション スターズ』についての所感や感謝を思う存分書き出していきたい……のだけれど、本作について語っていく前に、まずはそこに至るまでの流れ=『ウルトラマン列伝』から始まる歴史を振り返っておかなければならない。 

思えば、もう遥か12年前の作品である『ウルトラマン列伝』。その流れを受けた『クロニクル』シリーズからも6年……。このシリーズの短いようで長い芳醇な歴史を、この機会に一挙振り返ってみたい。


f:id:kogalent:20230624142408j:image

引用:新テレビ番組『ウルトラマン クロニクルZ ヒーローズオデッセイ』 2021年1月9日(土)9:00~テレビ東京系にて放送開始! - 円谷ステーション

 

《目次》


1. ウルトラマン列伝 (2011年~)

 

そもそもの始まりは2011年7月6日。映画『ウルトラマンサーガ』に繋ぐための番組として、『ウルトラマン列伝』が放送されたことだった。 

 

ウルトラマンサーガ』の主役であるウルトラマンゼロウルトラマンダイナ、ウルトラマンコスモスを中心に、ウルトラシリーズのエピソードを (一部新規撮影映像を交えて) 放送したり、過去シリーズの映像を使った総集編を放送したり……と、その番組構成は基本的に1話完結であるウルトラマンと相性バッチリ。低予算番組ながらソフビ人形などの売上にも大きく貢献したらしく (当時は『列伝』との連動企画として、キリエロイドⅡなど人気怪獣のソフビが新造ないしリペイントの上で発売されていた) 、当初の予定では3クールだったものが延長に延長を重ね、最終回はなんと104話。 

オリジナル短編である『ウルトラゼロファイト』も好評を博し、めでたく次なるステージ=『新ウルトラマン列伝』へと歩を進めることになった。

 

 

2. 新ウルトラマン列伝 (2013年~)

 

2013年7月3日から放送開始となった『新ウルトラマン列伝』。その番組構成は他に類を見ないもので、 

①『新ウルトラマン列伝』という番組の枠内で、30分の新作TVシリーズを放送 

②従来の『ウルトラマン列伝』を踏襲した「セレクションエピソード」や「総集編」を放送  

……というこの2つを行ったり来たりするもの。 

当時の状況ではそれが「新作TVシリーズを継続する」唯一の方法だったのだけれど、この努力は無事に実を結び、なんと『新ウルトラマン列伝』は3年間も放送。その枠内で『ウルトラマンギンガ』『ウルトラマンギンガS』『ウルトラマンX』という3作品が生まれたことで、徐々に「ニュージェネレーション」の息吹が生まれていくこととなる。 

 

『新ウルトラマン列伝』が放送終盤に差し掛かった2016年4月。本作はその人気を受けて、メイン放送局であるテレビ東京の放送枠が「火曜日の夕方5時」から「土曜日の朝9時」というゴールデンタイムへと移行。ほどなくして、その枠を『ウルトラマンオーブ』が引き継ぐことになる。イレギュラーなものを除くと、それは『ウルトラマンメビウス』から約10年ぶりに「ウルトラマンシリーズの完全新作TV番組」が復活した瞬間だった。 

 

しかし、ウルトラシリーズはその製作体制から他の特撮作品に比べても非常に予算がかかってしまうことがネック。そのせいもあってシリーズが度々断絶してしまい、徐々に人気・知名度を落としてしまった背景を持つ。 

そのことを踏まえて、本シリーズはここからある「スタイル」を確立させていった。それは 

①7月から2クールの「新作TVシリーズ」を放送 

②12~1月から2クール、『ウルトラマン列伝』形式の再放送系番組を放送する 

……というもの。ここから実に7年以上に渡り、ウルトラシリーズは「交代制」スタイルを新たなスタンダードとして貫いていくことになる。

 

 

3. ウルトラマンゼロ THE CHRONICLE (2017年)

 

こうして、『新作TVシリーズ』の跡を継ぐ形で毎年放送されることになった『ウルトラマン列伝』の系譜たち。所謂「列伝系」と呼ばれるその作品群は、一見従来と同じ「過去シリーズからのセレクション放送」と「総集編」を行う作品のように見えて、ここからその役割やテイストを次々と変えていくことになった。そんな新体制の先陣を切ったのが『ウルトラマンゼロ THE CHRONICLE』である。   

 

「列伝」改め「クロニクル」シリーズ第1弾の主役は、ご存知大人気のウルトラマンゼロ! 

ゼロは冠番組TVシリーズを持たないからか『ウルトラマン列伝』『新ウルトラマン列伝』で数回に渡って関連作が放送されており、当時から追っているファンからは「またゼロか」という意見も見られたものの、「遂にゼロが冠番組を持った」という感動は大きく、何より「新しい世代にウルトラマンゼロを伝えた」この作品の意義は非常に大きいものだったのではないだろうか。 

この作品は基本的に過去の『ウルトラマンゼロ』シリーズの分割放送であるため目新しいトピックは少ないが、2017年7月から放送開始となった『ウルトラマンジード』は本作からそのまま続く物語となっており、本作+ジードがセットで「実質的に4クールのウルトラマンを放送する」という大胆な試みになっていたことは大きな見所として記しておきたい。

 

(主題歌『GO AHEAD~すすめ!ウルトラマンゼロ~』を水木一郎×ボイジャーの『オーブ』タッグが歌うことも大きな話題を呼んでいた)


4. ウルトラマンオーブ THE CHRONICLE (2018年)

 

ウルトラマンジード』の後番組として放送されたのは、実質的な『オーブ』の再放送となる『ウルトラマンオーブ THE CHRONICLE』。 

 

2016年に放送されたばかりの『オーブ』の再放送というかなりチャレンジングな試みだが、2018年春公開の『劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ! 願い!!』にオーブが深く関わることや、翌年の作品が『ウルトラマンR/B』であることを踏まえると納得のセレクト。 

そんな本作のトピックと言えば、やはり『新ウルトラマン列伝』以来となる「新作総集編」が放送されたことだろう。 

 

『激闘!フュージョンアップファイト!』は、なんとウルトラマンオーブ 直前スペシャル』と同じ構成でサンダーブレスター、オーブオリジン、オーブトリニティ、ライトニングアタッカー、エメリウムスラッガーを紹介するという、『直前スペシャル』好きにはたまらないエピソードとなっていた。 

……しかし一方で、本作から徐々に「クロニクル系」の雲行きが怪しくなっていく。 

 

本作は『オーブ』の再放送だが、劇場版などを放送する都合上、一部エピソードはカットせざるを得なかった。 

そのカットされたエピソードには第14話『暴走する正義』と第15話『ネバー・セイ・ネバー』も含まれており、様々な反響を呼んでいた (あの重すぎるエピソードで新規層が離れることを懸念して削ったのだろうか) が、問題はそうして削った枠でなんと『ウルトラマンレオ』第22話『レオ兄弟対怪獣兄弟』を放送したこと。  

次作『ウルトラマンR/B』への繋ぎと考えれば仕方のないところもあるが、オーブとほぼ無関係なエピソードをこの枠で放送するのはいかがなものか、という声は多く、この点は翌年以降早々に改善されることになった。 

しかし、この辺りからクロニクル系番組には徐々に「製作側の都合」や「独自の味付け」といったものが顔を出し始め、それが折に触れて賛否両論を呼んでいくことになる。

 

(本作の主題歌は『劇場版ジード』の主題歌も担当された May J.氏をゲストに迎えての『オーブの祈り(水木一郎 with ボイジャー feat. May J.)』というレア楽曲。第2クールでしっかりOP映像が変わるのも凝っていた)

 

5. ウルトラマン ニュージェネレーションクロニクル (2019年)

 

7月放送の『ウルトラマンタイガ』が (おそらく) ニュージェネレーションの総決算として製作されていたことを踏まえ、『R/B』の後番組はニュージェネレーションシリーズのみで構成された再放送番組。当時、ウルトラマン列伝』から始まったニュージェネレーションシリーズだけで「列伝系」番組が作られたことに感慨深くなってしまったことをよく覚えている。  

 

そのメインとなるのは、これまで「クロニクル」で取り上げられる機会のなかった『X』『ジード』『R/B』の3作。『劇場版X』や『劇場版ジード』などを放送したほか、トレギアのナレーションによる歴代強敵の総集編や前後編形式の『R/B総集編』など魅力的な内容が多く、『ウルトラマンオーブ THE CHRONICLE』でカットされたギャラクトロン前後編もここで放送されることになった。  

しかし、それ以上のトピックとして挙げられるのが、本作から新たに「番組としてのストーリー」が導入されていること。  

「ペガがブースカの経営する映画館で働いており、本作はその劇場で上映されている作品」という体で毎回入るショートストーリーやナレーションは、「ユーモラスな掛け合い」として受け入れる声がある一方「間の抜けた雰囲気がノイズになる」という反発もあったりと、本作は総集編やセレクションの満足度に反して波紋を呼ぶ作品になってしまっていた。

 

  

(本作終盤にも『タイガ』の前振りとして『タロウ』総集編が挟まれたが、『ウルトラマン物語』というレアな選出や、「ニュージェネレーションの深い関わりがあるから」という切り口が光る一編だった)

 

6. ウルトラマンクロニクル ZERO&GEED (2020年)

 

ウルトラマンZ』に向けて、ウルトラマンゼロジードの歴史を振り返る『ウルトラマン クロニクル ZERO&GEED』。もう何度目か分からないウルトラマンゼロの活躍……ではあるけれど、なんとこの頃既に『ウルトラマンゼロ THE CHRONICLE』は3年前。新しい世代に (以下略)  

 

そんな本作は、『ウルトラマンゼロ THE CHRONICLE』と異なり『ジード』も放送していく必要があるため『ゼロ』の一挙放送は断念。その結果『VSダークロプスゼロ』や『ウルトラマンサーガ』などの一部作品を分割放送、他の作品は総集編で済ませるという大胆な放送形式が取られ、そんなゼロの歴史をウルトラマンジード=朝倉リクが「ビヨンド学園」という謎の施設で学ぶというショートストーリーが展開された。  

ウルティメイトフォースゼロなどゼロに縁のある戦士から、時にはジャグラーまでもが顔を出す豪華ぶりには目を見張ったものの、この「ビヨンド学園」パートは妙に味付けが濃く、モブ宇宙人たちの恋愛模様など何をしたいのか分からない本筋からズレたパートに尺を割いており、その全体的なチープさもあって、前作『ニュージェネレーションクロニクル』よりも「ノイズ」としての側面が強くなってしまっていた。  

おそらくは『ゼロ』視聴済みの視聴者も新鮮に楽しめるように、という配慮だったのかもしれないが……。 

 

ところが、そんな流れは『ジード』パートに入る第14話から突如変貌。ここからは、なんとジード』本編を7つの総集編に分割するという非常に凝った展開にシフト。作品テーマ上重要だが必須とは言えない第14話・第15話の「ゼガン前後編」もしっかり網羅した他、ジードVSベリアルの最終決戦に『ShOut!』を流すという演出も初出、『ジード』愛に溢れた編集が大きな反響を呼んでいた。

 

  

(皮肉なことに、この第19話からパンデミックの本格化によってビヨンド学園パートが消滅。総集編としてより洗練されたものになってしまい、自分含め当時の視聴者は何とも複雑な気持ちになったという……)


7. ウルトラマンクロニクルZ ヒーローズオデッセイ (2021年)

 

そろそろクロニクル系もネタ切れじゃないか、というファンの予想に、突如として「TDG3部作をメインにします!」という爆弾を投げ込み界隈を騒然とさせた『ウルトラマン クロニクルZ ヒーローズオデッセイ』。 

 

本作は『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』や、TDG 25thという企画の仕込み役でもあり、メインとなる『ウルトラマンティガ』の作風もあって非常にシリアスな作風。 

ほぼ全ての放送が総集編、と内容にも力が入っており、ティガ、ダイナ、ガイアは勿論、近作の『Z』や、ティガが客演した作品やティガと関わりのある『オーブ』『R/B』など選出の方向性も明確。一つの「新番組」として確かなクオリティを持つものになっていた……の、だが、本作最大のトピックになってしまったのはやはり「長野博を映さずにどこまで『ティガ』をやれるか」という謎のチャレンジ精神だろう。  

 

この第20話は、『ティガ』第43話『地の鮫』と第44話『影を継ぐもの』の総集編だが、なんと「ダイゴの出演シーンが全カット」という凄まじい仕様になっている。  

他の回でも、本作はダイゴ役・長野博氏の立場上徹底的に「マドカ・ダイゴ」という存在が消去されており、第1話から早々に「ガッツウイング1号から “ダイゴ” と呼ばれる謎の存在が光となって飛び出し、ティガと一体化する」という珍妙なシーンが爆誕当然のようにTwitterは大盛り上がりで、「ガッツウイングを操縦する自立型AI “DAIGO” 」など様々な説が覇を競うトンチキ極まるブームが巻き起こっていた。

 

  

(自分のお気に入りはこのエピソード。ティガ『もっと高く!』と、R/B『さよならイカロス』をオーバーラップさせるという神懸かった総集編だが、前述のダイゴ案件が話題になりすぎて他のエピソードが空気になってしまっているのが何とも切ない……)


8. ウルトラマンクロニクルD (2022年)

 

前作『ウルトラマン クロニクルZ ヒーローズオデッセイ』の流れを汲んで作られた『ウルトラマンクロニクルD』。その主役は当然のようにウルトラマンダイナで、彼やウルトラマントリガーが作品の中心になる……という、そんな触れ込みで始まった作品だった。 

 

一見すると「今度はダイゴのような縛りもないし、過去最高のクロニクルが来るだろう」と思われた本作。しかし、いざ蓋を開けてみると、本作は「エピソードZと連動した『トリガー』プッシュ」に始まり、そのまま『ギャラクシーファイト』のTV放送にシフトという過密スケジュールに追われており、結果全22話中10話しかダイナが絡まないという衝撃的な事態に。  

しかし、凄まじいのはそこからの『ダイナ』特集。ガラオンとマウンテンガリバーを取り上げる第18話、ニセダイナとネオジオモスを取り上げる第19話、そして最終章を見事30分にまとめた第20話と傑作を連発。『サーガ』総集編の前後編でラストランを駆け抜け、「終わりよければすべてよし」を体現したかのような良作になっていた。 

ちなみに、本作ではマルゥルとデバンによるショートストーリー形式が復活していたが、多彩なゲストの登場や敢えて薄く調整されたであろう味付けもあってか、これまでよりもバランスの良い「作品の見所」として洗練されていた印象。要は「やりよう」次第なのかもしれない……。

 

  

(前述の『ダイナ』最終章の総集編。ただでさえ傑作総集編なのに、タイトルが『君だけを守りたい』なのがまた熱い……!)

 

『ニュージェネレーション スターズ』へ

 

こうして振り返ると、「列伝枠」の一言でまとめるには惜しいほど個性豊かな本シリーズ。 

元々『ウルトラマン列伝』の放送形態=「過去エピソードのセレクション放送」や「総集編」が大好きな自分にとっては、後続作品がその流れを汲んだり、新作の放送前・放送中に挟まれる形で「特別編」があったりする流れは嬉しい限り  (それはそれとして、総集編が挟まれる回数やタイミングには時々「もう少し手心を……!」と思わなくもない) 。 

かくして、遂に迎えた2023年は「列伝」から生まれたニュージェネレーションヒーローズの10周年。これまでの積み重ねを受け、今一度「ニュージェネレーション」を冠に発進した『ウルトラマン ニュージェネレーション スターズ』が一体どのような作品に仕上がっていたのか……。その委細は、また別の記事にて詳しく語っていきたい。