さらばウルバト! 怪獣愛に満ちた奇跡のゲーム『ウルトラ怪獣 バトルブリーダーズ』を振り返る

時に2021年5月26日。

ウルトラマンTVシリーズ最新作『ウルトラマントリガー』への期待で界隈が盛り上がっている中、株式会社バンダイナムコエンターテインメントが運営していたスマートフォン向けゲームアプリ『ウルトラ怪獣 バトルブリーダーズ』通称『ウルバト』がサービス終了となった。

決してメジャーではないものの、運営とユーザーの「怪獣愛」によって支えられた奇跡のゲームであるウルバト。しかし、アプリゲームの定めとしてその軌跡は形に残らない。

今回の記事では、一人でも多くのウルトラファンに「こんなに素晴らしいゲームがあったんだ」と知って貰うため、そして一人でも多くのブリーダーが『ウルバト』を思い出せる場所となるように、本作がどのようなゲームだったのかを振り返ってみたい。


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ウルトラ怪獣 バトルブリーダーズ』がサービス開始したのは2018年秋。テレビでは『ウルトラマンR/B』が放送中=ちょうど新世代ウルトラマンシリーズもお馴染みになってきた頃合いで、ゲームのリリースにはまさにうってつけのタイミング。

 

ジャンルは『怪獣育成シミュレーション』で、ざっくり言うなら『スーパーロボット大戦』シリーズに「怪獣の育成」というもう1つの軸が加わったようなイメージだ。

ウルトラシリーズのゲームというと対戦格闘などアクション系のイメージが強いかもしれないが、実は『ウルトラマン オールスタークロニクル』や名作と名高い『ウルトラ警備隊 MONSTER ATTACK』などもあり、シミュレーションゲームはウルトラと意外にも縁の深いジャンルだったりする。

そんな本作の主役たちは名だたる怪獣・宇宙人やロボット、そして闇の巨人たち(以下“怪獣”)。

そのラインナップは凄まじく重厚で、なんとほぼ全てのウルトラシリーズから総勢200体もの怪獣が参戦しているという豪華ぶり……!

特にニュージェネレーションシリーズからは『ギンガS』から『Z』までの人気怪獣が大挙して参戦し、グリーザ(第二形態)や特空機セブンガーなどの参戦は特に大きな話題となった。
だが、ともすればそれ以上の話題となっていたのが『G』と『マックス』から怪獣の参戦が叶ったこと。この2作はこれまでのゲームで怪獣が参戦したことがなかったためファンからの要望も高く、『マックス』からラゴラス、ひいてはラゴラスエヴォまで参戦したり、『G』からゴーデス第二形態が参戦したりといった際にはTwitterで多くのファンが咽び泣いていた。僕はラゴラスエヴォで泣きました。

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(↑最終的な参戦作品リスト。サブスクのラインナップか何か?)

 

ゲーム序盤はゴモラガンQなどお馴染みの面々からのスタートだったが、「毎週新しい怪獣を実装する」という狂気じみたサービス精神を見せたウルバトはあっという間に怪獣数を増やしていった。その中で徐々にガゾートやゾアムルチ、ドラゴリーといった完全新規モデルの怪獣が実装され始め、最終的にはユーザーの意見でスペックが決まったガヴァドンAや『ガイア』のブリッツブロッツなどマニアックな怪獣も次々参戦、ブリーダー界隈は毎週のようにお祭り騒ぎとなっていた。

 

勿論その「毎週追加される新怪獣」の中には、ナックル星人やバルタン星人(ベーシカルバージョン)など『Fighting Evolution』や『大怪獣バトル』など過去のゲーム作品でCGモデルが作られた怪獣もいたが、ウルバトのこだわりは妥協を許さない。なんと「過去にゲームで登場していた怪獣」も、モデルを(怪獣によっては一から)作り直しているのである……!
(例えば、ファイブキングはデータカードダスの『大怪獣ラッシュ』で既にCGモデルが作られていたが、本作にてCGモデルが完全新生。現行作の「フュージョンファイト」に逆輸入されたりもしている)

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(↑カッコよすぎるファイブキング。何度再販されても高騰する大人気怪獣だった)

 

当然ながら、それら精巧なCGモデルの作成には円谷プロとの綿密な連携、緻密なスケジュール管理など多くの関門がある。それらを乗り越えつつ、2年以上に渡り毎週新規怪獣を実装し続けてくれた運営の方々の努力には本当に頭が上がらないし、ウルバトのサービス終了にはその点も関係しているのでは? という噂も。それならそれで納得しかない……。

 

そんな運営様方の努力が作り出した数多くの怪獣たち。そのイカれた(褒め言葉)ラインナップの一部を紹介するぜ!!!!

ウルトラセブン』からギエロン星獣
帰ってきたウルトラマン』からタッコング
『80』からザンドリアス
『ティガ』からレギュラン星人
『ダイナ』からデマゴーグ
『ガイア』からニセ・ウルトラマンガイア
『ネクサス』からダークファウスト
メビウス』からボガール
『X』からムー
ジード』からレギオノイド・ダダ・カスタマイズ
『R/B』からグルジオキング
『タイガ』からナイトファング
『Z』からエリマキテレスドン

……惑うぜ! 現実!!
自分で書いていながら違和感を覚える怒濤のラインナップ。オタクしか喜ばないぞこんなの!? 大丈夫!? という質問に満面の笑みを浮かべるスタッフが見える。お、俺たちのウルバト……!!!!

 

Twitterでは参戦怪獣の発表に先駆け、クイズのような「ヒント画像」が掲載されることがほとんどで、毎週月/火曜日の参戦発表は界隈の話題をさらった。ガルベロスやサイバーゴモラなど新規参戦怪獣の名前がTwitterのトレンドに載ることも少なくなく、そのような点も含めてウルバトは怪獣ファンにとって夢のようなゲームであった。

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(↑ヒント画像集。毎週作るのに苦労したとのこと、せやろな……)

 

そうして毎週のように増えていく怪獣たちだが、決して数ばかりが多い訳ではない。怪獣には「力」「技」「速」「無」のいずれかの属性(相性)に加え、怪獣固有の能力・必殺技が与えられている。それらによって、怪獣を「原作っぽく」戦わせられるのが本ゲームの大きなポイントだ。例えば……。

・同じパーティに編成することで真価を発揮し、必殺技も変化するマグマ星人&ギラス兄弟、サデス&デアボリック

・タイプチェンジによって能力を使い分けるキリエロイドⅡ

・仲間の身代わりとなり、散り際に攻撃バフと体力回復を残していくシェパードン

・(不意打ちでゼガンを撃破した再現なのか)初撃のみ超強化されるヘルベロス

・自分が状態異常「暗闇」の時に強化されるムルロア

・強力な必殺技『投げつけるアイスラッガー』を持つが、ウルトラセブンにそれを使うと自身が確定で即死する改造パンドン(??????????????)


などなど。ただ強いキャラを集めればいいという訳ではなく、怪獣をいかに「らしく」暴れさせるか考え、それが見事決まった時の達成感ったらたまらない。キングオブモンス&バジリス&スキューラで大暴れしている時とか最高ですよ!


では、どうすればその怪獣を入手できるのか。スマホゲーならガチャじゃない? は~~~つまんな!! と思ったそこの貴方。ウルバトはそんなありきたりなゲームじゃあありませんのですわ!(多方面から刺されそうな発言)

怪獣たちの入手方法こそ、実はこのウルバトにおける最大の特徴。その名も「マーケット」
これは「ガチャ」でも「建造」でもない独自方式で、オークション形式でキャラクターの入手権を争うもの。

具体的には1〜2週間の間、マーケットに新規と復刻、併せて数体のキャラクターが出品され、1日2回、多くの金額(通貨は「ウルトラストーン」)を入札した上位層がキャラクターをゲットできるというシステムだ。f:id:kogalent:20210528072801j:image

更に、所謂「天井額」(概ね10000円)相当のウルトラストーンを入札すればマーケットを無視して怪獣を落札できる上にボーナスも付く「即決」システムまで実装されており、狙ったキャラクターを入手できる可能性は実質的に100%という驚異のユーザーフレンドリーぶり。斬新過ぎて運営が心配になるほど良心的なシステムだった。

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(↑大好きな怪獣が出品された時は即決すべき。太平風土記にもそう書いてある)

 

キャラクターは出品される時期や「新規か復刻か」など様々な背景によって出品される数が異なっており、凄まじく白熱するマーケットもあればあまり盛り上がらないマーケットもある。そうしたマーケットの様相を眺めるのもこのゲームの醍醐味。
かくいう自分は怪獣については比較的ライトなオタクなので、買う時もあれば買わない時もあり、そんな「マーケットに参加しない時期」が長ければ長いほど、1ユーザーながら「このゲームの運営は大丈夫なんだろうか」と不安に駆られたりもしていた。f:id:kogalent:20210528073208j:image
(↑自分が見た中で一番高騰したのはまさかのニセメビウスで、次いで高かったのはゼッパンドンやオーブダークなど。あと少しの額で即決ボーナスが付くことを考えると恐ろしい高騰ぶり……)


そんなマーケットで競り落とし、育てた怪獣を戦わせる舞台=プレイモードは大きく分けて4つ。

まずは「メインクエスト」
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これはこのゲームの致命的な欠点なのだけれど、とにかくこのメインクエストが薄い。(名前はそれっぽい割に)尋常でなく薄い。

惑星ウルバト(直球)を舞台に、怪獣のデータ解析や再現をシミュレーションしている謎のナビゲーションロボット『ナヴィ』。彼女と、彼女によって呼び出されたブリーダー(プレイヤー)が、様々なシミュレーションを体験したり、惑星ウルバトが保持するデータ目的で襲いくる宇宙人と戦ったりする……というのが大まかなストーリー。というか、それ以上の内容がない

ゲームが始まってから1年ほどの間はストーリーが定期的に更新されたがその後は実質的な打ち切りで、ばらまくだけばらまかれた伏線は最後のクエストで一気に回収されることになった。それはそれで凄いな……。


一方、そんなメインクエストに代わってウルバトの本命と言えるのが「イベントクエスト」だ。
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イベントクエストは一般的なスマホゲーと同じく、定期的に様々なイベントが新規・復刻織り混ぜて期間限定で開催されるもの。

ウルバトのイベントクエストは、大きく分けると下記のような種類がある。


・強敵出現イベント
エタルガーや闇に堕ちた タ ロ ウといった強敵に挑むイベント。ボス怪獣の特徴や原作再現を意識したギミックが仕込まれており、例えばグリーザ出現イベントではゴモラやゴメスといった怪獣をダークサンダーエナジーから解放するために(HP調節などで)奮闘することになる。
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(↑ジャグラーとマガオロチを相手取るイベント。マガオロチの実装には界隈も大いに盛り上がっていた)

 

・スコアアタック系イベント
オーブダークが呼び出す大量の怪獣を殲滅したり、大量発生したツインテールグドンやボガールに横取りされないよう狩りまくったりするイベント。デスフェイサーやギャラクトロンなど、範囲攻撃を持つ怪獣が大活躍する。f:id:kogalent:20210528092231j:image

(↑狩るどころか狩られることもある、世の中は非情だ)

 

・「(疑似)レイドイベント」
ウルトラマンベリアルやデストルドスなど、莫大なHPを持つ敵に対して何度も挑み、その討伐を目指す。大型イベントとして開かれるため演出に気合いが入っており、グランドキング戦ではウルトラ6兄弟と共闘することができる他、ガタノゾーア戦では石化したティガを数ターン守りきることでグリッターティガを出現させることもできた。f:id:kogalent:20210528073631j:image

(↑TVを意識した仕様が美しいグリッターティガ)

 

ウルトラマン降臨イベント
ウルトラマンを召喚して敵に追加攻撃ができるアイテム「ウルトラ必殺技」を入手することができるイベント。『君だけを守りたい』『ウルトラマンジード プリミティブ』『ご唱和ください、我の名を!』など多くの新規版権BGMアレンジ曲が実装された他、ウルトラ6兄弟のチームと戦ったり、オーブの助っ人としてジャグラーが現れたり、ファン垂涎ものの演出が目白押し。

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(↑仲良く新年の挨拶をしてくれるTDG。戦闘中のBGMはなんと『Beat on Dream on』!)


他にも様々なイベントクエストが存在しているが、それらはいずれも難易度が「ノーマル」「ハード」「エキスパート」に分かれており、難易度が上がるほどに演出や報酬が豪華になっていく。それらを楽しむために不可欠なのが怪獣の育成だ。f:id:kogalent:20210528073900j:image

育成というとイメージしやすいのが「レベル上げ」だが、ウルバトではアイテムによって比較的簡単にレベルをMAXにすることができる。その代わり重要になってくるのが「スキル構成」。

ウルバトの怪獣たちは、各怪獣に1つ固有の能力である「固有スキル」と、入れ替えができ
る汎用的な「継承スキル」という2種のスキルを持っている。ポケモンに例えるなら、

固有スキル=とくせい
継承スキル=わざ

といったところ。
シナリオクリアだけならレベルアップで覚えた技だけでも問題ないが、通信対戦やクリア後の対戦コンテンツなどに挑むなら技やチーム構成を熟考する必要がある、というあのバランス感覚に近いかもしれない。

 

例えば『ティガ&ダイナ』に登場し、圧倒的な火力を誇ったロボット怪獣であるデスフェイサーを見てみると、レベルMAXのスペック(初期状態)がこの通り。f:id:kogalent:20210528073949j:imagef:id:kogalent:20210528073957j:image

同じ『ダイナ』怪獣で、防御に優れた怪獣であるデマゴーグと比べると、全体的にステータスで劣る反面、必殺技の威力が非常に高いという原作再現がされている(原作では通常スペックも高かったが、それはそれ)。

 

デスフェイサーの固有スキル『殲滅へのカウントダウン』は必殺技(SP)ゲージをチャージしたり、逆に敵のSPを減少させたりもできる攻防一体のもので、ダイナから戦意を奪ったことの再現とも取れる。
継承スキルも主に必殺技のサポートが揃っているが、ここはより特化させてネオマキシマ砲を原作ばりの超火力にしたいところ。そこで行うのが継承スキルの入れ換えだ。

 

継承スキルとは「継承(したりされたり)できるスキル」の意。
ポケモンでの「わざマシン」のように、ウルバトでは継承スキルを付与できる「スキルエッグ」なるアイテムが存在する。イベント報酬などで手に入るこのスキルエッグを使ったり、「怪獣を消費してスキルを受け渡す(継承)」ことを繰り返し、怪獣を自分好みにカスタマイズ/成長させていく。

原作再現に特化するもよし、強さを追及するも良し、様々なロマンを求めてもよし。手間がかかる分育成しきった時の感動はひとしおで、一度味わってしまうと癖になる。この「育成」の楽しさは、間違いなくウルバトの大きな魅力の一つだろう。f:id:kogalent:20210528125709j:image

(↑スキル継承のためだけに怪獣を生成することも日常茶飯事。サイバー怪獣惑星ウルバトに秩序などないのだ……)

 

例として、スキル入れ替えが完了した(り他にも色々強化した)デスフェイサーがこちら。
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継承スキルのバフは戦闘開始時に乗ってくるので、実際の必殺技火力はなんと約4000。ガタノゾーアだろうがグリムドだろうが消し飛ばすスーパー電脳魔神の誕生……ッ!


こうして育てた怪獣たちが揃ってくると、加速度的にゲームの幅が広がってくる。
イベントクエストの高難易度「エキスパート」に挑むことができるようになってくるだけでなく、超難易度の詰め将棋めいたモード「探査」へのチャレンジや、擬似的なPvPを楽しめる「アリーナ」での力試しが可能になってくるのだ。

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アリーナは「攻撃チーム」「防衛チーム」をそれぞれ作成し、他プレイヤーの防衛チームに戦いを挑むというもの。その勝敗でランキングが変動し、順位によってはウルトラストーンを貰える他、順位が高くなくても、勝利スコアを集めることでレアなアイテムや怪獣が手に入ったりする。

 

だが、アリーナ最大の魅力は「ブリーダーの愛が詰め込まれた怪獣たちと戦える」点だろう。
ダークロプスゼロやメカゴモラによる「VSダークロプスゼロ」パーティや、特空機
セブンガー、特空機ウインダム、キングジョーストレイジカスタムによるストレイジチームなど人によってチームは様々で、中にはゴーデス第2形態×4というぼくらのグレートが発狂しそうなパーティも(ちなみにアホほど強い)。


ただ強いだけでなく愛に満ちたチームとの戦いは、負けてもどこか清々しささえ感じるもの。何かと炎上しがちなソーシャルゲームPvPだが、本作はこういった点のおかげか概ね好意的な意見が多かったように思う。f:id:kogalent:20210528124811j:imagef:id:kogalent:20210528124755j:image

(↑上が自分のアリーナ攻撃チーム、下が防衛チーム。世代がバレること請け合いの人選だ)


と、ここまで説明したのがウルバトの主な遊び方。要は「怪獣を競り落とし、育成し、クエストに挑み、獲得したアイテムで更に怪獣を育成」というサイクルをこなしていくのが大まかな流れという訳だ。

こうして見ると良ゲー、人によっては神ゲー判定が出そうなものだが、悲しいかなウルバトの売上順位はちょくちょく危なっかしいランクに足を突っ込んでおり、いつサービス終了してもおかしくはない状況だった(某バイク乗りが街を守るゲームと概ね100位差ぐらいだったろうか……)。

その原因は多々考えられるが、最も大きいであろうものは「敷居の高さ」だろう。

 

まず何より、怪獣が主役のゲームである点。
(ありがたいことに)世の中にごまんといるウルトラファンだが「怪獣が主役のゲーム」ということにハードルの高さを感じる人は多いのではないだろうか。

かくいう自分もその一人で、始めたのは1周年の少し前頃だった。『Fighting Evolution』で義務教育を終えたくせに『大怪獣バトル』に触れてこなかったドロップアウトボーイとしては、モンスアーガーやデスフェイサーらが使えることに興味津々だったものの、恒常的にプレイするスマホゲーを増やすことはどうにもハードルが高く、そのデメリットを押してまで始めるか? となると、そう思えるほどの意欲が湧かなかったのが本音だった。
(1周年の少し前、というと新規CGの怪獣もまだ少なく、よもや推し怪獣たちがほとんど実装されることになるとは知る由もなかった……)

 

元来、特撮番組を題材にしたゲームはどうしてもターゲット層が限られる上、一般的なスマホゲーのように「美男美女など幅広い層にアプローチできるキャラクターで完全新規ファンを誘致する」ことが難しく、この時点でまず集客の難易度が高い。

 

その上でウルバトに入ってくれた、ウルトラシリーズ入りたてのライトユーザーがいたとする。彼らこそがゲームを背負っていく重要な存在であり、彼らにいかにウルトラ怪獣の奥深さや魅力を伝えるかが運営の要だ。しかし、ウルバトは(なぜか)そういったユーザーに厳しい。例えば……。

・怪獣をレベルアップさせるだけではなく、スキル構成までガッツリ考えないと十分にプレイできない

・怪獣が数多く登場するにも関わらず、その知識はちょっとした紹介コーナーと怪獣図鑑(持っている怪獣のみ情報がアンロックされるギャラリー)でしか得ることができない

・メインクエストが薄すぎて怪獣(キャラクター)の紹介という役割を担えていない

(怪獣の特性を反映させたイベントクエストは多いが、知らない人向けの解説はほぼないようなもの)

実際、自分にこのゲームを勧めてくれた友人はニュージェネから本格的に入ってくれたウルトラファンで、それ以外の視聴作品はコスモスとネクサス、マックス。
当人は怪獣というコンテンツを非常に好いていたが、それでもウルバトにおいて知らない怪獣を買うことは片手で数えるほどしかなかったという。

怪獣というコンテンツが好きで、ウルトラシリーズにかなり触れているファンさえこうなのだ、ユーザー母数がとにかく重要なスマホゲーでは不可欠の「ライトなファン層」がどれほどウルバトをプレイし続けてくれていたのか、正直具体的な数字を見たくないくらいには不安が残る。

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(↑怪獣図鑑での解説。最低限の解説はされているが……)

 

更に、一見するとメリットだらけの理想的なシステムに思える「マーケット」にも「大きな売り上げが見込めない」という致命的な欠陥があった。

理由は多々ある。例えば、一般的な「天井」に該当する「即決」システムが約10000円で使えたり、同一の怪獣を複数入手するメリットが(運営終盤まで)なかったり……。そして何よりの原因は「競りがほぼ意味を成していない」ということだ。

前述の通り、ウルバトのマーケットでは(基本的に)1週間の間、1日2回怪獣の出品と落札が行われる。各日11:50と23:50という2回の落札タイミングに向けて、希望者がこぞって入札を行っていく訳だ。
怪獣が早く欲しい人は我先にと入札するため、当然、値段は初出品をピークに右下がりになっていく…………のだが、なんとこのゲーム「怪獣を早期に/高額で落札するメリット」がほとんどない。

怪獣を早期に落札しても、落札した怪獣はレベルもスキルも初期状態のため、実践投入はほぼ不可能。育成にはデイリークエストやウルトラストーンで獲得する怪獣個別の「DNA」というアイテムが必要なため、どのみち実践投入までは一定の時間がかかってしまう。一刻も早く実践投入したい、もしくは何としてもその怪獣が欲しい、というのであれば、天井額の入札によって「即決」すれば最初からかなり育成が進んだ状態で入手できるが、その場合そもそも競りに参加しないことになる。
(「即決」せずに高額で落札した場合は、金額に応じてボーナスアイテムが手に入ったりするが、さほど通貨価値が高い訳でもない。どうして……)

 

このような根本的な問題が放置され続けてきたマーケットにも程なくしてテコ入れがやってきたが、その方法はシステムの改善ではなく「誰もが欲しくなるようなハイスペック怪獣の投入」だった。それは違うよ!

 

Uキラーザウルスやファイブキングなど、ウルバトでは所謂「壊れ」相当の化け物スペックを持つ怪獣が定期的にに場し、良くも悪くも大きな反響を呼んでいた。
そんなインフレの果てに、マーケットシステムを完全放棄する形で導入されたのが「レジェンドキャラクター」たち。これは即決でのみ入手可能=競りが開催されないキャラクター」で、ごく僅かなデメリットと引き換えに、インチキめいた性能を持った壊れキャラクターたちであった。

シンプルにハイスペックな上、必殺技を受けるとプレイヤーの怪獣を身代わりにするウルトラマンベリアルを皮切りに、異常な耐久力とデバフ・状態異常をばらまくガタノゾーア、倒されるとプレイヤーの怪獣のコントロールを奪うグリムドなど多くのボス格キャラクターがこの枠で実装されていき、通常キャラクターのインフレと併せてウルバトそのものが凄まじいインフレに陥ってしまった。

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(↑2回行動や必殺技吸収を備えるハイパーゼットン イマーゴ。ちゃんと翼も生える)

 

それ以外にも、キャラクターの格差を埋めるために実装された限界突破システム「覚醒」などゲームの短所を改善するための様々な仕掛けが行われたが、それらは軒並み「根本的な問題を是正しないまま、外付けで強引に粗を埋めていく」タイプの対処ばかりで、時には問題の是正どころか更なる悪化を招くことさえあった。
徐々に徐々に、ウルバトというゲームの道行きに暗雲が立ち込めていったのである。

 

とはいえ、そこは有能なウルバト運営。危険なテコ入れの裏では改善もきっちり進められており、ブースト周回機能の実装やアンケート結果に応じた怪獣の参戦、イベントクエストやアリーナのシステム改善などが次々と行われていった。

そんなウルバト運営の功績の中でも、特に話題を呼んだのが「ジオラマ」機能の実装。

これはゲーム内のCGモデルやエフェクトをステージに自在に配置することで「自分の思う大怪獣バトルを形にできる」というトンデモ機能で、推し怪獣たちによるドリームマッチやウルトラゾーンめいた大喜利など、様々なジオラマSNSを大いに賑わせていた。f:id:kogalent:20210528192726j:image

(↑オタクは推しと推しを戦わせずにはいられない生き物……)

 

これら様々な紆余曲折の中、改善と改悪のぶつかり合いが繰り広げられていたのが2年目のウルバト。その果てに待っていたのは破滅か……と思いきや、辿り着いたのは非常に良質なゲームバランス、そして平和かつ賑やかな空気感。

激動の末、ウルバトは非常に理想的な状態で2周年を迎えることになったのである。

 

そこから『ウルトラマンZ』で界隈の盛り上がりが最高潮となった年末年始を跨ぐと、前述のニセ・ガイアや人気怪獣のサイバーゴモラ、キングジョーストレイジカスタムなど待望のキャラクターたちが次々実装。当然の如くマーケットは大盛り上がりで、ウルトラマンシリーズ共々『ウルバト』の今後に誰もが胸を高鳴らせていた。


しかし。


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……おん……???????

出品されるのがレジェンドキャラクターの場合もヒントはない。だがしかし「出品をお待ちください」のような一文がないのは初めてだった。

TLが期待と不安で二分される中、その答えはメンテナンス直後に誰もが知ることとなった。f:id:kogalent:20210528131001j:image
「さらば」「LAST BATTLE」の文字。そして、何も出品されてないマーケット。じわじわと現実を理解して、身体がざわつき、「サービス終了」の文字を見つけて呆然とした。

 

2021年3月24日。ウルバトはサービス終了を発表。ウルトラもウルバトも「これから」というタイミングでの、悲しすぎる別れだった。

 


自分の慣れ親しんでいたゲームが終わるというのは「よくあること」だ。ポケモン図鑑を完成させた時。フォルテBXを倒した時。妄想ウルトラセブンを解放し、全ストーリーをSランクでクリアした時……。そういった別れの悲しさは慣れようもないが、『ウルバト』の喪失感は、それらとどこか異なるものだった。

 

前述の通り「これから」というタイミングでの終了となったことや、1年半に渡りプレイしてきたこと。それもその通りだが、それよりも大きかったのは『ウルバト』が自分にとってゲームを越えた概念となっていたこと。

 

ウルトラへの愛に溢れるだけでなく、定期的な番組配信を行ったり、アンケートの回答を律儀にゲームへ反映させたりと、非常に良心的で親しみを持てた運営。そんな運営から毎週のように届けられる「愛と魂が込められた」コンテンツの数々。そして、毎週のようにそんな運営からの贈り物でお祭り騒ぎのブリーダー界隈……。

 

それは『年中盛り上がれるウルトラ』の再来であり、毎月コロコロコミックを買ってクラスメイトと盛り上がったあの日々にどこか近いもののようにも思えた。
ウルバトの存在は、もはや一介のゲームに留まらず、ゲームを媒介にした(運営を含めた)ウルトラファン同士の繋がりや「ウルバトありきの日常」そのものを支える概念になっていたのだ。

 

ウルバトのサービス終了は、ただゲームが終わるだけでなく、そういったコミュニティや日常との別れをも指している。慣れ親しんだ学校からの卒業や部活の引退のようなものだ。

だからこそ、サービス終了の報せには思わず涙してしまったし、これまで実装されたレジェンドキャラクターが総出で襲いかかってくる最終クエストには愛すべき相棒たちで挑んだし、やり場のない気持ちとこれまでの感謝を込めたネオマキシマ砲で全てを消し飛ばした。f:id:kogalent:20210528131321j:image
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それから2ヶ月。

「これで終わりなんだ」という、なんとも言えない虚しさと感慨を引きずりながら迎えた2021年5月26日。いつもより遅い時間に入ったメンテナンスが終わり、『ウルバト』は静かに旅立っていった。


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ウルトラシリーズには「休止期間」が付き物だ。
『80』から15年経って『ティガ』が始まったように。『メビウス』から6年経って『ギンガ』が始まったように。

それはゲームにおいても同じで、『大怪獣バトルRR』で終わりを告げたデータカードダスシリーズは『大怪獣ラッシュ』として一時帰還した後、『フュージョンファイト!』として新生。『ウルトラ』のデータカードダスにおける最長稼働記録を更新し続けている。

そして、そんなデータカードダスシリーズを支えてきたのは、過去に『Fighting Evolution』シリーズなどで作られたCGモデルたちだ。

「光は絆だ。誰かへ受け継がれ……再び輝く」

『ウルバト』は確かに終わった。しかし、いつかまたウルトラを題材としたゲーム作品がリリースされた時、本作のノウハウ、そして何より「本作があったからこそ生まれた/新生したCGの怪獣たち」が、それら次代の光を支えていくのは間違いない。

 

そうでなくとも、これまでにないほど「ウルトラ怪獣」への愛とリスペクトを持って作られた本作は今後もオンリーワンの存在としてブリーダーたちの記憶に生き続け、ウルトラのゲーム史において燦然と輝き続けるだろう。


2018年から2021年。ウルトラにとって苦難の時でも、世界にとって苦難の時でも決してその歩みを止めなかったウルバトと、そんなウルバトを支え続けてくださったスタッフの皆様、本当に、本当にありがとうございました。愛すべき怪獣たちと進む日々は、心の底から楽しく幸せなものでした。

 

さらば、そしてありがとう『ウルトラ怪獣 バトルブリーダーズ』!f:id:kogalent:20210528132844j:image