ディズニーミリしら成人男性、20年越しに東京ディズニーランドの “特別さ” を知る

「ディズニー」とあまり縁のない人生を過ごしてきた。 

ディズニーとピクサーの違いも正直分かっていないし、観てきた作品も『ファインディング・ニモ』『カーズ』『アナと雪の女王』『ズートビア』……くらい。MCU作品やスター・ウォーズはややこしいので一旦置いておくとして、自分にとって一番縁のある「ディズニー」と言えば、やはり東京ディズニーリゾートだ。  

ディズニーランドには小学生の頃に何度か足を運んでいて、中学生の頃に遠足で満喫したのはディズニーシー。確か高校生の時に一度行ったのもシーなので、今回、自分は実に「約20年ぶりのディズニーランド」を体験したことになる。 

昔はともかく、今はもう三十路の異常オタク成人男性。そんな自分が、果たしてミリしらコンテンツであるディズニーのテーマパークを楽しめるのか……? そんな不安をぼんやりと抱えていたはずの自分が今猛烈な勢いでスマホをタップしているのは、まあ、“そういう” 訳で……。  

ディズニーミリしらの三十路異常オタク成人男性に、なぜ20年ぶりのディズニーランドがそこまで「刺さった」のか、(もしかすると既に一般常識レベルの話ばかりかもしれないけれど) 自分の中で特に感銘を受けたポイントを4つピックアップ。この稀有な熱をできるだけ新鮮なうちに書き残しておきたい。

 

 

《目次》

 

 

① 「現実感」を廃するこだわり ー 園内編

 

自分は小さい頃から遊園地やアスレチックが大好きなのだけれど、中でもお気に入りなポイントが2つ。1つはアトラクション……というかジェットコースターの類い。気持ち良いよねジェットコースター。 

で、肝心なもう1つが異世界」あるいは「夢の世界」にいるかのような感覚だ。

 

www.pref.tochigi.lg.jp

 

自分が小さい頃に訪れて、以来ずっと覚えている栃木県のアスレチック施設「ふしぎの船」。トリックアートや万華鏡、レーザーセンサーのような様々な「ふしぎ」を集めたアスレチック施設で、ここの異世界に入り込んでしまった」感がそれはもう凄まじくて……。特に万華鏡部屋の恐怖は今も肌に張り付いていて、この辺りが『ib』のようなホラー作品が大好きなオリジンなのかも、と感じるところ。 

……と、そんな「異世界にいるかのような感覚」をテーマパーク全体で味わえるのが東京ディズニーリゾートなのかなと思っていて。今回訪れたディズニーランドの中には、そこかしこにそのための工夫、あるいは「こだわり」と言えるものが散りばめられていた。

 

例えば、(比較的有名な話なのか自分も聞いたことがあったのだけれど)「 “外の風景” が見えない」こと、そして、園内を回る中で気付いた「園内から極力 “日本語” が廃されている」こと。 

勿論出店のメニューなどは日本語なのだけれど、それ以外=看板だとかゴミ箱だとか、そういった「景観」についてはほとんど日本語が廃されている。そんなことをしたら園内が路頭に迷う客で溢れかえってしまいそうだけれど、ディズニーランドは 

・アトラクションや施設の見た目が非常に特徴的 

・エリアごとに雰囲気が様変わりする 

・園内の構造が「シンデレラ城を中心にした円形」 

……という特性を持ったテーマパークなので、なんとなく歩いていても自ずと目的地に辿り着けてしまう。結果、ディズニーランドは「園内から日本語を極力廃しているのに、不便さがない」という不思議な空間になっており、日本語に振り回されている現実から離れつつ「この雰囲気、もしかしてウエスタンランドに着いた!?」というように、まるでRPGの世界に入り込んだかのような体験ができるのだ。凄いぜディズニーランド……!! 

(まあ、当日の自分はディズニー有識者の友人に全任せだったんですけどね!)


また、そんなディズニーランドの異世界感には「1デーパスポート」というリゾートの基本仕様も一役買っているように思う。  

というのも、この仕様のおかげで、ディズニーランドは一度入園してしまえば基本的に財布が不要。なので、アトラクションに乗る際にお金のことを思い出し「やめておこうかな……」と苦い気持ちになることがない。結構なお値段の1デーパスポートだけれど、その「高さ」の分でこのような「徹底して現実から切り離された世界」を堪能でき、その上無数のアトラクションやステージを楽しめるのだから、その高さは決して「理不尽」でないどころか、むしろお得とさえ言えてしまうのではないのだろうか。

 


② 掛け値なしに美味しい「フード・ドリンク」

 

1デーパスポートのくだりで、自分は「園内では、基本的に財布を出す必要がない」と書いたけれど、その例外が土産屋と「フード・ドリンク」。この2つについてはどうあっても追加料金が発生してしまうのだけれど、だからといってここを「割り切る」ことをしないのがディズニーリゾートの凄いところ。というのも、ディズニーリゾートで提供される飲食物はどれもこれも掛け値なしに「美味しい」ものばかりなのだ。

 

 

幼少期の自分が、ディズニーランドでアトラクションと同じくらい楽しみにしていたのがこのチュロス。当時はチュロスをディズニーランドのオリジナル商品だと思っては親にねだり、その度にOKを貰えたり「次のアトラクションに行くんだからそんな暇ない!」とおにぎりを差し出されしょぼくれたりと色々あったけれど、ここまでハッキリ覚えているくらい自分はここのチュロスが大好きで……。 

後に「チュロスはディズニーの専売特許じゃない」ことを知り、パン屋や某○スタードー○ツでチュロスにがっついた……のだけれど、不思議とディズニーランドで食べた時のような感動がない。あの濃い味付けや、程よくカリカリした食感のハーモニーは、もしかして、“思い出補正” だったのかと不安になったりもしつつ――その真相を確かめるべく、今回もディズニーランドでチュロスを買った。「クレームブリュレチュロス」だ。 

その結果はというと……。

 

 

う、美味ェ~~~~~~~~~~~~ッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

これがま~~~~~~見事に美味しかった。当然小さい頃に比べればボリュームは少ないなと感じてしまったけど、そんなことはどうでもいい。重要なのは、あの濃い味付けや、程よくカリカリした食感のハーモニーが「そのまま」だったこと。ディズニーランドの食べ物が美味しい、というのは断じて「思い出補正」なんかじゃなかった……ッ!!  

それ以外にも、今回はポップコーンのいちごミルフィーユ味、カレー味、塩味を買い食いしたのだけれど、普段ポップコーンをあまり食べない自分からしてもこれらは十分「美味しい」ものだった。以前ディズニーシーで食べた「カプチーノ味のポップコーン」や「餃子ドッグ」、レストランで食べた料理もとても美味しかった覚えがあるけれど、この分だとそれらも思い出補正じゃないんだろうなと思う。す、凄いぜディズニーリゾート……!!

 

 

話を戻すと、徹底的に「現実感」を廃しているディズニーランドにおいて数少ない「お金を払う」機会であるフード・ドリンク。これらは一見「現実から切り離された」世界観の大きな弊害になってしまう――かと思いきや、ところがどっこい、実際はその真逆。 

ディズニーリゾートは、前述のようなチュロスギョウザドッグ以外にも「スモークチキンレッグ」や「ベイクドチーズポテト」など、そこかしこに「普段はあまり見ない」メニューが目白押しで、ドリンクにも「スパークリングドリンク」など一風変わったメニューがちらほらラインナップされている。そして何より、そのどれもが悉く美味しくて、よくある「いかにも安い冷凍食品をレジャー価格で売っている」ものとは一線を画している。結果、ディズニーランドのフード・ドリンクは 「お金を払う必要がある→現実に引き戻される」というデメリットを「 “出来合い” っぽさを感じさせない味」や「ここでしか食べられないメニュー」という付加価値でカバーし、むしろディズニーランドの「特別感」を高めているようにさえ思えるのだ。  

(まあ、園内にはフツーにコカ・コーラのロゴがあってフツーにコカ・コーラが売っていたりもしたのだけれど、スポンサー周りはしゃーなしということで……!)

 

 

③アトラクションの魅力 ー「異世界」へのトンネル

 

ここまで「園内」について話してきたけれど、ここからは肝心要のアトラクションについて。 

実のところ、自分がディズニーランドを楽しめるのかどうか不安だった理由の一つがこの「アトラクション」周り。自分は冒頭でも述べたようにディズニーミリしらであるだけでなく、富士急ハイランドなどでイカれた (褒め言葉) ジェットコースター等にバカスカ乗ってきた人間。そんな自分が、今改めてディズニーランドのアトラクションを楽しめるのか……というのが結構な不安要素だった。が、その不安は見事なまでに的外れだった訳で。

 

 

たとえばこのアトラクション『スター・ツアーズ』。アトラクションそのものは決して珍しくはない「シアター型ライドアトラクション」だけれど、このスター・ツアーズ真の魅力は「ライドアトラクション」そのものというより、むしろこのアトラクションを通して「スター・ウォーズの世界に飛び込める」こと。  

C3ーPOやR2ーD2が当たり前のように喋っていたり、待機エリアではロボットによる持ち物検査が行われていたり、C3ーPOに至っては何とアトラクションにも同乗してくれたりと、その世界観の作り込みぶりは単なる「テーマパーク」の一言では片付けられない凄まじいもの。ディズニーランドにおいては、アトラクションは文字通りの「アトラクション」であるだけでなく「異世界に飛び込むためのトンネル」なのかもしれない。  

このことは他のアトラクションにおいても同様で、例えば『スペース・マウンテン』ならジェットコースターそれ自体の個性よりも「照明や演出による “宇宙航行感” 」を重視していたり、『カリブの海賊』や『ジャングルクルーズ』『イッツ・ア・スモールワールド』などは文字通り異世界を旅する」ことそれ自体に特化したアトラクションだったり……。そして、ある意味その極致と言えるものが『ロジャーラビットのカートゥーンスピン』だ。

 

 

幼少期、チュロスを親にねだり続けていた筆者のお気に入りアトラクションだったのがこのカートゥーンスピン。マウンテンシリーズのようなスリルがある訳ではないこのアトラクションをなぜ当時の自分がそこまで気に入っていたのか、その理由を今回自分は改めて思い知ることができた。この『カートゥーンスピン』、ディズニーランドのアトラクションの中でも一際「異世界感」が強い……というか、もはや異世界だ何だというのを突き抜けた「トリップ感」が満載だからだ。  

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思わず笑ってしまったけれど、このサジェストの通りカートゥーンスピンは正直怖い。入口で動いている車からしてもう不気味だし、待機エリアが「アメリカの路地裏」を模しているのがまた不気味。一見ファンタジーな「命を持っている無機物」も、この雰囲気の中では途端に「愉快なトゥーンキャラクター」から「不気味な妖怪」に変貌している――と、そんな待機列で高まった「気味の悪さ」が弾けるのがアトラクション本番。 

ぐるぐると回り続ける車、ノイズやクラッシュ音のようなBGM、「インフルの時に見る夢」の典型例みたいなカオス極まるビジュアル、情緒が狂う奇怪な色使いのヘンテコ空間……と、それらが組み合わさったこの『カートゥーンスピン』は、いざ乗ってみるとスピードがどうだのスリルがどうだの「自分で回せそうなハンドルが付いてるけどこれフェイクじゃねーか!」というツッコミなど、そんなことがどうでもよくなるほどぶっ飛んだ世界に飛び込めることこそがその真髄。 

幼い頃に美術館に入った時のような、理解を越えた空間に放り込まれた感覚――「トリップ感」と言い換えられそうなそれは、まさに現実で中々味わえない代物。この『カートゥーンスピン』は、「異世界へのトリップ」というディズニーランドの強みがある意味最も詰まっているアトラクションと言えるのかもしれない。

 

 

④ ミリしらでも問題なし! ディズニーランドの「ぼかし」術

 

ここまで長々と書いてきたけれど、まだ自分が当初感じていた「一番の懸念点」に触れていなかった。「ディズニーミリしらでも、ディズニーランドを楽しめるのか」という点だ。

 

自分が今回楽しんだアトラクションは 

・スペースマウンテン 

スター・ツアーズ 

ビッグサンダー・マウンテン 

・ロジャーラビットのカートゥーンスピン 

・ミッキーのフィルハーマジック 

イッツ・ア・スモールワールド 

プーさんのハニーハント 

カリブの海賊 

ジャングルクルーズ 

スプラッシュ・マウンテン 

の10ヶに加えて、ミュージカルショーの『ミッキーのマジカルミュージックワールド』、そしてエレクトリカルパレードそう、なんと自分の履修済み作品と掠っているのが『スター・ツアーズ』しかないのである。  

……のに、自分は今回ディズニーランドをこれでもかというくらい満喫できた。それは「一緒だった友人たちのおかげ」というのは勿論として、これらのアトラクションにおいて「 “物語” をぼかす」という工夫が行われていたことも大きいと思う。  

その例として挙げたいののが、今回が人生初体験となったアトラクション『プーさんのハニーハント』だ。

 

 

くまのプーさんと言えばディズニー作品の中では有名も有名の超大御所。けれど、自分はこのプーさんを作品の中で見たことがなく、知っているのは「プーさんははちみつが好きで100エーカーの森に住んでいる」ことと、「 “何もしない” をしているんだッ!」というやたらジョジョめいた名言があることくらい で、あとは強いて言うならホームランダービー ……という極めてアレな有様なので、正直プーさんのアトラクションに臨むには罪悪感があった。「プーさんを全く知らないのに、プーさんのアトラクションを楽しんでいいのか」みたいな。 

が、いざ並んでみると、程なくしてどうやらその心配が見当違いだったらしいことが分かった。このアトラクションは「ビジターがプーさんのストーリーを理解している」ことを全く求めていないのである。

 

 

この『ハニーハント』で感銘を受けたのは、何よりもまずアトラクション入口の外観。巨大な「絵本」の中に入口があるという、このアトラクション……ひいてはディズニーランドのコンセプトをそのまま体現したかのようなデザインにグッと来てしまったし、中の待機エリアにも巨大な本がたくさん置かれていて「おぉ……」と思わず声を漏らしてしまったり。 

しかし、驚かされたのはそれらの本がしっかりバッチリ「英語で書かれている」点。こうなると、そのストーリーは絵本の絵と、待機エリアで流れているナレーションから察するしかないのだけれど、絵から分かるのは「プーさんがハチミツを蹂躙した結果、その罰を受けた」らしいことくらいで、ナレーションはボリュームが低く設定されているのか、会場の賑やかさに負けていてあまり聞こえない。 

「ストーリーの理解が必要なアトラクションでもないし、そもそもそんな複雑なストーリーがある訳でもなし」と言われたらそれまでかもしれないのだけれど、どうにもこのディズニーランド、どのアトラクションでも=『カリブの海賊』や『カートゥーンスピン』などにおいても、同様に「意識的に“ストーリー”をぼかして」いる節が感じられるのだ。  

そのことに確信が持てたのが、園内で行われるミュージカルステージの『ミッキーのマジカルミュージックワールド』。

 

 

この『ミッキーのマジカルミュージックワールド』は、ミッキー、ミニー、ドナルド、グーフィーを主人公に、豪華絢爛な演出、ダンス、音楽が飛び交う圧巻のミュージカルステージ……なのだけれど、このステージもこれといった「ストーリー」はない。けれど「これといったストーリーがない」おかげで、自分はこのステージに出てくるキャラクターを知らないまま、ステージで展開するパフォーマンスやライブに集中し、その魅力を味わうことができた。  

これは断じて「ディズニーが物語を大切にしていない」と言いたい訳じゃない。もしここで「物語」が展開されたなら、「ミッキーたちのキャラクター性を知らない」「知らないキャラクターがたくさんいる」自分のようなミリしらは少なからず置いてきぼりを食らってしまう。一般的な「元ネタがある舞台作品」ならともかく、ことディズニーランドは「ディズニー作品のテーマパーク」という前提を越えたコンテンツ。そのため、ディズニーランド内の舞台やアトラクションは「敢えて物語性を “ぼかす” 」ことで、作品を知っている人も知らない人も、どちらも平等に「そこにあるエンターテインメントを純粋に楽しませようとしてくれている」のではないだろうか。

 

 

おわりに / まとめ

 

「現実感」を廃する園内のこだわり。 

「フード・ドリンク」の作り込み。 

異世界」へのトンネルとしてのアトラクション。 

恣意的な「物語性」のぼかし。 

まとめると、これらが自分の「ディズニーランドが“刺さった”」ポイントたち。こうして、あの頃大好きだったディズニーランドが改めて「刺さった」ことは、同園が大好きだったのに『ディズニー』コンテンツに触れてこなかった自分をそれでも優しく迎え入れてくれたようで本当に嬉しかったし「あの頃の特別」が「今触れても特別だった」というのは、どんなジャンルでも嬉しいもの。  

さて、こうなるとやはり気になるのはディズニーシー。「あの頃の特別」にもう一度出会えるその日を楽しみにしつつ、真面目にせっせと貯金に励んでいきたい。言うて高いからね、ディズニーリゾート!!!!!!(台無し)

 

 

……あ、それと、この際なので一つ自慢話をしていいでしょうか。

 

エレクトリカルパレードにて~

 

ぼく「アッーーー!! チップとデールじゃん!!!!!こっち!!!!こっち向いて!!!!!!」

 

「クルッ」
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「パシャッ」

 

ぼく「やったぜ。」

 

  終
制作・著作
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    L E N T