こがれんアーカイブ

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感想『トップをねらえ!』- 35年の時を超えて尚輝く、ガンバスターという伝説と “挿入歌” の最高到達点

むかーしむかし、でもない今から15年ほど前、中学生でありながら「BOOK・OFFでフィギュア誌を買う」ことを密かな楽しみにしているオタクがおったそうな。ぼくです。  

「フィギュア誌」というのは、今も刊行され続けている『フィギュア王』や『宇宙船』などのこと。フィギュア系商品の情報は勿論、フィギュアと縁の深い「特撮」や「ロボットアニメ」などの情報・インタビュー等も多数掲載されたサブカル雑誌で、それがたったの100円+税で買えてしまう中古書店はまさに宝の山。BOOK・OFFを見かける度に雑誌棚に足を運び、持っていないバックナンバーを探す……というのが、いつの間にか当時の日課になっていた。 

自分が初めて『トップをねらえ!』と出会ったのもそんなフィギュア誌でのこと。しかし、それはガンバスターではなく――

 

 

「こっち」の方。  

今でこそ最高だぜェ~~~! と騒ぎたくなるユニフォーム姿のノリコも、そういったことに興味と罪悪感が満載だった当時の自分にとっては早すぎた刺激物。結果『トップをねらえ!』という名前は、思い出のアルバムの割と恥ずかしい部分にしまいこまれ、長らく出会うことはなくなる――はず、だった。  

この時は、よもや『トップをねらえ!』の正体が激アツバカ泣きスーパーロボットアニメであり、15年後の自分が劇場の大スクリーンで鑑賞し号泣、挙句真性の「オールタイムベスト」に刻まれる作品にまでなろうとは、これっっっっぽっちも予想していなかったのである。


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引用:OVA『トップをねらえ!』特報 5月26日 (金) より劇場上映! - YouTube

 

《目次》

 

トップをねらえ!』の “巧さ”

 

トップをねらえ!』は、1988年にOVA全3巻 (全6話) でリリースされたロボットアニメで、かの庵野秀明氏が初めて監督した商業映像作品としても知られている――が、自分にとってはそもそもこの作品が「ロボットアニメ」だったことが何よりの衝撃だった。  

そのことを知ったのは、高校生になり、ニコニコ動画という魔境を知ってしまった頃。近作に『機動新世紀ガンダムX』と『機動戦士ガンダム00』が参戦していたことで興味を持っていた『スーパーロボット大戦』シリーズのまとめ動画を見ていたところ、そこに突如として本作の主人公=ノリコが登場。ここで初めて『トップをねらえ!』がロボットアニメだったと知り、その数年後には同じくスパロボ繋がりで『トップをねらえ2!』や『トップをねらえ! 〜Fly High〜』という名曲の存在を知ることとなった。 

この頃からトップをねらえ!を見たいとは薄々思っていたものの、自分に二の足を踏ませていたのはその「タイトル」。というのも、『トップをねらえ!』というタイトルは考えるまでもなく『エースをねらえ!』のパロディであるし、その上でノリコのパイロットスーツがあのユニフォーム……となると、ひょっとして本作は全体的にコメディ寄りなのかもしれない、熱いのは『トップをねらえ! 〜Fly High〜』という歌だけなのかもしれない。それだけではないからこそ名作と言われているのだろうけれど、「全6話」という話数で本当にそこまで面白い話が展開できるのか……? と、そんな期待と不安でどんどん視聴を先延ばしにし続けていた――そんなある日のこと。

 

  

今がその時だ

今がその時だ

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今を逃したら『トップをねらえ!』を見る機会が2度と訪れないような気がして、ここでようやく視聴を決断。レンタルDVDで4話まで視聴し、良ければ劇場へ「後編 (OVA第5・6話) 」を見に行く……というプランを立て、15年の時を経て遂に『トップをねらえ!』との邂逅を果たすこととなった。

 

アクティブ・ハート

アクティブ・ハート

 

かくして見始めた『トップをねらえ!』は、『超時空要塞マクロス』などで人気を集めた美樹本晴彦氏がキャラクター原案を努める他、昭和時代のアニメ・特撮作品に対するオマージュがふんだんに盛り込まれたパロディ作品。 

しかし、その最大の特徴は「パロディ作品」という入りやすい入口から、驚くべきスピードで「激アツ本格SFロボットアニメ」へと変貌を遂げていくことだろう。 

 

宇宙怪獣との遭遇で消息不明となった父を求め、沖縄女子宇宙高等学校で宇宙パイロットを目指す主人公=タカヤ・ノリコ  (CV.日髙のり子)  は、ずば抜けた体力だけが取り柄でマシーン兵器の操縦もままならない劣等生。しかし、憧れの「お姉様」であるアマノ・カズミ (CV.佐久間レイとの交流や、ノリコに才能を見出した「コーチ」ことオオタ・コウイチロウ (CV.若本規夫) の特訓で「努力と根性」に目覚めたノリコは大きく成長。見事、パイロット候補生として宇宙への切符を手にするのだった――。

 

これが、第1話『ショック! 私とお姉様がパイロット!?』の大まかな内容。落ちこぼれの主人公を導く「コーチ」や「憧れのお姉様」の存在、努力と根性というキーワード、「偶然発現させた伝説の技」によって上級生を打ち負かす初戦……と、第1話は (元ネタを知らない自分でも)「どこかで見たような展開」だらけの紛うことなきパロディ作品。しかし、このエピソードの魅力はそういったパロディ要素ではなく、むしろ「数多のパロディを組み込みながらも、堅実なエンタメとしてそつなく仕上がっている」という作劇の手腕だろう。 

ノリコの過去と夢。陰湿ないじめと挫折。カズミとの出会いや交流、コーチの厳しさと優しさ、ノリコの成長と克己……と、本作は少なく見積もっても前後編になりそうな圧倒的な密度を「巧妙なシナリオ運び」と「声優陣の演技による説得力」によって僅か30分で捌き切っている。だからこそ、続くエピソードでそれまでのパロディ要素・学園要素が消し飛び、突如本格SFが始まったとしても「学園編が1話で終わった!?」という驚きを「学園編、楽しかったな……」という満足感があっさり越えてくれるし、なんなら学園編を数週間見てきたような錯覚すら起こしてしまうのである。  

(この「尺不足をシナリオと声優陣の演技で補う」という手法が、後にあるシーンで絶大な効果を発揮することになる)

 

 

第2話以降、本作は敵である宇宙怪獣や「ウラシマ効果」といったキーワード、他各種設定の登場で一気にSF色が増していき、パロディの方向性も作劇テイストも大きく様変わりしていくのだけれど、物語の軸=「ノリコの青春譚」は一切ブレることがない。 

ウラシマ効果」概念が初登場する第2話『不敵! 天才少女の挑戦!!』では、後に親友となるユングフロイト(CV.川村万梨阿)との出会いや、父の船=「るくしおん」との再会と現実が描かれ、宇宙怪獣との初遭遇となる第3話『初めてのときめき☆初めての出撃』では、ノリコとスミス・トーレン (CV.矢尾一樹) との淡い初恋が描かれることになる。しかし、本作の巧さはこれら「等身大の青春物語」がSF要素としっかり噛み合っており、むしろ互いを引き立て合っているようにさえ思えること。 

約束通り「帰ってきた」父親との静かな誕生日パーティー、そして、あまりにも無情なトーレンとの別れ……。後の『新世紀エヴァンゲリオン』にも見られるこの絶妙なバランス感覚こそが、本作を「難解なSF」ではなく「時を超えて愛されるエンタメ」として成立させている最大の要因と言えるかもしれない。

 

 

挿入歌の “頂点” と奇跡の4分

 

前述の通り、本作の肝となっている「バランス感覚」。ある意味、これを最も象徴しているのがノリコたちの着用するドスケベ体操服ユニフォームだろう。

 

 

当時中学生の自分に衝撃を与えた、どう見ても「体操服」なのにその一言で表すには際どすぎるし、そもそも前提として体操服ではなく戦闘服、というどこからどうツッコめばいいのかまるで分からないこのユニフォーム。しかし、本作を見ていてもどういう訳か「そうはならんやろ!!」というツッコミが湧き上がってこないのだ。  

というのも、本作はこのユニフォーム周り以外はSFとして徹底的に作り込まれており、マシンの操縦から宇宙で起こる超現象に至るまで (少なくとも作品内では) ちゃんと筋が通っているように見える。そんな「しっかりした」世界で誰一人ノリコたちのユニフォームに突っ込まないので、結果「このユニフォームも、何かしらちゃんとした理屈があって着てるんだろうな」と脳内で補正が働く=このどう見てもSFに馴染まない「癖」の塊を、不思議と違和感なく受け入れてしまえるのである。こうもロジカルに性癖を押し通すアニメが35年前に完成していたなんて、人類って最高よ……!(感涙)

 

そして、本作終盤ではこの体操服理論 (?) を最大限に活かした存在が現れる。第4話『発進!! 未完の最終兵器!』で起動する対宇宙怪獣決戦用人型超ド級兵器にして、全長200メートル・重量9400トンを誇るスーパーロボット界の怪物、その名もガンバスター!!

 

 

イデオンがジムの神様であるなら、こちらはザクの神様 (もしかして “ガンダムを倒す者” 、でガンバスター!?) だとでも言わんばかりの屈強なビジュアル。ノリコとカズミのダブルパイロットで真の力を発揮する合体システム。ウルトラセブンやマッハバロン、ゲッターロボに果ては流星人間ゾーンと、これでもかというくらい詰め込まれたオマージュ武装による超絶火力……! 

とんでもない「ロマンの塊」である反面、これまで本作が積み上げてきたリアリティを吹き飛ばしかねない「諸刃の剣」ことガンバスター。しかし、本作はガンダムでもマクロスでもなく『トップをねらえ!』。努力と根性が全てを動かし、ノリコたちが体操服でロボットを駆る世界だからこそ、ガンバスターは「リアルな世界に突如現れた異物」でもなく、物語に冷や水をかけるデウス・エクス・マキナでもなく、ノリコたちの想いを乗せた希望の「スーパーロボット」としてその魅力を存分に発揮してくれるのである。  

 

ガンバスター

ガンバスター

 

しかし、そんなただでさえ熱いロボット=ガンバスターの活躍を「伝説」にまで押し上げてみせたのが『トップをねらえ!』という作品の真骨頂。 

その「伝説」こと、第5話『お願い!! 愛に時間を!』のクライマックスは、自分の性癖全てに風穴を開けていく「オールタイムベスト」にして、魂に深く深く刻まれる「奇跡の4分間」だった。

 

 

地球へ迫る無数の宇宙怪獣に対し、余命幾ばくもないコーチは「ヱクセリヲンの大型縮退炉を暴走させることで人口ブラックホールを生み出し、宇宙怪獣を一網打尽にする」という作戦を立案。 

バスターマシン1号・2号に搭乗し、無人爆弾となったヱクセリヲンと共に宇宙怪獣軍団の只中へ飛び込んでいくノリコとカズミだったが、彼女たちが進めば進むほど、地球ではウラシマ効果によってその数倍以上の時間が過ぎていく。それはカズミにとって「自らの手で愛するコーチとの時間を終わらせる」も同然の行為であった。

 

「私、動けない!もうこれ以上動けない!!」
「お姉様……」
「あの人が死んでしまう……。地球に帰ったって、もうあの人はいないわ。私まだ何も言ってないのに! 好きだとも、愛してるとも、抱いてとも言ってない! 何一つ、言えなかったのよぉ……!」
「……」
「本当は、あの時キスして欲しかった。抱いて欲しかった。好きだと言って欲しかったのよ。それなのに、それなのに……このままもう会えなくなってしまうなんて、絶対に嫌ぁぁぁっ!!」 

「お姉様、しっかりしてください! このままじゃやられてしまうわ! コーチの6ヶ月はどうなるの? 本当は、コーチだってお姉様と一緒にいたいはずよ! 最後の6ヶ月よ!? 本当は “行くな” と抱きしめてやりたかったはずよ! それをコーチは、自分を捨てて……その半年をあたし達に、ガンバスターに懸けたのよ。これはその6ヶ月なのよ、お姉様!」 

「……」 

「いいえ、コーチだけじゃないわ!キミコもユングも、自分達の未来を、みんなあたし達2人に託したのよ! そのあたし達が負けたら、みんな今まで、何の為に生きてきたのよ!」 

「……」 

「あたし達は! ……あたし達は! 必ず勝たなきゃいけないのよ!! お願いカズミ……戦ってぇッ!!」 

 

 

「……わかったわ、ノリコ。合体しましょう!」
「お姉様!」 

(あなたの6ヶ月……この6ヶ月、戦ってみせるわ、あなたの為に。それがあなたと同じ時を生きる、唯一の方法なのね) 

「「ガンッッ! バスッッ! タァァァァァッッッッ!!」」  

「ノリコ、ヱクセリヲンは健在。あたし達の左下方にいるわ」
「お姉様、アレを使うわ!」
「えぇ、よくってよ」
「うわああぁぁぁぁーーーーっ!! スーパァァァァァッッ!!」
「イナズマァァァァッッッ!!」
「「キィィィィィィィィィッッッック!!」」

「合体したガンバスターを、ただのマシンと思わないでよ! コーチの! ……コーチの! コーチの心が、こもってるんだからあぁぁッ!!」 

「ノリコ、敵機直上。急降下!」
「ッ!」
「 下からも来るわ、約3000!」
「ホーミングッ! レーザーーーッ!!」
「みんなの未来! あたし達の未来! ガンバスターで創ってみせる!!」
「その通りよ! だから、邪魔しないでッ!! バスターー! ミサイル!!」 

「ノリコ離れて、直衛に入るわ! ……反撃が来るわ。敵をこちらに引きつけるのよ、できるだけ多く、できるだけ遠くに……。来るわ、集中砲火! 約20000!!」
「バスター……シールド!! そんなもので、あたし達がやられると思ってェッ!?」 

「あと2000万キロ。それまで保てばいいわ。――え!?」
「下も!?」
「参ったわね。まさか、こんなものもあったなんて」
「思ってもみなかったわ」
「……流石ね」
「でも、コーチの作ったガンバスター、甘く見ないで欲しいわ! ダブルバスターーー! コレダーーーーッ!! うわああぁぁぁぁぁーーーッ!!」

-「トップをねらえ!」 第5話『お願い!! 愛に時間を!』より

 

人生!!!!! 最高の!!!!!!!!!! 4分!!!!!!!!!!!!!!

 

正直、これまでカズミとコーチの恋愛についてはしっくり来ていなかった。確かにこれまで何度も「匂わせ」はあったものの、前提として2人にはあまりに大きな年齢差がある。周囲に隠れて努力を続けた結果「お姉様」と慕われるようになったからこそ、逆に誰かに「甘える」ことに飢えていたであろうカズミがコーチのような大人の男性に父性を求めてしまうのは道理と分かっていても、「コーチがそれに応えるなら、もっと別の方法があったのではないか」と (時代背景の違いを踏まえても) 思えてしまったからだ。……というこの認識が、あまりにも真に迫ったカズミの慟哭で見事ひっくり返されてしまった。その迫力と説得力によって、逆説的に「カズミとコーチの間には相応の出来事があった」と、「カズミの恋は紛れもない “本気” なんだ」と心底思わされてしまったのだ。  

そして、そんなカズミの「何も言えなかった」という嘆きは、何も伝えられないままに初恋の相手=スミスを喪ったノリコにこそ深々と突き刺さるもの。だからこそ、そこでカズミを毅然と激励する彼女の姿にはこれまでの「成長」が詰まっているし、みんなの想いを受け継ごうと奮い立つ彼女の言葉がカズミの慟哭と同じかそれ以上に胸を打つ。 

極限までボルテージが高まったところで、ノリコの口から遂に零れ出る「カズミ」呼び――。これ以上ない最高潮を一瞬の間が優しく受け止めて、からの「……わかったわ、ノリコ」で流れ出すイントロ!!

 

 

そしえ、メロディが弾けるその瞬間に「合体しましょう!」と覚醒するカズミ……! イントロの入りだけで泣いてしまったのに、ここからのシーンはその全てが泣き所。 

カズミのモノローグを交えての合体。「「ガンッッ! バスッッ! タァァァァァッッッッ!!」」の名乗り。「お姉様、アレを使うわ!」「えぇ、よくってよ」の掛け合いから放たれるスーパーイナズマキック。そして、ノリコの「合体したガンバスターを、ただのマシンと思わないでよ! コーチの! ……コーチの! コーチの心が、こもってるんだからあぁぁッ!!」という雄叫び……! 全部が!!!!!!最高!!!!!!!!!!!!!!!!!  

 

 

ここまでの一連は画も台詞も演技も全てが素晴らしいのだけれど、挿入歌オタクとしての見所はやはりトップをねらえ! 〜Fly High〜』
1988年といえばまだまだ「挿入歌」という概念の黎明期。そんな中で、歌詞がノリコとカズミの掛け合いになっている=実質的なキャラクターソングであり、自分が本編を視聴する前から虜になってしまったほどの熱いメロディを持ったこの歌は、それ自体が「挿入歌界の革命児」であることは勿論、その「使われ方」までもが革命的。 

というのも、『トップをねらえ! 〜Fly High〜』は、イントロの入り方から音合わせ (音ハメ) に至るまで、その演出全てがまさしくパーフェクト。この1回きりの挿入歌が単なるBGMというだけではなく、ノリコ、カズミ、ガンバスターと並ぶ「主役」とように扱われているのがして演出されているのが本当に嬉しかったし、だからこそ「ノリコ・カズミのスーパーイナズマキックと共に1番が終わる」美しさと鳥肌が立つほどのカッコよさには、凄まじい満足感と「もっと聴いていたい」という気持ちで一杯になってしまった。 

……ので、そこから更に2番が始まった時は、思わず劇場で「嘘ォ!?!?!?!?」と叫びそうになってしまったし、2番どころかCパートに入った=大好きな挿入歌が「 (ほぼ) フルコーラスで流れる」という贅沢極まる事態が確定した瞬間には、ボロボロに涙を流しながらスタッフ感謝を捧げることしかできなくなっていた。  

 

トップをねらえ! ~FLY HIGH~

トップをねらえ! ~FLY HIGH~

  • 佐久間 レイ & 日高 のり子
  • アニメ
  • ¥255

 

2023年現在、アイドルアニメや『マクロス』シリーズなどの「歌」を特別にフィーチャーした作品でなくとも、『仮面ライダー鎧武』第45話や『蒼穹のファフナー EXODUS』第9話など「挿入歌が (ほぼ) フル尺で使われる」という演出は折に触れて目にすることができる。 

しかし、この『トップをねらえ!』は実に35年前=1988年の作品。この試みは今とは比較にならないほど奇抜なものであっただろう。それだけ作り手がこの歌を大切にしてくれたこと、そして、この『トップをねらえ! 〜Fly High〜』が、自分の愛する「挿入歌」文化を盛り上げる大きな役割を果たしてくれたであろうこと。圧倒的なカタルシスに加え、そんな感謝と感激で情緒と顔面がぐちゃぐちゃになりながらも、しっかりとコーチとカズミの再会を見届けてそっと手を合わせた。ありがとう、『トップをねらえ! 〜Fly High〜』。ありがとう、『トップをねらえ!』……!!

 

 

オカエリナサト」への葛藤

 

などと、すっかり最終回後のような余韻に浸ってしまっていたけれど、本作にはまだ最終回が残っていた。

 

 

最終回『果てし無き、流れのはてに…』。前回から半年を経たノリコ、そして15年の月日を経たカズミが宇宙怪獣との最終決戦に臨むエピソードだが、正直、冒頭から漠然とした「嫌な予感」があった。 

最終回直前の凄まじい盛り上がり。 

庵野秀明監督作品。 

どこか異質な雰囲気で進む展開。 

……あの、これ『新世紀エヴァンゲリオン』最終回みたいなことにならないよね!? と。

 

 

第5話の『トップをねらえ! 〜Fly High〜』でスタッフが燃え尽きてしまったのでは。あるいは予算が消し飛んでしまったのでは。その結果 (脚本は庵野氏ではないけれど) 消化不良ないし鬱エンドで終わったりしてしまうのでは……。そんな不安と懸念でテンションが下がり、15年経って凄まじい美人になったカズミにテンションが上がり、かと思えば「カルネアデス計画」が静止画で描かれることに「や、やっぱり力尽きてるんじゃ……」とまたテンションが下がり (今思えば、予算があろうとなかろうと、この時代であの規模の艦隊戦を描くにはこれしかなかったのだろうなと……) ユングとカズミ、ノリコとキミコのやり取りを思い出して「いいや、そんなことにはならんはず……!!」とテンションが戻ったり……と、もっと集中しろと怒られたら反論できないほどの葛藤を繰り広げながら臨んだ最終話。 

期待と不安の乱高下は治まるどころかどんどんヒートアップしていき、ガンバスターがバスターマシン3号内部へと侵入した瞬間の「これ『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer- 』の元ネタ!?!?!?」という驚愕と「死亡フラグじゃん!!!!!!!!」という絶望とで盛大に爆発した。 

ノリコとカズミ、そしてユングのやり取りには胸を打たれたけれど、それ以上に爆縮までの一連はどれもこれもが凄まじい死亡フラグガンバスターが縮退炉を取り出す姿が『ゲッターロボ』における武蔵の自爆シーンにそっくりだった時は頭を抱えてしまったし、ノリコの「ごめんキミコ! もう会えない!」には天を仰いでしまったし、突然の「1万2千年後」には絶望を通り越して「何か始まったが!?!?!?!?!?」と大混乱だった。どのくらい混乱していたかというと、これがかの有名な『創聖のアクエリオン』の元ネタだとすぐに気付けないくらいには混乱していた。他にないだろ1万2千年なんて表現!!

 

トライ Again・・・!

トライ Again・・・!

 

……と、そんな精神状態だったこと、そしていくつかの気がかりがあったことで、惜しいことに自分はあの「オカエリナサト」に初見では100%純粋な感動を得ることができなかった。  

ガンバスターから赤い光になって飛び出したノリコとカズミは本当に生きているのか? 身体は消滅し、魂だけが彼女たちの姿を取っていたのではないか? 

「オカエリナサイ」というメッセージを灯したのは人類なのか、それとも、彼らが残したシステムなのか? 

ノリコたちが当時の地球を守り切ったことは間違いないだろうし、周囲の時間から取り残されていく切なさが描かれ続けた果ての「おかえりなさい」には感動しない方が無理というもの。 けれど……もとい、だからこそ「あのエンディングの美しさを、どこまで素直に “美しいもの” と受け取っていいのか」に少しだけ迷いと懸念があった。 

言ってしまえば、彼女たちが生きて帰還できたこと、そして「その時代の人々に迎えてもらえた」のだという裏付けのようなものが (それを敢えて描かないからこその美しさがあると分かってはいても) どうしても欲しかったのだ。

 

……だからこそ、その真相に少しでも近付けるかもしれない「あの作品」をこの目で確かめない訳にはいかなくなった。

 

 

そう、トップをねらえ2!である。 

トップをねらえ!』以上に何も知らないこの作品に、果たして自分の求める「答え」があるのか。 

そもそも本作は『トップをねらえ!』の続編なのか外伝なのか、あるいは全くの別作品なのか。 

この作品を経て、本シリーズは自分にとって心からの「オールタイムベスト」となるのかどうか――。 

その顛末、そして『トップをねらえ2!』への想いの丈は、また次の記事にて思い切り語っていきたい。