20年越しに振り返る『仮面ライダー 正義の系譜』“ゲームならでは” の演出が魅せる、唯一無二のクロスオーバー作品

一昨年に発売された、『仮面ライダー』シリーズの最新ゲームソフト『KAMEN RIDER memory of heroez』。 

W、オーズ、ゼロワンの3人がオリジナルストーリーを繰り広げるクロスオーバーアクションADVということで話題になったこのゲームに、隠れモチーフと (ごく一部のファンの間で) 目され (ごく一部のファンの間で) 話題となった、ある幻のゲームをご存知だろうか……。


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その名も仮面ライダー 正義の系譜』。 

「最も好きなゲームは?」と聞かれた時に筆頭候補に挙がるくらいには愛してやまない思い出のゲーム……なのだが、悲しいことに知名度が絶望的に低い。具体的にどのくらいかというと、このゲームについて語らえる友人が2人しかいないくらい知名度がない (とてもかなしい)。 

しかし、本作は仮面ライダーシリーズが50周年を迎えて一層盛り上がる今こそ知られるべき隠れた名作。一人でも多くのライダーファンにこのゲームを届けるために、今回は極力ネタバレを抑えつつ、本作『正義の系譜』を紹介していきたい。

 

 

仮面ライダー 正義の系譜』は、2003年にバンプレストから発売されたPlayStation2専用ゲームソフト。   

タイトルの通りハイターゲット向け作品である本作は「仮面ライダー1号、V3、BLACK、アギト」の4人を主役に据えたクロスオーバーゲームで、なんとジャンルは仮面ライダーでは珍しい3Dアクションアドベンチャー。不気味な発電所を4人の仮面ライダーで探索し、謎を解き、現れる怪人たちを倒しつつ物語を進めていくという「仮面ライダー版のバイオハザード」とでも呼ぶべき作品だ。 

仮面ライダーの3Dアクションゲームとしては人気シリーズの『バトライド・ウォー』が爽快感やアクション性で大きく勝る一方、本作独自の魅力として挙げられるのが「本人ボイスの1号、V3、BLACK、アギトが織り成す重厚なクロスオーバーストーリー」である。 

「何? そんな贅沢な話があるか! みんな疲れているのか……」などと思ったそこのあなた、是非こちらの動画を見て欲しい。 
(公式サイトさえない時代のゲームなので、個人アップロードのものを掲載させて頂きます)

 

 

か、カッコよすぎる……………………………… 

世の中にはOP詐欺なんてものもあるが『正義の系譜』は嘘を吐かない。本編にはこのOPに使われているものと同様の上質なムービーがふんだんに使われており、物語をこれでもかと盛り上げてくれる。しかも全編フルボイス!   

本作には、メインの4ライダーを演じる藤岡弘、氏ら4人に加え、ゲストPCのライダー2号/一文字隼人を演じる佐々木剛氏を加えた5人ものレジェンドキャストが参加。いずれも全く違和感のない「当時らしさ」全開の演技を伴っての参戦で、およそ2003年のゲームとは思えない豪華ぶりだ。 

(更に、ナレーションを担当されるのはシリーズお馴染みの中江真司氏。“あの頃” の雰囲気を堪能できること請け合いである)

 

……と、そんなボイス事情だけでも5桁の価値がある本作だが、他にもその魅力は数え切れない。例えば……   

・人間態と変身態の使い分けができる   

・今でも通用する完成度のCGモデル   

・各ライダーごとに12ヶ用意された大迫力の必殺技ムービー   

・オリジナル/版権問わず良質なBGM (ボス戦では各ライダーのメインテーマ2曲のインストアレンジからどちらかが流れる嬉しい仕様!)   

・各ライダーで異なる、原作準拠のSE   

(全てショッカーとゲルショッカーの怪人だが) メジャー・マイナーが入り乱れた壮絶な敵怪人のラインナップ   

・ライダーのオリジナルキャストがガイドしてくれるセーブ/ロード画面 (!?)   

……などなど。 

全てを紹介するとブログではなく論文になってしまうので、ここでは最大の目玉である「豪華キャストのフルボイスで繰り広げられるクロスオーバーストーリー」に的を絞り、ネタバレを極力抑えつつ大筋を紹介したい。


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『正義の系譜』の物語は「4つの時代の同じ場所」を舞台に展開される。その場所とは、   

仮面ライダー1号、2号が活躍する “1972年”  (ゲルショッカー出現から間もない頃) の、稼働間もない地熱発電所   

仮面ライダーV3が活躍する “1974年”  (ヨロイ元帥が大幹部の時期)地熱発電所   

仮面ライダーBLACKが活躍する “1988年” (シャドームーン出現の直後) の、閉鎖され廃墟となった地熱発電所   

仮面ライダーアギトが活躍してから少し経った “2004年” (TV本編の数ヵ月後) の、新設された原子力発電所   

……の4つ。これらの時代を股にかけて暗躍する謎の敵に対し、その気配を察知したライダーたちが「それぞれの時代の同じ発電所」に向かうという導入だ。

 

かくして始まる本作の物語は、大まかに前半と後半に分けられる。 

前半は各ライダーの単独シナリオで、1章ではアギト=津上翔一、2章ではBLACK=南光太郎、3章ではV3=風見志郎、4章では1号=本郷猛を操作。発電所を異なるルートで探索し、立ち塞がる怪人たちを倒しつつ、最終的に4人とも同じ「とある場所」――発電所内に密かに建設された敵アジト、その奥深くにある通信機前に辿り着く。     

f:id:kogalent:20220228071943j:image(章ラストに入る演出が各ライダー準拠のアイキャッチになっているという嬉しいファンサービスも) 

ここに至るまでの各ライダーの道のりは、仲間のいない孤独なものであったこと、時折現れる謎の存在=「邪眼」が「目」そのものとしか言いようのない奇怪な生命体であること、そして何より舞台となる発電所の不気味な雰囲気から非常にホラーテイストが強い。だがそれだけに、満を持してライダー4人が邂逅するシーンは非常にドラマチックな仕上がりになっている。

 

4人がアジト最奥で発見した通信機。それは異なる3つの時代へと通信が繋がっていた。  

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アギトの「こちら2004年、誰か聞こえますか?」という呼び掛けに応じる1号、BLACK、V3。後輩である風見がライダーとなっていることに驚く1号に対し、タイムパラドックスを懸念して誤魔化すV3、などファンには嬉しい掛け合いもありつつ、4人はそれぞれが得てきた情報を共有する。  

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4人の情報を繋ぎ合わせた結果、「発電所が通常の時間の流れから切り離され、相互に繋がった隔離空間である」こと、そして「それぞれの時代で進む4つの計画のうち、いずれか1つでも成功したら歴史が変わってしまう」ことが判明。   

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時空を越えた力を持つ敵を前に歯噛みするアギトたちだったが、1号はこの特殊な空間内であれば、お互いに物の受け渡しができることをはじめ様々な形で協力し合える (要はゲームシステムの説明だが、説明が自然で違和感がない) ことに気付き、3人に「協力して敵の野望を打ち砕こう」と呼び掛ける。  

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そんな4人の通信を嗅ぎ付けて各時代に現れる戦闘員。1号の「死ぬんじゃないぞ!」という呼び掛けを背に、3人が戦闘を開始した所でイベントは終了。物語は後半へ突入することとなる……と、このような “本人感” たっぷりの濃厚なクロスオーバーを経て、本作のメインであり大ボリュームの5章が幕を開ける。

 

5章と6章 (最終章) から成る本作後半では、1号=本郷が提案したように、各時代で相互に「アイテムの共有」「エリア解放状況の共有」といった様々な協力が可能となる『ジェネレーションザッピングシステム』が解禁され、4人のライダー (時代) を切り替えつつ相互に助け合い、敵の野望に立ち向かっていく……という熱い共闘が描かれる。  

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そんな4人の結束に比例するかのように、この5章からは敵の “大幹部” も本格参戦。   

アギトの時代には地獄大使が、BLACKの時代にはブラック将軍 (ブラック繋がりの掛け合いは必見!) が、そしてV3の時代には死神博士がそれぞれ立ち塞がってくる。 

彼らは巧みな作戦や強化された戦闘員、怪人たちによってライダーたちを追い詰めていき、中でも1号はゾル大佐に囚われたことで絶体絶命のピンチに陥ってしまう。しかし……。  

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そこに駆け付けたのはなんと仮面ライダー2号=一文字隼人! 大きなダメージを負った本郷に代わり、一時的に2号がプレイアブルキャラクターになるというファン垂涎もののイベントだ。

  

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更に、アギトの窮地には仮面ライダーギルス=葦原涼が駆け付ける他、V3は発電所内でライダーマン=結城丈二と遭遇。彼の恩師「田所博士」がこの事態のカギを握る存在「邪眼」に深く関わっていることを知る。   

この2人は残念なことにムービー限定のNPC (当然ながら声も代役) だが、特にライダーマン=結城丈二は上記の通り本作のシナリオに大きく関わっており、彼をきっかけに徐々に事態の真相が明らかになっていく。  

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邪眼がなぜショッカー/ゲルショッカーを操るのか、なぜBLACKを付け狙うのか、なぜ事件はアギトのいる2004年をも巻き込んでいるのか。激化する戦いに伴って4つの時代が繋がっていき、やがて邪眼の真の目的が判明した時、物語は怒濤のクライマックスへと突入していく――。

 

 

……これ、20年前のゲームなんですよ……信じられます……?

 

シリアスで緊張感に満ちた物語、ストーリーを盛り上げる丁寧なクロスオーバー、そして全てが一つに繋がるカタルシス抜群のクライマックス。ここでは語りきれなかった点も含めて、本シナリオのクオリティは数ある『仮面ライダー』作品の中でも間違いなく上位に入るものだと言えるだろう。

 


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昨今の『仮面ライダー』シリーズからは『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦 MEGA MAX』や『仮面ライダー 平成ジェネレーションズ FINAL』といったクロスオーバーに重きが置かれた傑作がいくつも誕生しており、ライダーの良質なクロスオーバーが見たいならわざわざゲームをしなくても……とお思いの方もいるかもしれない。しかし、本作のストーリーには「ゲーム」という形態だからこその大きな魅力がある。

 

最も分かりやすいのは、本作の「1号~アギトという大きく時代の離れたライダーたちが “それぞれの時代の姿で” 共演する」というシチュエーション。 

「それぞれが主人公である時期」というのは、各キャラクターにとって “成長途上” というドラマ上の旨味に溢れた時期ながら、映像作品でのクロスオーバーはどうしても「いずれかが先輩になっている」ことが確定してしまっている(それはそれで美味しいのだけれど)。 

本作はそんな稀有なシチュエーションを満遍なく活かした「自分の名を受け継ぐ者たちの存在に驚く1号=本郷」「親友である信彦=シャドームーンとの戦いに悩む中、自分と同じ戦士の存在に背中を押されるBLACK=光太郎」などの、思わず感慨に耽ってしまう魅力的なシーンが数多く描かれている。これらは、ゲームだからこそできた本作独自の魅力と言って差し支えないだろう。  

(各作品が原作シナリオをなぞりながらクロスオーバーする “スーパーロボット大戦” シリーズは、前述したタイプのクロスオーバーで紡がれるストーリーが大きな反響を呼んだ代表格だ)

 


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更に、ゲームという形態を活かした魅力がもう一点。それは、本作はアドベンチャーゲームというジャンル故に、そのプレイを通じてプレイヤー自身が仮面ライダーたちの感覚を追体験できる」ことだ。 

前述のように、本作前半(1~4章)は1章=アギト、2章=BLACKというように、章ごとに操作するライダーが切り替わっていく。   

しかし、舞台(時間)が4つに分断されているため、ゲームを進め、プレイヤーキャラクターが切り替わることはあっても仲間が増えることはない。そのため、本作前半は「不気味なBGMの中で、ほの暗い発電所を一人で回り、戦い、謎を解いていく」という、実質的なホラーゲームになっている。確かに現れる敵はライダーファンにとってはお馴染みのショッカー/ゲルショッカーなのだが、「4つの時間を股にかける」という文字通り次元の違う作戦規模や、彼らを操る「邪眼」の得体の知れない恐怖が、プレイヤーにとって見馴れたはずの怪人たちを、そうではない「未知の敵=恐ろしい怪物」の群れに見せてくる。 

(PS2のスペックを活かした緻密な描画や、ホラー映画さながらに登場する怪人たちもこの点に大きく貢献しているだろう)


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このようなホラーテイストには ライダーの元々の作風が ”怪奇” 寄りということを踏まえても)仮面ライダーでホラーゲーム?」と首を傾げてしまう方も多いだろう。しかし、そのような「不気味な施設を探索する緊張感」「一人で戦う孤独」「未知の敵と相対する恐怖」といった感覚は、全て仮面ライダーたちが戦いの中で味わってきたであろうものに他ならない。  

つまり、本作は仮面ライダーたちをプレイアブルキャラクターとして操作するだけでなく、TV画面を通して見るだけでは味わえなかった「仮面ライダーたちの感覚」を、アドベンチャーゲームという形式を通して追体験できる。そしてそのことが、ストーリーの臨場感を飛躍的に高めてくれるのである。

自ら謎を解くことで推理ゲームのストーリーにグッとのめり込めるように、主人公視点のホラーゲームがただならぬ怖さを持つように、この『正義の系譜』は「仮面ライダーたちの感覚」をプレイヤーが追体験することで「発電所の謎を解き、未知の敵に迫っていく」という物語や、その中で経験する怪人たちとの激闘、そして何より「ライダー4人の合流 (通信) 」や「2号の救援」といった、ただでさえ胸躍る「仲間たちとの出会い」の感動が数倍にもなって胸を満たしてくれる。 

ただでさえ上質なシナリオにこのような「ゲーム」ならではの魅力が加わることで実現した圧倒的なカタルシス。このことは『正義の系譜』を唯一無二の作品としている大きなポイントと言えるだろう。



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ストーリーに的を絞ってはみたものの、それでも語り尽くせない『正義の系譜』の魅力。これ以上は、是非皆様ご自身の手でプレイし確かめてほしい……のだけれど、本作は『仮面ライダー』『仮面ライダーV3』『仮面ライダーBLACK』『仮面ライダーアギト』の4作によるクロスオーバー作品。そのため「この4作を全て視聴済でないと、十分に楽しめないのでは」とハードルを感じてしまう方もいるかもしれない。   

事実、本作は (ハイターゲット向け作品ということもあって) 原作を知っていることが前提の作品であり、ライダーたちについてストーリー上での説明はなく、詳しい解説がゲーム上で見れる訳でもない。 

しかし、かといって「これら4作を網羅していないと楽しめないか」というとそんなことはなく、おそらく必須となるのは『仮面ライダーBLACK』の大まかなシナリオと、他3作品 (に登場するライダーたち) のざっくりとした概要だけ。これさえ知っていれば『正義の系譜』は十分に楽しめるはずである。

 

なぜこのように参戦作品に対して曖昧なスタンスでも問題ないのか? それは、本作で描かれるライダーたちの孤独な戦い、そして「だからこそ輝く絆」というテーマは、前述の4作のみならず、仮面ライダーシリーズ全体に通ずるテーマと言えるからだろう。


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仮面ライダー』シリーズは (平成のみならず、それこそ昭和の時代から) その多様性こそが大きな魅力の一つであった。時代に合わせてその姿も、背負うものも変わっていき、平成仮面ライダーシリーズの集大成として製作された『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』では、主人公=常磐ソウゴが

「勝手にまとめるなよ……! 俺も、ゲイツも、平成ライダーのみんなも、瞬間瞬間を必死に生きてるんだ! みんなバラバラで当たり前だ! それをムチャクチャとか言うな!!」

と激昂するシーンがあり、仮面ライダーシリーズの在り方を体現した名台詞として大きな反響を呼んでいた。

 

 

50年という長い時間、その瞬間瞬間を必死に生き、様々な可能性と歴史を紡いできた『仮面ライダー』シリーズ。しかし、そのバラバラな歴史の中では「仮面の下に悲哀/孤独を隠したヒーロー」という在り方が受け継がれてきたようにも思える。

 

既に人間でない「改造人間」という過酷な宿命を背負った『仮面ライダー』を初めとする昭和ライダーシリーズ。 

改造人間であるだけでなく、親友との対峙をも強いられた『BLACK』。 

怪人の背負った悲哀にスポットが当てられた『555』に『剣』。 

主人公ではなく、所謂「2号ライダー」たちが孤独な戦士というポジションを担い、彼らを軸にハードな展開が描かれた『フォーゼ』や『ドライブ』……。 

そして『ゼロワン』ら令和のライダーたちにもこのヒーロー像は継承されており、大なり小なり、多くのライダーたちが悲哀/孤独の影を背負ってきたと言えるだろう。
(このことは、仮面ライダーと並び「3大特撮」と呼ばれる『ウルトラマン』や『スーパー戦隊』と比較すると、より分かりやすく見えてくるように思う) 

そして、そのような背景を持つからこそ、ライダーたちの見せる絆は殊更に眩しく、我々視聴者の心を掴んで離さない。 


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本作でも並び立つダブルライダーは勿論のこと、デルザー軍団を迎え撃つべく集った栄光の7人ライダー、多くのすれ違いと衝突を乗り越えて実現したアギト、ギルス、G3-X、アナザーアギトの共闘。各々が背負った因縁に決着を付け、一丸となって変身する『セイバー』の10剣士……。その例は挙げればキリがなく、100人に聞けば100人それぞれのベストバウトが返ってくるだろう。 

そんな数々の名シーンを輝かせてきた、仮面ライダーたちの「悲哀/孤独を背負った戦士」という在り方、そして「だからこそ輝く絆」。このテーマに深いリスペクトを捧げて作られたゲームこそが『正義の系譜』であり、だからこそ「本作は件の4作品に詳しくなかったとしても楽しめる=『仮面ライダーシリーズ』のファンならプレイして損はない」と、自信を持って言うことができるのである。

 


実のところ、この『正義の系譜』は様々な問題点をも抱えたゲームでもある。攻略本前提としか考えようがない難易度の探索、テストプレイしたのかどうか疑わしい極悪仕様 (だけど意外と楽しい) バイクアクションパート、必殺技偏重が過ぎる戦闘バランス……等々、これもこれで挙げればキリがない有様だ。 

しかし、本作にそれらの欠点を補って余りあるほどの魅力が備わっているということはこれまで述べてきた通りである。 

それらの魅力が「実際に欠点を覆しきれているか」は当然プレイヤーの感性に委ねられてしまうが、それでも筆者は、本作は多くのライダーファンの魂に響く「至高のライダーゲーム」だと感じている。  

アーカイブ配信がされておらず、プレイするには当時のソフトを購入する (中古であれば1000~2000円程度で購入可能) しかなかったり、そもそもPlayStation2専用ソフトが起動できる環境が必要であったり、前述の通り多少の予備知識が必要であったりと、そう簡単に即断即決でプレイできるような状況にないことが惜しまれる本作だが、もしここまで触れた内容で「これは」となるものがあったなら、是非本作を手に取って頂きたい。

 


『正義の系譜』発売から20年近くが経過した2022年現在、ライダーたちが繋いできた歴史は既に半世紀を越えており、今年中には『仮面ライダーBLACK』のリブート作と目される『仮面ライダーBLACK SUN』の配信が、来年には庵野秀明氏が手掛ける劇場用作品『シン・仮面ライダー』の公開がそれぞれ控えている。 

その注目度の高さもあって、これまでにないほど昭和のライダー作品……もとい「仮面ライダーシリーズの原点」が脚光を浴びていると言えるこの今だからこそ、本作を通して『仮面ライダー』が時代を越えて受け継ぎ、築いてきた系譜を振り返ってみてはいかがだろうか。