「『蒼穹のファフナー』気になるな……」
……と、そんなことを思われている方、いらっしゃいませんか。
先日公開した『蒼穹のファフナー THE BEYOND』でシリーズが美しく幕を閉じたということやその口コミもあってか、少なくとも筆者の周りには既に数名いらっしゃる状態。
一ファンとしても、今回の完結を機に「たくさんの方に見てほしい作品」と胸を張れるものだと感じた『蒼穹のファフナー』シリーズ。
今回の記事では「ファフナーが気になるけど何から見ればいいのか分からない、どんな作品なのか分からない!」という方に向けて、極限までネタバレを削りつつ、各シリーズの概要とその繋がり、魅力や視聴方法などを簡単に解説。
『ファフナー』に触れる最初の一歩として、本記事を活用してくださいますと幸いです。
【"蒼穹のファフナー" とは】
◇概要
2004年に放送されたTVアニメ『蒼穹のファフナー』から続く一連のロボットアニメシリーズ。
(外伝を除き)シリーズを通して「真壁一騎」と「皆城総士」の2人を主人公とした物語が描かれており、2021年に公開された『蒼穹のファフナー THE BEYOND』4章を持って、17年に渡る物語が遂に完結となった。
主題歌『Shangri-La』や、『機動戦士ガンダムSEED』とそっくりなキャラクタービジュアル(どちらも同じ平井久司氏がキャラクターデザインを担当)でなんとなく知ってる! という方も多いであろう作品だ。
◇その物語
本作は体裁こそロボットアニメだが、その内実は、ロボット(ファフナー)での戦いを通して描かれる人間ドラマ。
戦いに巻き込まれる少年少女やそれを強いることになる大人たち、そして「死んでいった者たち」を通して「何を持って、人はそこにいると言えるのか?」という命題を問いかける重厚な作品になっている。
繊細なドラマや独特な世界観が魅力である一方、難解な設定の割に説明不足が目立つという難点もあり、そこは『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズに近いものがある。『エヴァ』の「神話の物語」成分を「生と死の物語」成分に転化させたもの、とイメージして頂けると分かりやすいかもしれない。
しかし、それら難解な設定はそれこそ『エヴァ』同様、分からなくても割と見れてしまったりする(筆者も未だによく分かってない設定が多いくらい)。
とはいえ(特にTV1期は)重要なのにロクに解説されない設定があったりするのは疑いようもない事実なので、適宜周囲のファンに訊ねつつ視聴していく……くらいのスタンスが丁度いいのかもしれない。ご自身で調べられる時は、ネタバレを踏まないようくれぐれもご注意を……!
◇「鬱アニメ」としてのファフナー?
本作は、非常に話が重い「鬱アニメ」とも言われており、実際、シリーズ通して人が数多く亡くなっていく。
とはいえ「ただ強敵との戦いでたくさん人が死んでいく」というような簡単な話ではなく、本作はそのような「死」にひたすら真摯に向き合っていく物語。
その描写や物語には命へのリスペクトが貫かれており、ただの「鬱」ではない、ある種の人間讃歌にもなっている。特にTV2期『EXODUS』以降はそれが物語の熱さに直結することが劇的に増え、『ファフナー』ならではの圧倒的なカタルシスとして数々の伝説を生んでいった。
◇ロボットアニメとしての魅力
本作の顔として登場するロボット「ファフナー」は、「人の心を読み、飲み込む(同化する)」という恐るべき能力を持った宇宙からの脅威「フェストゥム」に対抗する力を備えた超兵器。作中には「ファフナー・マーク○○」のような名前で多種多様な機体が登場する。
人型兵器として洗練されたスタイリッシュなデザインがまず目を惹くが、その最たる魅力は作中での描かれ方。
少年漫画で昔の技が使われなくなっていくように、ロボットアニメにおいては「古い機体が世代交代していき、活躍しなくなっていく」のが一つの定め。しかし、ファフナーはそのほぼ全てが「誰かへ受け継がれ、時に進化していく」ことで熱いドラマを形作っている。
「機体と共にその魂も受け継ぐ」
「かつて守れなかった機体を時を越えて守る」
など、この設定が活かされる場面は数えきれないほど多い。物語と「ファフナー」というロボットそのものが大きく結び付くことによる盛り上がりは、美麗な戦闘作画と併せていずれも感動必至の名シーンばかり。
一方、ファフナーはガンダムのような他の作品に比べて分かりやすいアイコンがなく、初見だと非常に見分けがつきづらいという欠点も抱えているので注意が必要。
◇音楽面の魅力
また、音楽展開に非常に力が入っていることも大きな魅力。
主題歌・挿入歌などは17年間、一貫して楽曲ユニット『angela』が手がけており、高い知名度を誇る『Shangri-La』以外にも数えきれないほどの名曲が生まれている。
楽曲そのものの魅力は勿論、挿入歌の使い方のような「劇中での活かし方」もまた一級品で、シリーズ最大の見所とされる名シーンはいずれも挿入歌と共に語られることが多い。
一方、劇伴は『仮面ライダーキバ』などで知られる斉藤恒芳氏と、かのワルシャワフィルハーモニー管弦楽団によるフルオーケストラ。
作品の壮大な雰囲気にこれ以上なくハマっており、劇伴の域を越えたある種の芸術さえ感じさせる。TV1期の名曲がTV2期の「ここぞ」という場面で使われたり、過去の楽曲のアレンジが多く存在していたりするなど、歌同様に大きなこだわりを持って使われているのが大きなポイントだ。
【各作品の概要】
◇『THE BEYOND』以前のダイジェスト映像 ※ここだけはネタバレ注意! 多少ネタバレを踏んでも雰囲気を知りたい、という方は是非。
◇イントロダクション
舞台は西暦2146年、宇宙から訪れた金色の生命体「フェストゥム」によって、人類のほとんどが死に絶えた未来。
世界から身を隠し、人類の文化を残すために活動していた偽りの楽園「竜宮島」では、密かに対フェストゥム用機動兵器「ファフナー」を開発。フェストゥムと同質、故に搭乗者をも蝕んでいく切り札であるファフナーだったが、そのパイロット適性を持っていたのは、島のうら若い少年少女たちのみ。
友情と不和、生と死が渦巻く戦場で、空にフェストゥムの問いかけが響く。
『あなたは、そこにいますか?』
1.『蒼穹のファフナー』/TVアニメ1期(2004年:全26話)
記念すべきシリーズ第1作。島の外に広がる絶望と戦う子どもたち、中でも主人公=真壁一騎(CV.石井真)とその親友、皆城総士(CV.喜安浩平)の友情とすれ違いを軸に、フェストゥムと竜宮島の戦いを描いた物語。
かなりのスロースターターかつ、シリーズ随一の説明不足っぷりが悪目立ちするものの、緻密かつ残酷な「命」の描写や「あなたはそこにいますか」というテーマに様々な角度で切り込んでいく物語は見応え十分。本作の出来事を覚えていればいるほど後継作が段違いに面白くなっていく。
「俺は、お前だ。お前は――俺だ」
1.5『蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT』/OVA(2005年:全1作)
TVアニメ1期の1年前を描いた外伝で、主人公、将陵僚(CV.宮野真守)たちが、竜宮島を守るために挑んだ知られざる戦いの物語。
本編以上に過酷な運命を背負わされた少年少女たちが描かれる他、本編で退場したキャラクターたちの補完エピソードでもあり、「生き抜くことの価値」を問いかける物語(特にラストシーン)は必見。視聴必須ではないものの、後継作には本作を見ておくと楽しめる点があまりにも多いため、そういった意味でもおすすめの作品。
「僕たちは常に、誰かが勝ち取った平和を譲ってもらっているんだ。例えそれが一日限りの平和だったとしても……僕は、その価値に、感謝する」
2. 『劇場版 蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』/劇場用作品(2010年:全1作
TVアニメ1期の完結編と言える物語。1期で登場したサブキャラクターたちが「新世代」のパイロットとして戦う姿や、大きく成長した一騎たち、そして進化したフェストゥムとの新たな「対話」が描かれる。
本作からファフナーやフェストゥムがCGで描かれるようになった他、シナリオやキャラクターの作画、劇伴など全体のクオリティが大きく引き上げられた。1期で悪目立ちしていた説明不足もなく、『ファフナー』という作品の知名度を大きく高めた傑作。
「選ぶんだ……何度でも! 悲しいからって諦めないで、そこにいることを選び続けろ!」
3.『蒼穹のファフナー EXODUS』/TVアニメ2期(2015年:全26話)
TVアニメ1期から通算4年後となる西暦2150年を舞台に、フェストゥムとの戦いを終わらせる「希望」を探す旅路と、これまで以上に苛烈な運命に抗う一騎たちの「生存限界」が描かれる。
前作から久しぶりの再始動ということもあり、シナリオ・作画など全体的なクオリティが飛躍的に向上。これまで以上に重い試練、そしてこれまで以上に熱いストーリーが描かれており、特に第9話『英雄二人』と第19話『生者の誓い』は、ニコニコ生放送のアンケートで「1.とても良かった」98.8%と98.9%という圧倒的な数値を記録、覇権アニメの名を欲しいままにする人気作品となった。
しかし、そのあまりにハードな展開から、精神状態が不安定な時に視聴すると大変なことになりかねない劇薬のような作品でもある。
「君は知るだろう、本当の悲劇は絶望によって生まれるのではない事を。運命に抗う事で見出される希望──それが、僕らを犠牲へと駆り立てた」
4.『蒼穹のファフナー THE BEYOND』/TVアニメ3期(2019~2021年に劇場先行公開:全12話)
『EXODUS』から2年後に幕を開ける物語で、正真正銘のシリーズ完結編。
17年に渡る物語の完結編として常識を超えた完成度を誇る作品で、これまでの全ての作品を踏まえつつ、残された者たちの全ての「運命との決着」を描ききった物語は圧巻の一言。特に第9話から始まる“真の最終章”は全てのファンが報われると言っても過言ではない最高級の仕上がりになっており、まさに必見。
その圧倒的な物語展開が高い人気を博した結果、4章に分けられた劇場公開版は4つともミニシアターランキング興業収入1位を達成するという偉業を成し遂げた。
「真壁一騎にできて、僕にできないなんてことが……あるもんかぁぁーーーっ!!」
◇視聴方法
TVアニメ1期『蒼穹のファフナー』
OVA『蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT』
劇場版『蒼穹のファフナー 『HEAVEN AND EARTH』
TVアニメ2期『蒼穹のファフナー EXODUS』
は、各種レンタルショップでDVDがレンタル中。また、上記作品は下記の動画配信サイトにて全て見放題配信中となっています。
・U-NEXT
・FOD
・dアニメストア
・Hulu
(他の配信サイトでも、一部のみ配信中であったり、レンタルによる視聴が可能です。時期によっては上記配信サイトでも見放題ではなくなっている可能性があるため、お手数ですが事前にご確認くださいませ……)
また、最終作『蒼穹のファフナー THE BEYOND』は4章が2021年11月現在、全国の劇場で公開中。
1~3章については、各種レンタルショップでDVDがレンタル中な他、各種動画配信サイトで有料配信が行われています。詳細は下記リンク先(公式ページ)をご覧ください。
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いかがだったでしょうか。
敷居が高い作品という声も聞く『蒼穹のファフナー』ですが、正直なところ、筆者自身もまだまだこの作品のテーマや設定を理解しきれているとは思えません。
しかし、そんな状態であっても、こんな文章を書かせてしまうくらいの熱量を産み出してしまうのがファフナーという物語の凄いところ。
話数が多いという難しさはありますが、きっと見たら心に刻まれるであろう、悲しくも暖かい命の物語。一騎たちの生き様、そして竜宮島の人々が紡いできた想いの積み重ねが、一人でも多くの方の心に残ってくれることを切に願っています。
あなたは、そこにいますか?